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18、和平


「レディ様いらっしゃいますか?」


屋敷の奥から目を腫らしたレディが現れた。話し始めた直後、後ろから男が駆け込んできた。


「レディ様お話が…。」

「レディ様!大変です!魔物が!森から魔物が現れました!2、いや300体以上います。この目で見ました!」


「え、森から。どうしましょう。今は。とにかく村人達をここへ集めて!」


村人が飛び出して行く。グレンが捕まった事で村人が集会場に集まっているのですぐに避難できるだろう。


「レディ様私が行きます。ホランドはここでレディ様と村人を守ってあげて。」


「おい!それは許さない!」


私はレディにことわってホランドと2人になれるように外に出た。


「私は誰かを守る戦い方を知らない。もしここに攻め込まれた時どちらがここにいた方がいいか、ホランド、近衛兵だった君なら一目瞭然だろう。」


「……ケイト、おれは、俺はお前の笑顔を守りたかった。城での偽りの笑顔ではなく、時折見せる太陽のような笑顔をお前の幸せを守る為に戦ってきた。だからやめてくれ俺はお前に死んでほしくないケイト生きていてほしいんだよ。お前が何故ここまでする必要があるんだ!」


私はホランドの胸に手を置いた。温かく鼓動を感じる。


「私の幸せはここにある。とっくの昔からここに。」


ホランドが私の手を握り顔をあげた。情けない顔。


「ありがとうだから大丈夫。私には私の幸せを守ってくれる人がいる、だから私は絶対に死なない。この人達には居ないのだから頼む。」


ホランドは俯いて分かったと言った。ホランドをおいて魔物の元へ向かった。



「ひゃっっははははっ。燃やせ燃やせーい。」

「ああ、死んじゃった。」

「いえーい壁壊れたぞーい。」


魔物は確かに300近くいるようだ。喋る事のできる魔物が楽しそうに話をしている。畑を燃やし悪戯に家畜を殺し家を壊している。全てを村を壊していく。


「すみません。何をしに来られたんですか?」


前に出て魔物に話しかける。魔物はニヤニヤしながらこちらを見た。


「なんだ人間、俺達はな村人を皆殺しに来たんだよ。」


ニタリと笑い突進してきた。突進してきた魔物達を抜刀で倒す。10体程がバタバタと倒れた。剣に付いた血を振って落とす。真っ直ぐに魔物の群れを見据えた。怯えているもの怒りにみちているもの、こんなにたくさんの魔物を今から相手にするのだと腹を括り深呼吸をした。


「いけー殺せ!」


戦いが始まった。斬って身を翻し力で押し退ける。また斬って蹴って押しのけ殴ってとどめを刺す。魔物を斬ると悲鳴があがり返り血を浴びる。それでも剣をふるうのを止めない。身体中が血みどろになっても血溜まりが足元に出来てもこれ以上、村の奥に1体も進ませなかった。


「何故だ。俺の血が毒が効かない。」

「あいつ動きが見えない。なんだあいつ。」

「嫌だ来るな!こっちに来るなー!」

「あいつ死神だ。目に入った奴から殺されるぞ。」

「銃の弾を弾き返される。危ないぞ。」


どれ位の時間が経ったのか魔物の攻撃が止まった。周りを見るとたくさんの魔物の屍と2体の魔物だけだった。


「お、お前本当に人間か?」


魔物が怯えたように話す。剣に付いた血を服で拭う。刀身は傷付いていない。


「この戦いにおいて人間かなんて野暮では?」


剣を構えなおして魔物を見据える。


「嫌だ、助けてくれ。命だけは。」


「あの君達が出てくる黒い穴に帰って塞いでくれるなら良いですよ。」


「ああ、すぐに帰る。それに閉じるよ。」


「よし、じゃあ前を歩け。」


「はい!すみませんでした!」


魔物は黒い穴まで走り逃げるように入った。するとすぐに穴はなくなった。魔物がたくさん居て見えなかったが魔物達の奥に穴があったようだ。


「はあさすがに疲れたな。」


私はその場に座り込んで水筒から水を飲みそのまま水を被り血を流した。毒の血が混じっていたら他の人に迷惑がかかる。用意していた服に着替え屋敷へ戻った。

屋敷の外まで子供の泣き声や大人の怒鳴り合う声が聞こえる。中は村人がギュウギュウに集まっていた。奥にレディとホランドの姿が見えた。私に気付いたホランドが走ってこちらへ来てくれる。


「ゼロ良かった。本当に俺はお前を失ったら。お前が死んでしまったら俺はきっと生きていけない。」


ホランドはここまで考えてくれていたのか。安心させるように背中を摩った。


「大丈夫、怪我はない。全て倒してきた、穴も閉じた。」


「怪我がなくて良かった。」


「ゼロさんありがとうございました。」


ホランドの後ろからゆっくりとレディが現れお礼を言う。


「いえ魔物は倒してきました。そこで私から1つ提案があるのですが。」


「村を救った救世主様ですものなんなりと。」


「コルドと和平を結びましょう。もう争いは必要ありません。そうでしょう?」


「和平。そう、ですね。和平。」


「はい、今すぐにグレン様を解放しレディ様と手を取り合って村を発展させると誓い合うのです。どうですか?」


「ええ、ですが……。」


「分かりました。」


1度屋敷から出てもう一度入る。レディとホランドは呆気に取られている。


「はあはあはあはあ、大変です!魔物は殲滅しましたが、お、大きな魔物が!はあはあ、まだ残っていて!ここはコルドと和平を結び魔物ハンターと名高いグレン様に協力してもらう方が良いですよ!」


肩で息をして大きな声で村人全員に聞こえるように叫ぶ。レディはまだ呆気に取られていてホランドは完全に笑いを堪えている。村人は不安そうに相談を始めた。


「はあはあ、レディ様!ご決断を!」


「へっ?あっはい!分かりました私と来てくださいグレンと話し合いをします。皆はここに残ってください。」


「「はい。」」


グレンは奥の倉庫に繋がれていた。見張りはおらずレディは鍵も使わずに扉を開けた。レディはいっそグレンに逃げ出してほしかったのかもしれない。


「レディ様。」


「グレンもういいですよ。この2人は私達の事に気付いているので。」


あらいつの間に?レディはすぐにグレンに駆け寄った。


「そう、レディ少しやつれたねご飯食べてる?君に元気がないと辛いよ。」


「ごめんなさい。こんな怪我をさせて、ごめんなさい。」


レディは泣きながらグレンの縄を外している。ホランドが魔法で治療すると怪我は治った。


「ありがとうございます。」


「グレン和平をしましょう。今は父もいないこの人のおかげで和平まで自然な流れができた。もう血は流さない誰の血もあなたも含めて。」


レディがグレンを抱き締めた。グレンは優しく笑い頷いた。その後全てを話した。魔物の事も長の事も全て。


「じゃあ僕も森に行くよ。ありがとうお2人さん。」


「私も行きます。多分森に父がいる気がするから。」


村人の前で簡単に和平を結びその足で森に向かった。



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