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13、空の色


サンラ 恵みの森


「今日はこんなものかな。」


あれから数日また彼とは会えていない。仕方ないとは分かっているが悲しいし寂しい。彼も同じ気持ちならいいのになーんてあるわけないか。

最近特にキノコがよく採れる、干しておくと長持ちし村の皆から喜ばれるのでなるべくたくさん取らないと、と張り切り籠をいっぱいにした。


今日は特に暖かく少し汗ばむ程だったので森にある清流に来た。川は浅く穏やかで清らかな水が流れている。手を入れてすくい口に含む。冷たくて心地よい。川べりの日陰に寝転んで手を清流につけ目を閉じる。私はきっとここで死ぬ気がする、この恵みの森の何処かで死んでそのまま自然にかえると昔から考えている。


「珍しいね。こんな所で。」


頭上から優しい声がふってきたので目を開けると彼がいた。いつもの格好で籠を持っている。慌てて座り衣服を整える。


「あ、こんにちは。」


「こんにちは隣いいかな?」


「ええ、どうぞ。」


私が言った言葉を確認してからゆったりと座った。


「この前はありがとう。皆本当に喜んでいたよ。」


「あの良かったです。」


「ふふ、ありがとう。それでお礼なんだけど、これを。」


彼が突き出した拳を見ているとぱっと開かれそこから茶色の革に通された青い鉱石が出てきた。


「僕の得意な事と言ったらこれ位しかなくて。ネックレスなんだ少しだけまじないをかけてある。君を守ってくれる、君の瞳と同じ空の色だよ。」


私は両手でそれを受け取る。透けるような空の色。


「この形は半円?」


「それはね、偃月だよ。僕が1番好きな月の形。」


「偃月。本当に綺麗です。あの着けてくれませんか?」


「うん、ちょっと待ってね。」


後ろに回りを革の紐を結んでくれる。この長さなら着脱もしやすい。何より下を向けばすぐに見ることができる。鉱石を優しく握る、冷たいはずの石が温かい気がした。


「あのこれ大事にします。その、あの、あなただと思って。」


モジモジと言うと彼は笑って、


「ああ、そうして僕も君だけを想って作ったんだ。」


そして隣に座り手を握ってくれる。私も彼の手を握り返す。そして彼を見上げた。横顔を見つめているとまた胸が苦しくなる。そっと目を閉じて少し勇気を出して彼にもたれかかる。すると彼はまた笑ってそのままで居てくれる。それからしばらくの間、彼を噛み締めていた。夕方になり辺りが暗くなり始めた時彼が腰をあげた。


「遅くなってしまったねそろそろ帰ろうか。村の人達が心配する。帰ろう。」


「ええ。」


本当は帰りたくない。帰りたくないけど我儘な女だと思われるのも嫌だ。また俯いてしまう。


「仕方ないなぁ。」


彼は私を優しく抱きしめ耳元で囁く。


「夢で会おうね。おやすみ。」


「あ、は、はい。」


歩いて行く彼の背中が見えなくなるまで私は立ち尽くした。


「絶対に同じ歳位なのに、なんだか悔しい。」


山菜がいっぱいの籠を背負い村へと歩き始めた。




「サンラの民はこの温暖な気候と民の精神から太陽の民と呼ばれているらしい。今はこのもっと先の場所に村があるんだって。」


「そうか、旅人がいて助かったな。」


「うん、果てしなく遠かったらどうしようかと、3日程で着くって言うから安心した。」


「ああ、それに旅人は割と多いらしいいし他にも情報を得られるかもな。」


「そうだね。じゃあ今日は寝ようか明日も朝から歩くし休んでおこう。」


「ああ、おやすみ。」


サンラはあまり魔物もおらず毒虫もいない上に伝説など旅をするにはもってこいの土地のようだ。もしかしたら妖精の伝説を聞けるかも。期待を胸に眠りについた。


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