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2、ホランド


と、タイムがサラッと離してくれるはずもなく、3時間駄々っ子のように泣き暴れ私にしがみつき抱き着き縋り付き、本当に18歳なのだろうかと考えてしまう程だった。仕方ないので一瞬の隙をついて家から逃げ出してやっと解放され、旅の始まりだと道を歩き始めた時前から見知った顔の男が歩いてきた。


幼なじみのホランドだ。髪も切ったしいつもとは違う服装。白いシャツに黒いスリムでフィットした動きやすいズボンに黒いショートブーツ。コートについているフードを被り直す。これできっとバレない筈だ。なんだか落ち着かなくて腰に刺した長剣のグリップを握る。

心臓がバクバクと言っている。ホランドにバレると面倒だ。絶対についてくると言うに決まっている。いつか王女になる私を守る為にと近衛兵になった男だし。元々一緒に騎士学校に通っていた時も男ばかりで心配だと朝から晩までずっとへばりついてきて。結局、友達も出来なかったし。なんだか碌でもない奴だな。

とうとうすれ違う時、ホランドは私を一瞥しすぐにまた視線を前に戻した。良かったぁと胸を撫で下ろした時だった。


「ケイト?」


と名前を呼ばれたのでいつもの癖で振り返ってしまい、確りホランドと目があった瞬間踵を返して走り出した。全速力で走っているがホランド相手なら五分五分の勝負になる。フードは完全に脱げ後ろから、なんだその髪は!と叫び声が聞こえた途端走る速度が上がったのか腕を掴まれてしまった。5分程で勝負はついた。


「はぁ、はぁ、ま、負けた。」


私はホランドを見上げる。タイムより大きいので見上げる形になる。私は160センチなので首が痛い、190センチはあるだろうか?昔は私より小さかったのに。


「はぁ、はぁ。ケイト何故逃げた?それにその髪はなんだ?何かあったのか?」


「ええっと。簡潔に言うとサマー王子と婚約破棄して家を出て旅に出る。ギルドに入ってお金を稼ぐの。」


「なん、なんだと?婚約破棄?家出?ギルド?」


ホランドが眉間にシワを寄せる。いつもあまり表情が変わらないので珍しいね。ははは。後、腕を離せ。


「ああ、そうだ。だからもう私はケイトでは無い。ゼロという男として生きて行く。」


「お、お前何を考えているんだ?落ち着いて考え直せ。ゴードン様は何て言ってるんだ?」


「父上は何も。話しても許してくれなかった。」


「それはそうだろう。それにお前にギルドは無理だろう。」


「何よ!私が弱いっていうの?」


「いやその心配はしていない。お前はゴリラだからな。ただ世間知らずだと言ってるんだ。」


「ぶっ飛ばすぞ。とにかく私はもう決めたの。じゃあ。」


「……。待て。一緒に来い。」


そしてホランドは私の腕を掴んだまま、来た道を引き返した。近衛兵の宿舎がありそこの上官の部屋に連れていかれた。


「兵長。失礼致します。」


ノックをして返事がありホランドが私まで連れて入る。


「おぉどうしたんだい?それにそいつは?」


「兵長、私ホランドは今日をもって近衛兵を辞めさせていただきます。」


「「えぇぇぇぇ!!」」


兵長も私もびっくりして叫んだ。ホランドは表情を変えることなくただお辞儀をして私を掴んだまま部屋を出た。兵長はびっくりして立てなくなったのか追いかけてこなかった。

ホランドは毎日それはそれは真面目に鍛錬を続けて次の兵長まっしぐらだったのに。


「ちょっ、ちょっと!ホランド!どうして?近衛兵は昔からの夢でしょう?」


「俺の夢はお前を守る事だそれは一生変わらない。お前が女王にならないのなら近衛兵などどうでもいい。今度は相棒としてお前を守るよ。だから俺も一緒に行く。向かう場所が地の果てだろうとついて行く。お前を守る盾になるよ。」


「ホランド。」


この幼なじみは頑固で言い出したら聞かない男だ。


「分かった。今から私はゼロという男だ。よろしく頼む相棒。」


「ああ、よろしく。」


結局、2人旅かぁ。ホランドは何だか嬉しそうだしまあいいか。


「そういえば何故私って分かったの?」


「ケイトの匂いがしたから。」


やっぱりこいつと行くのはやめようかな。王都のギルドに登録に行くまでホランドを相棒と認めた事を深く後悔していた。



王の私室


「ゴードンこの度は本当にすまなかった。」


俺は頭を深く下げる。


「王様おやめください。」


「ゴードン今だけは昔の通り友だ本心を言ってくれ。」


「よ。」


「よ?」


「よくも浮気しやがったなぁ!お前の息子はよぉ!あぁ!そもそもお前が昔からあの王子が馬鹿で抜けてて心配だからその時から優秀だったうちの娘を横に置いておきたいっつったんだろうがぁ!あぁ!」


ゴードンが怒るのも仕方ない俺が無理を言って婚約者としてケイトにサマーの見張りをしてもらっていたのだから。


サマーは王子としての自覚がなく、部下や懇意にしている貴族の名前を全く覚えず横柄に振る舞う。その隣で名前を全て覚えてくれて先に名前を呼んで教えてくれて、場の空気も和やかにしてくれる優秀な婚約者だったのに。あの馬鹿息子は。


「すまん!本当にすまんかった!契約書もちゃんと正式な書類にするし婚約破棄もやめよう!だからうちの息子を許してくれ!」


もう一度深く頭を下げる。


「もう遅いよ!馬鹿が!」


「何故だ!どうしてだ?」


「……出てった。」


「えっ。おいおいおいおいおいおい。それはまずいぞ!」


「お前の息子が悪い。」


「おい、来月隣国の王族が来る時は誰がサマーの隣にいて面倒を見るんだ?」


「うるさいぞ、ざまあみろせいぜい恥をかくんだな!」


そしてゴードンは怒るだけ怒って出て行った。


「あぁ、頭が痛い。来月の舞踏会はどうしよう。」


俺は馬鹿息子を恨んだ。


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