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全部どこかの愚か者のせい

『四つ葉』がミツゴシ商会によって消されてから、月丹はミツゴシ商会の調査を続けてきた。


 ミツゴシの商会の裏にある組織とその規模に問題が無ければ、今度は月丹自らが仕掛けるつもりだった。単体での戦闘力ではまず引けを取らないであろう自信が、彼にはあったのだ。


「裏が何もない、だと?」


 ガーターから報告を受けた月丹の声が低くなった。


「は、はい……」


 ガーターの声はか細い。


「まさか本当にただの商会だったとでもいうつもりか。だが、これだけ調べて何も出てこないとなればそうとしか考えられんか……」


 不自然な点はある。だがいくら調べても証拠は出てこない。


 ならばミツゴシ商会はシロとして考えるほかないだろう。


「まぁいいだろう。ならば遠慮なく仕掛けよう。ミツゴシ商会を、潰す」


 月丹の口角が吊り上がった。


 ようやくこの商会戦争にも決着がつき、彼の目的は達成される。そうなるはずだった。


 ――しかし。


「あ、あの……」


 ガーターが恐る恐る、口を開く。


「さ、最近、物価が上昇しておりまして……」


「物価の上昇は想定していたことだろう」


「いえ、想定より明らかに早いのです。それで、その、調べたところ……」


「何があった」


「偽札が発見されました」


「何?」


 月丹の声は、それほど大きくなかったというのに室内に響いた。


「に、偽札です。大量の偽札が発見されたのです」


 ギリッと月丹の奥歯が鳴った。


「大量、だと? どの程度だ」


「げ、現在調査中ですが、その、大量です」


「ふざけるなッ!! 大量の偽札をなぜ発見できなかったァ!!」


「ヒッ……お、お許しを!」 


 凄まじい月丹の剣幕にガーターが震えながら弁明する。


「に、偽札がほとんど本物と変わらない精度でして、その、おそらく少しずつ流通させて様子を見ていたのだろうと……」


「黙れッ!! 大量の偽札が流通している!? 偽札が何を引き起こすか理解しているのか!!」


 信用の崩壊、そして取り付け騒ぎ。


 月丹の脳裏に最悪のシナリオが描かれる。


「すぐに出所を突き止めろ!! もし見つけられなかったら、貴様の首、刈り取ってくれる!!」


「は、はい!」


「ミツゴシ商会は後回しだッ……!」


 こうなってはもうミツゴシ商会に手を出している余裕はない。


 そう考えた時、月丹はふと気づいた。


 まさか偽札の出所はミツゴシ商会か……?


 だがすぐに彼はその考えを否定する。


 大商会連合の信用が崩壊すれば、自然とミツゴシ商会の信用も疑われる。


 先に崩壊するのは大商会連合だが、ミツゴシ商会もじきに崩壊するだろう。


 先に倒れるか、後に倒れるかの違いしかない。結局、共倒れになるのだ。


「偽札だとッ……大商会連合に手を出すどこの愚か者め。必ず八つ裂きにしてくれる……ッ!」


「ヒッ……!」


「すぐに、突き止めろ。いいな、すぐに、だ――わかったらさっさと動けぇぇぇええええええ!!」


「は、はぃ……!」


 鬼のような月丹の形相に、ガーターは慌てて走り出した。

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