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無法都市限定、驚きの大特価!!

 秋休み。


 僕は姉さんと二人で無法都市に行った。


「ここが無法都市か。臭いね」


「仕方ないでしょ。スラムなんだから」


 姉さんは視線で浮浪者を威嚇しながら言う。


 遠くを見ると、三本の塔がそびえ立っていた。ボーリングのピンみたいに倒してみたいな。


「あの塔に行けばいいのかな?」


「アンタねぇ。いきなり敵の本拠地に乗り込んでどうするつもりよ。魔剣士協会が拠点を用意したらしいから、まずはそこで情報を集めるわ」


「へー」


 僕は姉さんの後ろに付いてスラムを歩く。しばらく進むと露店が並ぶ場所に出た。


 変な食べ物や怪しい薬や盗品やペットが並んでいて活気がある。


「そこの美しいお嬢さん! 見ていきなよ! 活きのいいペットが入荷したよ!」


「私?」


「そうそう、そこの世界で一番美人なお嬢さんだ!」


「ふん、分かってるじゃない。少しだけ見ていってあげる」


「姉さん、お世辞だよ」


「黙れ」


 僕は露店に連れて行かれた。


「さあさあ、こちらが入荷したばかりの活きのいいペットだ!」


 店主に引きずられて来たのは隷属の首輪に繋がれた金髪の青年。


「魔剣士奴隷のゴルドー君だ! どうだい、イケメンだし美しいお嬢さんにぴったりだろう?」


 ゴルドー君の顔は集団リンチされたかのようにボコボコで「ウー、ウー!」と呻き何かを訴えかけてくる。


「随分とボコボコだけど?」


「うーん、どこかで見たような気がするなぁ」


「ハッハッハッ! 輸送の衝撃でちょっとばかり傷んじまったかな? よし、3000万ゼニーのところを2700万ゼニーにまけてやろう!」


「高いわね」


「いやいやお嬢さん。このレベルの魔剣士奴隷は外で買ったら倍はするぜ? 無法都市だからできる、特別価格だ!!」


「いらないわ」


「買い物上手だねぇお嬢さん! わかった今日は特別にもう一匹付けよう!」


「匹で数えるんだね」


「さぁさぁ! こいつも活きのいい魔剣士奴隷のクイントン君だ!!」


 店主が連れてきたのは腹に大きな傷がある悪役プロレスラーのような男。一応、傷の手当てはしてあるようだ。


 クイントン君は「ムー、ムー!」と呻き何かを訴えかけてくる。


 こっちもどこかで見たような気がする……。


「ゴルドー君とクイントン君、二匹セットで4000万ゼニーだ!! こんなの無法都市じゃなきゃ買えないよ!?」


「お腹切れてるけど?」


「おおっと、こいつも輸送の衝撃で傷んじまったか!? 分かった、二匹セットで3700万ゼニー! これ以上はまけられないッ!?」


「やっぱりいらないわ」


「ええ!? そりゃあないよお嬢さん!?」


「私には間に合っているから」


 姉さんはそう言って僕の頭をガシガシと撫でた。


「なるほど坊主はお嬢さんのどれ……」


「いや違うから」


「行くわよ」


 僕は姉さんに首根っこ掴まれて引きずられていく。


 すると、誰かが店主に声をかけた。


「店主。二匹で3700万ゼニーってのが本当なら買うぞ」


「もちろん本当です、まいどあり! ん? ま、まさかアンタは!?」


「ウー、ウー!」


「ムー、ムー!」


 どうやら二匹は売れたみたいだ。


 二匹ともどこかで見たような顔だったから心配したんだけど無事に売れてよかった。


 あれ?


 売れたってことは現在あの露店に少なくとも3700万ゼニーの現金があるってことでつまりそこを襲撃すれば……。


 いやいや、あんな小物で満足しちゃだめだ。


 夢は大きくいこう。


「ほら、さっさと歩きなさい」


「そんな引っ張らなくても歩くよ」


「こうしないとアンタが迷子になるでしょう」


「ならないって」


 僕は歩きながら遠くにそびえ立つ三本の摩天楼を見据えた。


 赤と白と黒の塔がそれぞれ一本ずつ。


 さて、どれにしようかな。

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― 新着の感想 ―
> 売れたってことは現在あの露店に少なくとも3700万ゼニーの現金があるってことで 確かに。それは考えなかった。
ゴルドー&クイントン マジで覚えていないとは、酷すぎるww
[一言] ゴルドー君、逃亡失敗したのか
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