表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/206

謎の諜報員

 首を絞められたままザックが暴れるが僕の腕はビクともしない。


「ゴホッ……グッ……」


 ザックの瞳に恐怖の色が浮かんだのを見て、僕は首を絞める力を少し弱めた。


「俺にどうしろって言うんだ……」


「そうだな……。僕専用の個室を用意することはできる?」


「す、すぐには無理だ。一ヶ月はかかる」


 ザックの瞳を覗き込む。嘘をついている感じはなさそうだ。


「そっか。まぁいいよ。いきなり個室を手に入れても目立つしね。屋根さえあれば僕は問題ない。廊下で寝ることにするよ」


「わかった、手配する……」


「あとバランスの取れた食事がほしいな。これが用意できないなら君は必要ない」


「ひ、必要ない……?」


「うん、必要ない」


 僕は首を絞める力を一瞬強める。


「わ、わかった、待て待て待て! 用意できる、三食きっちり用意できるから!」


「頼むよ。それから……情報が欲しいかな。ここも面白そうだし、気に入ったよ。色々知りたいんだ」


「……聞きたいことがあれば答える」


「あとは僕と君の関係かな。君はドエム派だったよね。僕はまだどちらの派閥にも入る気はないんだ。ゴミでいたい」


「……なら人前で俺と話さないほうがいい。食事の受け渡しはどうする」


「食事はこの部屋で食べる。僕は誰にも見られずに入ることができるから問題ない」


「……そうか」


 ザックはとても嫌そうな顔で言った。


「ま、とりあえずはこんなところかな。また必要なことがあれば頼むよ」


「ああ、そうしてくれ」


 僕はザックの首を開放した。彼は首を押さえて座り込み僕を見上げる。


「てめぇ、何者だ。魔力を使ってないのにどうしてこんな力が……」


「さて、どうしてだろうな……」


「学生じゃねぇな。どっかの諜報員か……いや、地下組織の人間か……」


「さて、それを僕が話すと思うかい?」


 そう言って、僕は目に力を込める。


「……チッ」


 ザックは舌打ちして視線を逸らした。


「内乱絡みか……。いいぜ、俺の関係ねぇ場所でなら、好きにやりな」


「ああ、僕も自分の仕事ができればそれでいい」


「……そうしてくれ」


 項垂れるザックに背を向けて、僕は扉に手をかける。


「あぁ、そうそう。言うまでもない事だけど、このことは誰にも話さないほうがいい」


「……わかってる」


「これは忠告だ。僕は別に、君も、ドエム派も、すべてまとめて潰してしまっても別にいいんだ――」


 そう言って、僕は一瞬だけ殺気と魔力を開放する。


「――なッ!? 魔力は封じられているはずじゃ……」


「こんな玩具で僕を封じられるはずないだろう……」


 そう言って、僕は扉を開けて外に出た。 


「……ったく、ついてねぇ。とんでもねぇ奴に手ぇ出しちまった……」


 背後からザックの声が聞こえてきて、僕は心の中でガッツポーズをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[良い点] なんだろう、内心が見えない分かつ盗賊相手なのもあって、純粋にこの影の実力者がカッコよくみえたわ…
[良い点] やったねザック君! 良いムーヴしたから生存率が上がったよ!(生存フラグではない)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ