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ごーるでんれとりばー

 いやー、よくわかんないけど偽札作戦は凄くいいらしい。否定されたときはダメかと思ったんだけど、押してみるものだね。ユキメにも太鼓判をもらったし、あとは偽札ができるのを待つばかりだ。


 それまでは少し暇になるけれど、偽札が完成したら忙しくなる。


 僕の仕事は主に偽札の出所を探る連中の始末だ。


 敵のエージェントを陰ながらスタイリッシュに排除する、スーパーエリートエージェントに相応しい仕事で楽しみしかない。


 ふふふ、どうやって始末してくれよう。


 シャドウバレ対策のために刀は使えない。つまりそれは刀にこだわる必要もなくなったということで、今回は新鮮なバトルができそうだ。


 そんなことを考えながら深夜の王都を歩いていると、遠くの方に見覚えのある犬耳を見つけた。


「デルタ……?」


 僕が小さく呟いた瞬間、その犬耳がピクリと動く。


 振り向いた彼女は、まぎれもなくデルタだった。


「……ボス」


 彼女の唇がそう動く。


 そして次の瞬間、四足ダッシュで僕の目前に現れた。


 ああ、無駄に速い。普通の人には目で追えないだろう。


「ボ――!」


「今はボスじゃない」


「あぅ……シド! 会いたかった!」


 ブンブンと尻尾を振り回す。


 その満面の笑みが、次の瞬間固まる。


「シド……狐の臭いがする……」


 忘れていた、デルタは無駄に鼻がいいのだ。


「き、狐狩りをしていたんだ」


「狐狩り、デルタもする!」


 デルタの顔がパッと明るくなる。


「残念、狐はもう狩ってしまった」


「あぅ……じゃあ狐狩りまた今度」


「うん、今度しよう。あ、マーキングは止めろ」


 僕は身体を擦りつけようとするデルタを腕で押しのけた。


「でもシド、狐臭い」


「いいんだ」


「嫌」


 グイグイ来るデルタをマッスルで押し返し、僕は話題を変える。


「デルタは何で王都にいるんだい?」


「あぅ……シド、やっぱり力強い」


「デルタは何で王都にいるんだい?」


「ん? 何で?」


「デルタは何で王都にいるんだい?」


「デルタは、えっと、今日は早起きして、お肉をたくさん食べて、久しぶりに王都に来たの」


「デルタは何で王都にいるんだい?」


「えっと、デルタは、狩りをしていたの」


「王都で?」


「外で、楽しかった! たくさんたくさん狩ったの! シドも一緒に狩る?」


「なぜ狩りをしていたの?」


「シドも一緒に狩ろう!」


「なぜ狩りをしていたの?」


「アルファ様がそうしろって! シドも一緒に狩ろう!」


「そっか、アルファがそう言ったんだ」


「うん、シドも一緒に狩ろう!」


「何を狩っていたの?」


「盗賊ッ! シドも一緒に狩ろう!」


「盗賊狩りかぁ!」


「シドも盗賊狩り好き!」


「うん、僕も盗賊狩りは好きだ」


「一緒に狩ろう!」


「しばらく暇だし、一緒に狩るかぁ」


「やったぁ!!」


 デルタは僕の手を引っ張って、ずるずる引きずろうとする。


「待て待て、今すぐは無理! 寮に一回帰らなきゃだし」


「嫌!」


「デルタも用事があって王都に来たんでしょ?」


「ようじ?」


「アルファに呼ばれてたりしない?」


「アルファ様ッ!?」


「忘れてた?」


「呼ばれてた、怒られる?」


「どうだろう。早く行った方がいいよ」


「でも盗賊狩り……」


 デルタがしょんぼりと僕を見る。


「しばらく暇だから明日にしよう。先に用事をすませといで」


「分かった! シド、待ってて!!」


「寮で待ってるよ。こっそり来るんだよ」


「こっそり行く!」


 デルタは四足ダッシュの凄まじいスピードで王都の街並みに消えていった。


 見られたら絶対目立つけど、普通の人にはまず見えないし、まぁいいか。


 なんか前世で飼っていたゴールデンレトリバーを思い出して、僕はこっそりため息を吐いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 個人的にアニメの小馬鹿程度のデルタではなく、web版の脳筋過ぎて脳が足りなさすぎるデルタの方が好きだったな…。
[一言] ふと疑問に思ったことがあって最初から読み返してみると、ここで出てきてたのか、ゼータとイータ。 名前だけだけどw 七陰と言いつつイプシロンまでしか本編に出てきてなかったのでずっと気になってまし…
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