9話・色々なフラグが···
修が食堂を去って数分が経ったその中、
私は考えに浸っている···。
「···」
「······」
「·········」
何だぁああ!この怒涛な展開ぃいいっ!!
私は心の中で叫喚し、今にでも
口から声を出して叫びそうになるっ!
久しぶり見る謎の夢。
朝の特訓の出来事。
時期外れの転校生。
3個のマジックアイテム。
Eクラスを1発ノックアウト。
生徒会とのいざこざ。
生徒会長、修との会話。
今日だけで、どんだけのフラグが立っているのよ!
私、知らない所で何かやらかした···?
それに何なの!あの拳の威力は?いや···わかってるよ。
この指輪達と、勢いで飲んだ魔力カプセルの効果なんだろうと。
しかしそれで、今日の朝3人がかりで手も足も出なかったEクラスを
一発で倒してしまうなんて···卑怯な威力過ぎて心がただいま混乱中だ。
「それに困ったなぁ。今のいざこざで何か思いっきり目立ってるし···」
周りを見渡すと私をじっと見る者、チラチラと見ている者、
恵愛、怨嗟、畏怖が見え隠れする様々な瞳達。
「はあ···この子のせいで、怒りに任せちゃったからな~」
目の前にある少し表面が乾燥したプリンアラモードを
スプーンでツンツンと突く。
「いやいや、この子に罪はない!···って言うか、今気付いたわ!
私、この子をひとくちも食べてないジャンかっ!」
ハッと重要な事に気が付く私。
早急にスプーンで、スッとプリンをすくい口に運ぶ。
「うわ、何!この口に入れた瞬間に溶けて消える感触、
そして後に残るや濃厚な旨味!やっぱ、限定物!超絶うま~いっ!」
その美味しさに感応し頬を緩めて絶賛する。
そしてまたひとくち食べ、絶賛の世辞を口にする。
次々とプリンアラモードが口の中に消えていき、
最後のひとくちを食べ終わる。私は両手をパンっと合わせて一言。
「ご馳走様でした♪」
至福の吐息がふう~と口から出ると、私は手をお腹に置き満足に浸る。
「さてっと···ここにいても何か色々な思いの視線が痛いし···教室に戻るか」
先程から遠巻きに私を見つめている生徒達を尻目に、
急々とその場を去っていく。
Fクラス教室内···。
午後の授業が終わると同時に
私の元に1人の女子生徒が小走りで飛んできた。
「ねね!紗季ちゃん、紗季ちゃん!聞いたよ、食堂での事!」
興奮気味で聞いてくる女子生徒。
「成美ちゃん、もう耳に入ったの?流石は地獄耳だね···」
「地獄耳って···せめて、情報通って言って!」
その2つに何の違いがあるんだろう?
心の中で呟いていると、成美ちゃんは休まず会話を続ける。
「それで、どうなの?紗季ちゃん!」
食い付くように紗季の顔に近づき、フンスっと鼻息を鳴らす。
う~ん困った···。別に話してもいいけど、
成美ちゃんって、めっちゃ口が軽いんだよなぁ~。
拡散されると、私の平穏な学生生活が怯えを迎えそうだし···
しばらくはこの指輪や髪止めの事は内緒にしておいた方がいいかも。
さて、どうやって誤魔化そうと考えていた矢先、
私の思惑とは違う言葉が成美ちゃんの口から出てきた。
「天上様と付き合ってるって本当なのっ!」
この成美の言葉を合図に他の女子生徒達が
一斉に耳を澄まし始める。
「なな、何をぉ、あんたは言っているの!
わ、私と修が付き合ってるって、そ、そんな訳がないでしょ!」
突然、色恋沙汰の事を言われ、私は慌てふためき、
困惑の色を隠せない。
「修っ!?今、紗季ちゃん···天上様を呼び捨てにしなかった?」
「い、いやこれは、修が呼び捨てにって言われて···」
「天上様、自らが仰ったの!」
紗季の発言に、成美が目を丸くしている。
「え、ええ···まあ、一応···ね」
「それでも付き合ってはいないと?」
「も、勿論よ!修とはさっき初めて出会ったのよ、
相手の事もよく知らないのに付き合うはずがないじゃん!」
「いや、天上様なら付き合うでしょうっ!」
成美は即座に紗季の言葉を否定する。
遠巻きに耳を澄ませている女子生徒達もうんうんと頷いている。
「もう···何なの、この状況···」
予想と違う展開に困惑している私。
それにさっきから視線の先に入ってくる藍川君の顔が
この世で表現できない顔色になっているよ。
って言うか、あれ···息をしてないんじゃ?
「で、本当の所はどうなのよ、ねえ!どうなのよ?」
成美ちゃんにしては、グイグイくるなぁ···
そんなに修って人気あるんだ。
ここで、口を濁しても深みにハマりそうだし
よし、本気の顔···自然体で話せば···
「だから、違うって修とは―――」
「あっ!いたいた!お~い、紗季ちゃん♪」
私の言葉をいきなり遮った可愛らしい声。
その声の主がトコトコと私に近づいてくる。