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15話・圧倒的


「紗季ちゃん~しっかり♪」

「俺のイヤ···俺達Fクラスの仇を頼んだぞ!」

「ボク、頑張って応援するからね~紗季ちゃん!」


うわ~成美ちゃん、完全に他人事の顔をしてらっしゃる。

藍川君、今『達』を付け忘れようとしたよね?

神代君、それ以上の応援は止めて、君のファンの物凄い

怨嗟の瞳が私に突き刺さる···。


しかし困った···この雰囲気、ワザと負けられなくなったぞ。

大体、私がEクラスに勝てる訳ないじゃん。


えっ?斉藤とかには勝ったじゃんと?


あの時は、荒れ狂う甘味への情熱がヒートしたからであって···。

はあ···どうしたものか。どうやれば穏便に事が進むかな···。


「星乃さん···そろそろ試合に入ってよろしいですか?」

「あ、すいません!いつでもいいですよ」


いつでも良くない~!このまま帰りた~い!大体、昨日3人でも

勝てなかったのに、1人で勝てる訳ないじゃん!バカなの!


···って、ヤバ!試合が始まった!?うわ~相手さん、やる気満々じゃん!

Fクラスに出す魔力オーラじゃないよね、それ···。

はあ、取り敢えず構えますか···魔力オーラを拳に乗せて···


これで···良し!


ん、先に私に掛かって来いと手でジェスチャーしてる。

余裕だなぁ~相手さん。さて、どうするか···。


おお!良い事を思い付いた!私が相手に突撃をし、魔力パンチを繰り出す。

それに反応し相手が反撃をする瞬間!私は後ろに飛んで

やられた振りをしてダウン、そしてそのままカウント負け。


これなら、ワザと負けてもおかしくは見えないはず!

うん···これはいける!


「それじゃ、遠慮無く···はあああっ!行きます!」


私は大地を蹴り、空中を飛ぶように突撃し、相手の懐に

飛び込み拳を繰り出す。 


「えっ!?」


私は目の前で起きた光景に驚愕する。拳が当たった訳でもないのに

相手が壁に向かって飛んで行くではないか。


「凄い!拳の風圧であそこまで飛ばすなんて♪」


堊亜が客席の柵から身を乗り出し尊敬の念の表情で見ている。


「ふ、風圧ですって···そ、そんな馬鹿な事が!」


壁に激突した鮎美がゆっくりと背中の痛みに耐えながら

起き上がる。


「Fクラス相手に···こんな無様な···この私が···」


あり得ない状況に錯乱に近い言葉を発し、紗季を睨み付ける。


「こんなまぐれ当たりにっ!」


両手を前に突き出し、呪文を唱える。


「今度は貴方が石の瓦礫の下敷きになりなさい!」

『スト-ンマグナァっ!』


鮎美の突き出した両手から無数に岩つぶてが

紗季に向けて飛んで行く。


「あわわっ!」


物凄い数の岩が飛んで来た!ヤバイ、これは当たると

痛いとかのLVじゃないやつだ!あれ?でも、何か避けられそうな気が···?


私は飛んで来る岩つぶてを右に左に次々に避け続けて、そして最後の岩も

楽に避けて見せた。


「な、そんな···あれだけの数の岩を全て交わすですって!」


まさに信じられないと言わんばかりの表情で、鮎美は今の現状を語る。


「そ、そんな馬鹿な事が···あってたまるもんですかっ!」

『相手を切り刻め!ウインドォリングゥゥッ!』


 鮎美は両腕をクロスさせ、呪文を唱えた後に両腕を広げる。

広げた中心からリング状の風の刃が出現し、紗季に目掛けて飛んで行く!


「よいしょ···と」

「ええっ!?」


飛んできた風のリングを、紗季は体を九の字に曲げて難なく避ける。


「おお、これも避けられちゃったよ!何か凄いぞ、私っ!」

「そんな···これも避ける···ですって···うう」


茫然自失している鮎美···その隙を紗季は逃さず、相手に指先を向け

素早く呪文を唱える。


「流石にその隙は逃さないよ···はああっ!」

『相手を焼き尽くせっ!ファイヤァァッ!』


私の指先から炎の塊が弾丸の如く飛び出す!そのスピードは刹那か、

気付くと鮎美の額に炎に弾が直撃し、その反動で再び壁に

轟音を立て激突する!


「ぐはっ!そ、そんな···馬鹿な···事が···ガク···」


鮎美は残念無念の言葉を吐くと、その場に倒れ込む。

そして、特訓場に試合結果のアナウンスが響く。



『試合終了。Eクラス選手の戦闘不能でFクラス選手の勝利!』



あ···ヤバ、勝っちゃた。負けて面倒事を回避する予定だったのに···

つい、テンション上がって反応的に反撃してしまった!


「嗚呼!失敗した~!平穏の日々が更に遠退くじゃん!

もう何やっているのよ、私」


沈着冷静を心掛けているのに、何で熱系の心が中途半端に

発動するのよ!自己嫌悪気味に私は頭を抱えて悶絶する。


「成美ちゃん達に色々聞かれるんだろうな···はあ」


特訓場グラウンド奥、休憩室手前で目を丸くしてこちらを見ている

成美ちゃんが視線に入ってくる。

それを見た私は何度したかわからない溜め息を吐く。


「はあ···面倒だな」


この後の事を考えただけで、もう一度溜め息を口が吐いた。


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