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 おう! 久しぶり、勇者だ! ――え? 誰だお前って? 出番なさ過ぎて忘れられた!? 俺ですよ、俺。勇者にして英雄(予定)にして次期国王(予定)の八原颯太(やはらそうた)でございます! 以後お見知りおきをっ! って、そんなことはどうでもいい! いや、やっぱりよくない。しっかり覚えといてくれ。八原颯太、八原颯太に清き一票を! あ、別段清くなくても結構です! 一票に貴賎はないっ!

 ……話が激しく逸れたな。軌道修正しよう。

 さて、俺は英雄にして国王になる為はるばる仲間と共に魔の国に乗り込んできたわけだが。

 飽きた。

 初めの三日くらいはまだよかった。敵を斃すのは楽しかったし、上手くやれば周囲は俺をべた褒めしてくれた。

 但し。

 飽きた。飽きました。飽きましたとも。三日坊主というなかれ。なんなら同じ作業をひたすら三日も繰り返してみろよ。絶対飽きるから。

 来る日も来る日も魔王城目差して旅をして、襲ってくる魔物を返り討ちにする。こうして書くと簡単そうに見えるけど、実際にやってるこっちは結構しんどいんだぜ。一日で何十キロと歩くから足はきついし、疲れてようが休憩中だろうが関係なしに魔物は襲ってくるし、食事中や寝込みを襲われることもしょっちゅうだ。気が休まる暇がない。せめて馬にでも乗れれば話は違ってくるのかもしれないが、素人が馬で旅なんてとんでもないとあっさり却下された。おかげですっかり足が棒だぜ。

 そうそう、あと飯が酷い。控えめに言うと不味い。はっきり言えばくそ不味い。とてもじゃないが食えたもんじゃない。ただでさえこの世界の飯は不味いのに、この遠征食ときたらそれに輪をかけて酷いのだ。もう豚の餌って言ったほうが正しいレベル。

 元から不味い食材を加工したからこうなったのか、遠征食は元来こういうものなのか。固いわ(しょ)っぱいわ脂っこいわでそれはもう酷い仕上がりとなっている。取り敢えず栄養摂れりゃそれでいいだろ、っていう作ったやつの投げやりな言い分けが聞こえてくるようだ。

 そんなわけで、この世界に喚び出されてからこっち、食事の時間はもはや拷問の時間となりはてていた。

 俺は確信したね。食事ってのはマジ活力だ。それはなにも命の源とだか身体を維持する上で欠かせないものだとかそんな大袈裟なことじゃなくて、日々楽しく生きてく上での最も大切なもの。つまり精神的なものでってことだ。飯が不味いと人生がつまらない! まさか異世界に来てそんなことを思い知るなんて……。この世界で暮らすにあたって不満に思うことは結構あるが、飯事情はその最たるものだ。

 このどうしようもない食事情をなんとか改善しようとして、俺はあれこれ考えた。そして思い出したのだ。異世界ものの小説では、オークやらオーガを食べるシーンが当たり前のように書かれているということに。つまり、魔物は美味い。ならば――やるしかないよな? 都合よく目の前にはオークの群れがいる。つまり豚の群れだ。よし、行くぞ! 今夜は焼き肉だ!


 ……止められた。それはもう全力で止められた。仲間三人に羽交い締めされ、魔物を喰う危険性をこんこんと諭された。この世界の魔物は、臭くて固くてしかも毒持ちで、とてもじゃないが食えたもんじゃないらしい。

 ならば今度は野草だ! その辺に生えてる草はきっとハーブに違いない。これをスープに加えるだけで、あら不思議、劇的に味が改善される……はず。

 俺がいそいそとそこらの草を摘んでいると、またしても仲間に止められた。

「勇者様、その毒草をどうするおつもりで?」

「…………」

 毒草だったのかよ、これ。慌てて手にした草を投げ捨てる。聞けば、この辺りに自生する草はほぼ毒草らしい。木の実も、大抵のものは一粒でも食えば即死出来るとか。中には食うと呪われる実もあるらしい。どんだけ食うもんないんだよ魔の国は!

 俺は今日も不味い飯を食う。むさ苦しい野郎共に囲まれて。果たして俺は、無事魔王の元まで辿り着くことが出来るのだろうか……。


 そんな俺を、さらなる苦行が襲った。後続の部隊が来ないのだ。追加の食料や武器なんかを持ってくるはずの部隊がいつまで経っても追いついてこない。いくら俺たちが予定より早く進んでいるとはいえ、これは遅すぎるらしい。後続の部隊に何かあったに違いない、と野営の時に神官と魔術師が話していた。

 そういえば、ドラゴンが王国の方に飛んでくのを見たな。まさかあれか。あれに壊滅させられたのか? 国は大丈夫なんだろうな。ゆくゆくは俺のものになるんだぞ。

 国と連絡取れないのかよと聞いてみたら、どうやらその手段がないようだ。手紙を送るなり物見を出すなりしようにも、俺たちは四人しかいない。これ以上パーティーの人数を減らすのはさすがに不味いらしい。ここに来て少数精鋭が仇になった形だ。

 まったく、魔法で上手いこと出来ないのかよ。普段当たり前のように使ってた携帯のありがたみが身にしみるってもんだぜ。

 結局、俺たちは進むことにした。このまま待っていても後続は来そうにないし、引き返すには食料が足りないらしい。なら節約しつつ移動速度を速め、先発している部隊と合流したほうがいいって判断だ。ま、その辺は任せるよ、俺にはよくわかんねえし。

 それにしても。ああ、美味い飯が食いてえなあ!

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