4話・転校生
Fクラス教室内···。
特訓場のいざこざから教室に戻り、幾時が経った。
しかしまだ、私達はあの敗北感から
抜け出せないでいた。
「参ったなぁ···特訓すればEクラスくらい何とかなるって思ったのに、
ここまでの差があるんだ···はあ」
私は机に伏せ、あの勝負を思い出す。
その度に嘆息が口から洩れ出していく。私がこうなんだから
藍川君は酷いものだ。もう、この世の終わりだ!
みたいな顔をしている。
「紗季ちゃん、どうです?少しは気が戻りましたか?」
「成美ちゃん···駄目みたい。私、想像以上にショックを受けているよ」
「はは···紗季ちゃんもですか、まさかあそこまで魔力が違うなんて、
私も予想外だったよ···」
お互いに表情は曇り、
静かに嘆息が口から洩れ出す。
これがクラスとクラスの壁なんだ。考えたら、少し特訓した程度で
何とかなるなら、Fクラスの境遇が悪い訳ないよね。
何も出来ないポンコツな実力、
お情けで魔法の勉強を受けさせて貰っている。
それが私達、Fクラスなんだと本当に痛感した。
心が失意の底にいる中、生徒達が何時もより
ざわざわと騒いでいるのに気付く。
「おい、聞いたか?今日、このクラスに転校生が
来るんだってよ」
「え、このクラスにか?それはご愁傷様だな」
「だよな~。よりによってこんなFクラスにだぜ」
「なまじ魔法が使えるばかりに俺達、いつも酷い目に
あってるもんな」
みんな自分の立場をこの数ヶ月で理解したのか、
魔法の向上を全くせず、魔法を使うのも主に
授業くらいでしか使わなくなった。
しかし、転校生か···こんな時期に珍しい。
そうこう考えている内、始業ベルが教室に鳴り響く。
しばらくすると、教室のドアがガラガラと開き、
先生が入ってくる。
「はいはい、みんな静かに!自分の席に戻ってね」
教卓を出席簿でパンパンと叩く。
その音に生徒達がゆっくりと自分の席に戻っていく。
「うん、みんな自分の席に座ったわね。コホン、
皆さんにお知らせがあります。
実はこのクラスに転校生が転入して来ました。ほら···入ってきて」
先生の声と同時にドアがガラガラと開き、1人の人物が入ってくる。
身長185くらい。見た目はしゅっと細すぎないモデル体型。
そして、顔も中々の美形だ。
なのだから女子生徒が騒がない訳がない。
転校生をチェックし終えたのだろう、一斉に教室に咲く黄色い声。
それを防ぐかのように両手を叩く音が響き渡る。
「ハイハイ、皆さん!お静かに、お静かにねっ!」
少し怒の色が入った声で言うと、女生徒の声がトーンダウンしていく。
「じゃあ、静かになった所で転校生、自己紹介をよろしく♪」
「俺は···高坂刀夜···よろしく頼む」
わ、口数少なっ!
これが私が思った、この転校生への第一印象だった。