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忠義者のヨハネス

────忠義者のヨハネスというのは、王様のいちばんのお気に入りの家来でした。この男は一生の間ずっと王様に忠義を尽くしてきたので、こんなふうに呼ばれていたのです。────




 坊ちゃまとして育てられた愚かな王子様と、過保護っぷりも甚だしいヨハネスの話です。


昔々、ヨハネスという忠義者が使えていたとある王家には、それはそれは美しい他国のお姫様の絵がありました。


それに誰かが惚れるといけないので呪いのごとく宝物庫に封印されていたのですが、その国の王子様の駄々に負け、忠義者のヨハネスは絵のある部屋を開けてしまいます。


絵は隠したつもりでしたが、王子様は姫様の絵に一目惚れ。


姫様の絵を見て恋患いをした坊ちゃまの為に、ヨハネスは他国の姫様拉致作戦を開始します。



まず宝物庫の金を使って動物細工を作り、商人に扮してお姫様の国へ。

細工に惹かれた姫様を「船の中にはまだいっぱい金細工があるよー」と船に騙して乗っけて、そのまま出航し、見事拉致します。



ブチ切れ甚だしいお姫様は、拉致ったのが商人ではなくやんごとなき王子様であることを知り、手のひら返して求婚に応じます。いいのかそれで。



しかし、ヨハネスの受難は続きます。


お姫様護送中、鳥の声を解するヨハネスは鳥達の雑談を聞いてしまいます。



曰わく、船を降りるとキツネ色の馬がいて、王子様が「わーかっこいー乗ってみたーい!」とそれに乗ると王子様を乗せたまま空に飛んでってしまう。

それを人に話すと下半身が石化する。


曰わく、婚礼のため仕立てられた金銀に輝く綺麗な服がある。

実はそれは硫黄とチャン (チャンというのは石油質の接着剤的なベタベタ)で、王子様がそれを着ると大火傷して死ぬ。

それを人に話すと心臓から下が石化する。


曰わく、城に着くと姫様が昏倒する。姫様の服を脱がして乳房から三滴血を吸わないと姫様は死に、王子も狂い死に。

それを人に話すと全身石化する。



ヨハネスはそれを聞いて、王子が乗ろうとした馬を殺し、着ようとした服を焼きます。


どよめく城内ですが、王子は「忠義者のヨハネスがやることだし意味あると思う」と黙認。


しかし、倒れたお姫様の乳房を吸うという公開セクハラを目にして当然怒り狂い死刑を命じます。


ヨハネスは死刑台の前で小鳥の言葉を告白し、自身の無罪を明かします。

そして誤解は解けたものの石化するのです。



王子は悲しんで、自分の寝室にヨハネスの石像をおく。


婚礼も済み、子供が産まれても王子は悔い続け、その数年後、石像が突然しゃべり出し、「あなたの一番大事なものを犠牲にすれば私生き返るんですよ」と急にそそのかしてきました。


一瞬ためらいますが、王子は剣を抜き放ち、寝室で遊んでいるよちよち歩きの双子の首を刎ねてその血をヨハネス像に塗り付け石化を直します。



動き出すヨハネス。喜ぶ王子。


ヨハネスは刎ねられた子供の首をくっつけて生き返らせ、ハッピーエンド。




絵姿女房の殿様サイドが伺えて面白かったり、王子の国と姫様の国の関係が気になったりする作品ですが、まあ感想は王子ヤバいよ、かヨハネス何者だよに二分されると思います。


あっさり跡取りの我が子を殺す王子様。

ヨハネスの石像を新婚ほやほやの寝室に飾る王子様。闇が深い。



ちなみに双子は王子の自分達を殺す宣言を目の前で聞いてます。

生き返ってもトラウマになることでしょう。


そもそも我が子の生き血使うとことか呪いの儀式ですよね。


あと、随分危ない目に遭ってるんですけど、着たらただれる服とか最早暗殺ですよ。恨まれてますね。



王様と王子様二代に仕え、小鳥の声を解し、子供を生き返らせるヨハネスは何者なのでしょうか。


拉致計画や暗殺計画?のリアルさと比べて、妙に禍々しいファンタジーを感じる作品です。


あと、ヨハネスは死んだり生き返ったりが割と手慣れてるので、複数回死んでるんじゃないかと思います。どうなんでしょう。


王子も、最終的には常人に聞こえるはずのない石と化したヨハネスの囁きに耳を傾けて、我が子の首を切り落とすので、とうとうヨハネス側の領域に来てしまったというか、悪魔めいたものの誘惑に乗ってしまったかのようです。



一番修羅場なのは、拉致られた末に結婚式当日公の面前で胸を吸われ、犯人が石化したものを夫が泣きながら寝室に設置し、すくすく成長していた子供をいきなり夫に斬り殺されていたお姫様もといお妃だと思う。

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