人が最も隠したい秘密
僕は実験体ドエムの脳ミソに魔力を流し、センスとフィーリングでロボトミー手術を執刀した。
秘密をたくさん話してくれますように。
と、願いを込めてビビビッと魔力を流した結果――。
「お、お、お、お尻ぺんぺん、どど、ど、ドエムはお尻ぺんぺんしてほしい――!」
逝っちゃった目でお尻ぺんぺんを要求するおっさんが誕生した。
少し刺激が強すぎたかな?
もう少し前頭葉の方に魔力を流してみよう。
「ビビビッと」
「お、お、お、お尻いいいいいいぃぃぃぃぃいいいいい――ッ!! いッ、いッ、いぃぃ……」
「あ……強すぎた」
そして、記念すべき実験体一号は静かになった。
彼は天国へ逝ったのだ。
この結果をどう受け止めよう。
実験は失敗したのだろうか――否。
「目的の情報とは違うけれど、彼が最も隠したかった秘密が知れた。むしろこれは成功と言えるのではないだろうか」
そう、僕は秘密をたくさん話してくれますようにと願ったのだ。
そして彼は最大の秘密を話してくれた。
「実験は成功だ。そうでなければ彼に失礼だ」
この実験は大切なことを僕に教えてくれた。
人が最も隠したい秘密は、組織や仕事の秘密ではなく、自分自身の秘密なのかもしれない……。
「君の秘密は墓場まで持っていくと約束するよ」
僕は、泡を吹いて幸せそうなドエム氏に黙祷を捧げて、ショートレンジアトミックで遺体を消滅させた。
「一つ面白そうな話もあったし、よかったよかった」
お尻ぺんぺんの他に、ドエム氏は一つ面白そうな話をしてくれたのだ。
そうだ。ヴァイオレットさんにも教えてあげよう。
「起きて起きて」
ポケットからヴァイオレットさんを取り出すと、彼女は眠たそうに指を丸めた。
指でも眠ることに驚きだ。
「面白い情報が手に入ったんだ。さっき捕まえた男の人いたでしょ。彼はお尻ぺんぺんが好き――」
ぺちん。
「――あ、間違えた。実は裏ルートでシークレットな秘密の情報を入手することに成功したんだ」
ぺしぺし。
「危険な裏ルートの話によると、オリアナ王国の王城には……」
僕は意味深な笑みを浮かべてとっておきの情報をヴァイオレットさんに話してあげた。