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状況把握って、大事よね。



悪役令嬢。それは乙女ゲーム等で主人公の恋の障害として出てくるライバルキャラのことであり、その中でもお金持ちでどこかしらのすごい家の娘のことを指す。詳しくはネットで検索!

……うん、ごめんなさい。ふざけすぎました。ちゃんとした理由はあるんだけどね。


いや私も乙女ゲームが大好きで? その悪役令嬢に転生して死亡フラグを回避していくお話も大好きで? よく知ってるわけですよ。それはもう、毎日読み漁ってたくらいには好きなの。

ある日いつものように通学途中だった私は車に撥ねられご臨終。目が覚めたらやたらと豪華な家にいるし、自由に動けないし……やだ何この超ありきたりな展開……ほんと勘弁して……。

前世の記憶を引き継いだから強くてニューゲームというわけではないが、お金持ちの娘として育てられました。めんどくさい。


だが、一つ問題がある。それは、私、リーディ・アニロスがとある乙女ゲームの悪役令嬢だってことだ。


「はぁ……」


いやはや人生わからないものですよ。いや一回死んでるけど。二度目の人生ですけど。とりあえず人間でよかったなとは思ったけどね。

だがしかしそれとこれとは別だ。今まで平々凡々に暮らしていた女子高生モブAみたいな私が交通事故ってだけでも意味わからないのに転生だと? しかも前世の記憶持ち? 挙句の果てには乙女ゲームの悪役令嬢?


勘弁してくれ。私は平和に暮らしたいとは思って……はいなかったけど自分に理不尽な死亡フラグが降り掛かってくるような人生は望んでない。死亡予定年齢十八歳だそ。ふざけんな、こんな早く死んでたまるか。

とにかく、何とかして攻略対象及び主人公から遠ざかって大人しく過ごすのだ。

ええと紙……あった。

幸いなことに、私はこのゲームが大好きでルートを把握している。ソラで言えるくらいにはやり込んだからな。


まずこの乙女ゲームが始まるのは魔法学園へ入学してからだ。魔法の資質があること、という条件があるものの、納めなければならない金額は膨大、まさに貴族のためにあるような学校である。ほんの僅かな良心として優良枠という制度があるが、成績優秀で性格も良くて見た目も良い、みたいな激ムズ条件。まぁ、主人公は当然のようにそれをクリアしてくるけど。主人公だから。主人公ですから。この優良枠では学費どころか生活費まで出してくれるから貴族以外でも入れるってわけ。テンプレ。

ちなみにこの学園に入学しないって選択肢はない。私はアニロス公爵の一人娘であり、世間体的にも行かないわけにはいかないのだ。貴族はほぼ確実に魔法の素質を持っているため、魔法が使えないということもない。

というか、日常的に魔法を学べる学園に行かないなんて、信じらんない。だって魔法だよ? あの魔法ですよ? ラノベを嗜むのなら一度は憧れるであろう魔法ですよ? 発動モーションも現象も在り来りのものだけど、画面の中で見るのと目の前で見るのは絶対違う。私は魔法をマスターしてみせるんだから!!


閑話休題。


庶民のはずの主人公は、入学してくるなりその頭角を現すわけだ。使い手が少ないと言われる特殊魔法の使い手で、その他の教科も超優秀。

でも貴族ってプライド高いじゃん? 庶民が入ってきたら馬鹿にして虐めるわけ。その主犯格が今の私、リーディ・アニロス。あぁ馬鹿、何でそんなことをしたんだリーディ……。

もう一人私のお気に入りでものすごく可愛いライバル令嬢がいるんだけど、それは後で存分に説明する。


その後はご想像の通り、主人公と攻略対象が接近、仲を深め、リーディ達の嫌がらせにも絶え抜き、迎える卒業式前日。全校生徒が集まる前で公開弁論が開かれ──言い出したのはリーディ──無事論破される。なんて自業自得なの。ちなみにリーディは良くて国外追放、悪いと死刑だ。いつも思うけど国立とはいえたかが学園内のことで国外追放か死刑って酷くない? 他のゲームじゃともかく、このゲームでは国全体巻き込んでなんちゃらじゃないよ?

王族強すぎだろ。

ちなみに主人公は好感度を上げた攻略対象との婚約を発表し、その後のエピローグではとても幸せな生活を送っていた。ギリィ。


……ね? 誰だってそんな破滅まっしぐらな人生を送るのは嫌でしょう? 私は絶対に嫌だ。断固拒否する。そもそも私、攻略対象の男ども目当てであのゲームをしてたわけではなかったし。つーかどうでもよかった。それなりにイケメンではあったけど通過点だった。

じゃあ誰が目当てでゲームを進めていたのかと言うと、真の裏攻略対象キャラである。それも本来の隠しキャラを含め、全てのキャラを攻略しないと解放されない、幻の攻略ルート。存在は聞いていたものの、私はそのルートへ辿り着く前に死んでしまった……無念すぎる……!

だから! 私はこの人生をかけてその子を攻略したい……! あわよくばお友達に!! そしてもし、もし許されるなら……その……こ、恋び……恥ずかしいわ言わなせんな!!


……いけない、いけない。少し落ち着こう。


私が攻略したいのは、先ほど言ったもう一人のライバル令嬢のことだ。

名前はミフィティ・カローフ。子爵家の一人娘で、特異な容姿と資質のせいで味方が誰もいない状況で育ったヤンデレ少女。この子、驚くことに邪魔してくる理由が「主人公にくっつく男どもが許せない」なのだ。つまり、好きなのは主人公。百合。美味しすぎる。可愛すぎかよ……。製作チームグッジョブ。


しかし、彼女がこんな歪んだ性格嗜好になったのにも理由があるのだ。

魔法学園があるくらいなので多少の異能は珍しくもないが、このミフィティは少し違った。生まれた時から全属性、確認されていた魔法だけでなく、未知の魔法までも使いこなせたのだ。それを気味悪がった父親──カローフ家現当主はミフィティを地下に軟禁。魔法学園に入学するまで世話係のメイド以外には誰に会うことも許されず、十六年過ごした。何してんのお前殺すよ?

そんな環境で育ったら、誰だって歪む。その中で唯一の救いは、一人のメイドだった。高校生くらいの年齢のメイドの彼女は、ミフィティを恐れることなく受け入れ、話し相手になり、少しずつではあるがミフィティを光サイドに連れ戻していた。ミフィティが幼少期に屋敷を木っ端微塵にしなかったのはこのメイドの存在が大きい。良くやったメイド……いいぞもっとやれ。ちなみにミフィティが百合なのはこのメイドのせいである。マジグッジョブ。

しかしミフィティが十歳を過ぎた頃メイドは突然世話係を外され、二度と会うことはなかった。当主殺す。絶対殺す。許さん。


まぁそんなわけでミフィティは無事百合になり、外に出られる十六歳になった頃にはメイドは屋敷を去って、結婚して幸せになりましたとさ。と行きたいところだが、そこでミフィティのヤンデレ属性発動。メイドの旦那を遠隔魔法で自殺させたが、なんとメイドまで後を追って自殺してしまった。失恋に心荒れ模様のまま魔法学園で主人公を見つけて一目惚れ、男どもにちょっかいをかけるわけである。


以上、ミフィティについて。可愛すぎて死ぬ。私が。全力で殺しに来てるこの設定。ほんと好き。

ちなみにミフィティ、最後はリーディと同じく死刑か国外追放だ。可哀想……悪いのはあの親なのに……ミフィティはただヤンデレなだけで純粋な美少女なのに……。



……と、も、か、く、私はミフィティを攻略、あわよくば一緒に住んだりお出かけしたり美味しいお菓子を食べたりお風呂で背中流しっこしたりしたいのだ!! 思いっきり愛でたいのだ!! 悪いか!?


だが、ここで問題がある。ゲームの中でミフィティは主人公に一目惚れするのだ。病的に一途な彼女をそこから私に視線を向けさせるのは少々骨が折れるだろう。何せ本来のストーリーでは、男どもが欲しいリーディと主人公が欲しいミフィティで、結託して邪魔してくるルートまで存在するのだから。どうするべきか。

まずミフィティを主人公に一目惚れさせないことが重要だ。そうなれば私になど見向きもしないだろうから。先に他の人に一目惚れさせるか……? 才色兼備な主人公以上の逸材がいるだろうか……?


なんかごちゃごちゃしてきた。一度この辺で情報をまとめてみるとしよう。


一つ、私はミフィティを攻略したい

一つ、しかしミフィティは主人公に一目惚れする

一つ、それをどうにか阻止しなければならない


……よし、私がいこう。どの道私に振り向かせたいのだから、主人公に会う前に私に夢中にさせてしまえばいいのだ。初恋は私。なんていい考えなの。


では次に私の今の状況だ。

私はリーディ・アニロス。アニロス公爵の一人娘で、現在七歳。前世の記憶は生まれた時からあったので、この世界のある程度の知識は取得済。いずれ役立つかと思ってね。結構面白かったし。もちろん使用言語は日本語だ。乙女ゲームの世界だから当然だと思う。

学力の目あすとしては、だいたい高校二年レベルだろうか。数学やあと現在は独自に地理と歴史を習得中。英語や古文などという面倒な教科は存在しない。この世界は初めから現代日本語だ。どこへ行っても日本語が共通語なのである。後は実技系だが……料理は危ないからと断られた。運動はあまりしてないが、広い屋敷を頻繁に歩き回っているのでそこそこ鍛えられていると思う。屋敷の外の人との交流はない。まだ屋敷の外に出たこともないし、たまに父親の知り合いを影からこっそり見るくらいだ。でもこの国の要人や凄い人は母親やメイド達に聞いて理解してる。


……こんなものかな。今まで世界の仕組みと情勢を理解することに時間を費やしてきたけど、そろそろ行動を起こすべきだろう。学園入学間近になってからでは遅いと思う。

だが個人的にはその前に料理を取得しておきたいと思うのだ。自分でお菓子を作れたら好きな時に好きなお菓子が食べられるではないか。前世の記憶で簡単なもののレシピは覚えているのでなんとかして作れないかな。ぶっちゃけ食べたいからって他人に作らせるのがものすごく申し訳ない。

そこまで考えてため息をついた時、入口からコンコン、と音がした。


「お嬢様、夕食の時間でございます」


時計を見上げればすでに六時を過ぎている。窓の外は既に陽が傾いていた。部屋の中も大分暗い。もうこんな時間だったのか。書き物をしてるのに暗くなってるのに気づかないって夢中になりすぎ。


「今行きますわ」


お嬢様と呼ばれるのも慣れた。人間、慣れでどうにでもなるんだなってことを学んだけど何の役にも立たないな。

続きは明日にするとしよう。



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