僕の出番を取らないで
皆様のおかげで書籍二巻の発売日が3月5日に決定いたしました!!
詳細についてはまた後日お知らせいたしますが、今回も5つのエピソードを追加しています!
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魔力を空に放った僕がやりたかった新たな試みとは、謎の力による兵士の遠隔強化作戦である。
物語でよくある戦闘中に謎の力によってパワーアップして勝利するやつ。「この力はいったい……」ってなって、物語が進むにつれて力の謎に迫っていくパターンね。
この兵士遠隔強化作戦は僕の技量も試される。
まずは空に魔力を放ち黒い薔薇で演出し花弁を介して魔力を注入し一時的に強化する。ここまでは問題ない。
問題は急激に魔力を注入すると兵士の身体が負荷に耐えられず壊れてしまうことだ。
強化はできるが、強化できる上限は低い。だが、それだと魔剣士を相手にした場合に不安が残る。
そこで、僕の技力が試される訳だ。
僕は花弁で魔力を注入すると同時に、糸状にした魔力を彼らの体内に張り巡らした。『黒き薔薇の誓い』全員分、全神経を集中し超緻密な操作をした。脳の神経が焼き切れるかと思った。
そうして可能になったのが兵士の遠隔操作、その名も『陰の操り人形』である。
「はっはー!! すげえ力だ!! 三人まとめてぶった切れるぜ!」
「おらおらおら!! このスピードについてこれるか!?」
「ふんふんふん!! 誰か俺を止めて見ろ!! 地平線までぶっ飛んじまうぜ!!」
強化された『黒き薔薇の誓い』は包囲を突き破る勢いだ。
包囲された寡兵が押し返すなど、普通ではありえないことだ。
「な、なんてことだ……と、止めろ!! 何としても止めるんだ!!」
ここで突破を許せば隊列は崩壊するだろう。
だから当然、魔剣士が出てくるのだ。
「チッ! またてめぇか!!」
「クッ! またしても俺の槍を止めたかッ!!」
「フンッ! やるじゃねぇかッ!!」
やはり、魔剣士には止められるか。
再び止められたおっさんたちは、魔剣士によって劣勢に追い込まれる。
仮に僕の強化で力が互角になったとしても、おっさんたちは素人で魔剣士たちはプロだ。技量と経験が根本的に違う。敗北は必然なのだ。
でも大丈夫、ここで『陰の操り人形』の出番なのだ。
僕は皆の体内に張り巡らせた魔力の糸を操作する。
そして――。
「な――この動きは、身体が何かに導かれる!?」
おっさんの動きが豹変した。僕の遠隔操作でサポートされたおっさんの槍さばきは、魔剣士の技量を凌駕する。
「死角からの攻撃に反応した!? 俺にも敵が見える!!」
見えなくても安心、360度完全サポート。
「避けても無駄だ! 俺の槍からは逃げられねぇぞ!!」
敵の動きを予測した自動追尾機能も搭載。
遠隔操作によって達人へと変貌したおっさんたちによって、魔剣士部隊は崩壊していく。
そして魔剣士が敗れたことで形勢は完全に決まった。
圧倒的ではないか『黒き薔薇の誓い』は!
「なんてことだ、なんてことだ……これが『黒き薔薇』の力……本部に、王都の本部に伝えろッ!! 『黒き薔薇』が現れた!! 『黒き薔薇』が現れたぞ!!」
突破を許した敵軍が崩壊していく。
司令官が撤退を開始すると、後はもう一瞬だった。広場は『黒き薔薇の誓い』によって完全に制圧されたのだ。
「深追いは止めろ! 城を確保するぞ!!」
「この力があれば必ずできる!!」
「俺たちに不可能はない!!」
そして、『黒き薔薇の誓い』は勢いをそのままに城内へと突っ込んでいく。
僕はおっさんたちの後ろでモブっぽく走りながら考えた。
今回の新たな試みについて、問題点というか不満点というか微妙な点が二つある。
一つ目、僕の負担が大きい。
これまで糸で百名近い兵士を操ったことなんてなかった。
魔力探知で戦場の情報を完全に把握するだけでも負担が大きいのに、さらに糸で操作して兵士を動かさなければならないわけだ。集中して操作できる兵士は数人しかいないだろう。真面目に脳の血管が焼き切れそう。
二つ目、僕がやりたかったのは「この力はいったい……」ってなって、物語が進むにつれて力の謎に迫っていくパターンだ。
まだこの時点で力は謎のままのはずなのだ。そして物語の終盤に『陰の実力者』が登場し大いなる真実を明かす――そのはずだった。
なのに、なぜ……。
「俺たちには『黒き薔薇』がついている!!」
「『黒き薔薇』よ!! 俺たちに勝利を!!」
「いくぞ!! 『黒き薔薇』に選ばれた戦士たちよ!!」
……なぜ『黒き薔薇』とかいうお伽話の伝説が僕の出番を掠め取っているのだろう。
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