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圧倒的カロリー不足

 収容所の中で僕らゴミの食事は一日一回だ。


 浮浪者のような集団が中庭で列を作り食事を受け取っていく。メニューは固いパンにスープだ。


 僕が食事を受け取ると、周りの視線が僕に集中しているのが分かる。


 新入りの食事を狙っているのだろう。


 気づかれないようにしているがバレバレだ。


 僕は後でザック君に質のいい食事をもらうわけだし、モブっぽく最初は取られてもいいんだけどちょっと味を確かめてみたい気もする。


 ま、どっちでもいっか。


 僕は食事を両手で包み込むように隠して足早に人ごみをかき分けた。


 これで強引に取るなら取ってもいいよ。そんな感じで。


 結局、僕は中庭を抜けてザック君に用意してもらった廊下の自分用スペースに辿り着いた。


「さて、お味の方は……」


 まずはスープに手を付ける。


 具は野菜くずと小さな豆が少し。味は……薄い塩味か。


 ぶっちゃけまずいけど食べれないこともない。


 パンも雑味があってまずい。ただ少し大きいのがいいね。


 これもスープにつけて食べれば食べれないこともない。


 まとめると、まずいけど食べれる。


 それでタンパク質が圧倒的に足りない、まともなタンパク源が小さな豆しかない。


 だがそれ以上にカロリー不足。せいぜい500キロカロリーぐらいかな。


 この一食で一日を過ごすのはどう考えても無理。


 そりゃ皆痩せ細るし……食事の奪い合いも発生するよね。


「よぉ新入り」


 食事する僕に近づいてくる二人の男がいた。


 二人とも痩せているが目だけはギラついている。


「一つ相談がある」


「な、なんでしょう」


 僕は小さな草食動物をイメージして怯えて警戒している感じを演出する。


「お前の食事、俺らにくれねぇか?」


「え、でも一日の食事はこれだけだから……」


「なぁおい、よこせって言ってんだろ!」


 二人の男が僕を見下ろし恫喝する。


「大人しくよこせば、痛い目に合わずに済む。抵抗すれば痛い目にあって食事も奪われる。どっちが利口か考えなくてもわかるだろ」


「で、でも……」


「チッ……頭悪ぃ奴だな」


 男が僕の胸ぐらを掴み無理やり壁に押し付ける。


「ま、三発ぐらい殴れば大人しくなるだろ」


 そう言って拳を振り上げた、その時。


「止めなさい」


 少女の声が彼らを遮った。


「なんだてめ――ッ!?」


「あ、あんたは……」


 声の方を見ると、廊下に美しい少女がいた。僕らと同じ囚人服に身を包んだピンクブロンドの少女だ。誰かに似ているような気がした。


「彼を離しなさい」


 ピンクブロンドの少女が睨むと、二人の男は顔を伏せた。


「チッ、行くぞ……」


「あ、あぁ……」


 彼らは僕の胸ぐらを離し足早に去っていった。


「あ、ありがとうございます。あなたは……」


「災難だったわね」


 美しいピンクブロンドの少女は僕を安心させるように微笑む。


 この収容所には、数は少ないが女性の囚人もいる。そのほとんどがドエム派のために用意された女囚だったが、彼女は少し様子が違った。


「ここでは食べ物は貴重だから、早く食べた方がいいわ」


「は、はい……」


「何かあったら私に相談――」


「クララ様、この少年はドエム派の男と話していました」


 ピンクブロンドの少女の背後から、たくましい男性が現れた。彼の目は僕を厳しく見ている。


「そう……でも、まだ何も知らないだけよ」


「例えそうだとしても、ご自愛ください……」


「……わかってる」


「あ、あの。僕はザックさんにいろいろと教えてもらっていただけで……」


「気にしないで。その……ここでは色々あると思うけど気を付けてね」


 彼女はそう言って、たくましい男を引き連れて去っていった。すれ違い際、男の目が鋭く僕を睨んだ。


 僕はビビッてるアピールをしてやり過ごし、彼らが見えなくなってから呟く。


「……重要人物っぽいね」


 食事をもらうついでにザック君に教えてもらおう。


 でも、クララって呼ばれていた子、誰かに似ているような……あ、そっか。


 なんか、どことなくローズ先輩に似ている気がする。オリアナ王国繋がりかな?

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