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12話・私の平穏


時間は過ぎ、放課後の時間···。



学園の生徒が帰宅時に移動している中···私は今、クラスの女子生徒達に

ガッチリと囲まれている···。


「ねね、天上様とはどう言う関係なの?」

「神代ちゃんとデートって本当?」

「もしかして、鳥飼様ともデートなんじゃ?」

「何て、羨ましい!」


はあ、参った。この質問攻めが始まって、もう何分経ったのやら···。

私が言うのも変だけど、本当女ってゴシップ好きだよね。


このクラスはいじめをするような陰険はいないから

こんな黄色の声だけで済んでるのは幸いだが、

やはり、こういうのは慣れないなあ···。


さて、どうやってこの状況を抜け出そうか···。

この手はあまり使いたくはなかったが···仕方ない。


「あ~!神代君!そんな所で何しているの~?」


私はある方向に視線を送り、大きな声でそう叫べば、女子生徒達が

その視線の先に目を向ける。


よし!今だっ!


そう心で叫んだと同時に、その場を全力で走り抜け上手く脱出をする。


「あ~!待ちなさい、星乃さん!」

「うわ、何てしょうもない引っ掛け!」

「それに見事、引っ掛かる私達!」

「もう、覚えてなさいよ~!」


それぞれが悔しげな言葉を連ねる。




「ふう。見事、巻いたわね。でも、明日も囲まれるんだろうな···

はあ、私の平穏な学生生活が!」


まあ、『クラス魔法対抗戦』のFクラス代表になった時点で

私の平穏は、崩れていく兆しがあったんだけどね。


でも、さあっ!


「まさか、ここまで崩れるとは予想の範囲を越えすぎてるよっ!!」


私は天に向かって心の叫びを口にする。


「うるさい···静かにしろ」


耳に注意の声が届く。その声が聞こえた方向に、紗季は視線を向ける。

するとそこには例の転校生が、庭広場のベンチに座っていた。


「はは···ごめんなさい。煩かった?え~と、確か名前は···高坂君

···で、多分あってる···よね?」

「何故、俺の名前を知っている?」


鋭い眼光で、露骨な態度を嫌ともしない表情で紗季の顔を見ている。


「それは、あなたと同じクラスだからよ。転校生君」


私は冷静に高坂君の問いにこう答えた。


「すまなかった。同じクラスなのに、覚えていなくて···」


紗季の答えを聞いた高坂は、すぐに表情を崩して

直ぐ様、陳謝の言葉を口にする。


「いいのいいの。高坂君は転校して来て、まだ1日も経っていないだよ、

そんなの当たり前だよ、だから気にしない!」

「う、うむ、そうなんだろうが···すまん」


再度謝る高坂。それをへえ···と言う表情で紗季は見る。


「高坂君ってクール系かと思ったけど、意外に熱系なんだ?」

「ね、熱系?そんな事、言われたのは初めてだな···はは」


紗季と高坂は顔を見合せた後、お互いに表情と口が緩んで微笑み合っている。


「じゃあ。高坂君にこれ以上すまなくさせるのもなんだし、

こちらも自己紹介しておくね!では、こほん······」


私は高坂君の方を見て、自分の自己紹介の為に咳払いをして、

口を開く······


「私の名前は星乃紗季。クラスはF。恋人は募集中ですっ!よろしく!」


神代君や鳥飼君がやっていた冗談を込めた自己紹介を私は言ってみた。

うん、やっぱ恥ずかしいな···これ。今度からは辞めておこう。


「俺も一応、自己紹介しておく。俺の名は高坂刀夜。クラスはF。

残念ながら恋人はいない···よろしく」


高坂も不器用ながらも冗談を返してきた···意外に乗りはいいようだ。

この人、やっぱり熱系だ。


「それで、高坂君は放課後だと言うのに、こんな所で何しているの?」

「ん、ちょっと考え事をな。」

「考え事?」

「まあ、そこまで大した事じゃないんだけどな···」


その言葉とは裏腹に心なしか、高坂の表情は少し曇っているのが

紗季には見てわかる。


「さて···時間も時間だし、俺はこの辺で帰る事にするよ。

それじゃあな、星乃さん!」

「じゃあ、また明日ね~高坂君!」


ベンチを立ち、帰りの挨拶を言う高坂に対し、私も同じく帰りの挨拶をする。


「·········」


私は遠くに歩いて行く高坂君の背中に向けて、大きく手を振る。

そして、見えなくなった高坂君の姿に、ふと何かを心に思う。


何だろう、この感じ···心が痛い気持ち、高坂君に緊張でもしたのかな?


「だとしたら、私らしくないな···」


別にドキドキするわけでもない···。しかし、心が痛いこの変な感情に少し戸惑う。

いつの時か、同じような気持ちになった記憶なのか、やはり上手く思い出せない···。

いつだったか···最近だった気もするこの気持ち。そうこう思ってる内に、私はこう結論付ける。


「ま、いいか。思い出せないって事は、大した事でもないんだろう···

さて、私も帰るとしますかね···!」


私は頭を切り替えて、寮へ足を向け歩いて行く。


「あ、カバン忘れてた!」


それに気付いた私は、慌てて教室に戻るのであった。






しかし、私は忘れていた···教室で女子生徒達が待っているのを。

思い出したのは、教室のドアを開けた瞬間だった。



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