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 片付けても片付けても増え続けるものってなあんだ?

 ――正解はお仕事です。


 そんなわけで終業の後は残業の時間だ。アフターファイブとは残業の隠語。これ世界の常識。……ん、違う? とち狂ってるのは日本だけ? そうですか。……まさか異世界に来てまで日本社会の闇を見ようとは。

 そんな優良ブラック企業の社長コアは、モンスターの次は階層主を造れと容赦なく要求してくる。

 階層主とは言わばボスみたいなもので、普通は五階ごととか十階ごととか、そういう切りのいいところに置くものらしい。但し――。

「各階ごとに設置した方が防衛力が上がりますよ?」

 とはコアの言。まあその通りだわな。

 そんなわけで急遽階層主も造ることにした。

(砂漠だからピラミッド造ってファラオの木乃伊(ミイラ)にでもしようかな。あ、折角だから扉の前に中ボスクラスのスフィンクスも置こう)

 イメージ開始。まずはピラミッドから。基本構造は石造りの四角錐。中は……大きく一部屋でいいか、ボス部屋にするんだし。

 続いて木乃伊の創作。まずはその身を横たえる黄金の棺から。インパクト重視でど派手なものを。続いて本体は、全身これまた黄金の具足で固め、二メートルくらいの槍を持たせる。いかにもエジプトの武将って感じ。顔には当然ツタンカーメンマスク。金仮面に金の具足。……怪しさ満点の仕上がりだ。ついでに取り巻きのノーマル木乃伊を三体ほど。反対にスフィンクスは、大きさこそ戦車並だが、垂れた耳が可愛いぱっと見モンスターには見えない感じで。

 それを受けたコアが光り、モンスターが生まれる。ついでに、一つだけだと確実に悪目立ちするであろうピラミッドをダミー用に十個程追加する。勿論入り口にはスフィンクス付きで。

 なんやかやで結構魔力を使った気がするな。だいぶ疲れてきた。でもまあもう一踏ん張りだ。気合いを入れて、生み出したモンスター達に命令を下す。

あんた(金ぴか木乃伊)がボス。あんた達(ノーマル)は護衛。で、あんた(スフィンクス)は扉の前に陣取って来たやつに謎々を出しなさい。正解したら通してよし」

 謎々は勿論あれ。「朝は四本、昼は二本、夕は三本。なあんだ?」ってやつ。

「え? 敵を通しちゃっていいんですか……?」

 リリは愕然としていたが、これは様式美なのだ。その代わり、「案内するふりして一緒に部屋に入って、戦闘が始まったら背後から襲いなさい」と、追加で指示を出しておく。ハズレのピラミッドの場合は、中で待ち受けているモンスター達と一緒に背後から襲えと別途指示。

 ふと思いついたので、中のモンスターが全滅した時には天井が落ちてくる仕掛けを追加。ボス部屋も同様に。敵を斃して気が(ゆる)む瞬間を狙い撃ちする素晴らしい仕掛けだ。

 なお、ボス部屋に限っては、落ちた天井の上に次の階層へと続く門が現れる仕組みにした。そうしないと次階層へ行けなくなっちゃうからね。わたしとしてはそれで全く構わないのだけれど、さすがにそういう訳にはいかないらしい。「ダンジョンをなんだと思っているのですか」と、コアに苦言を呈されてしまった。いいじゃん、別に。どん詰まりダンジョン。斬新なアイディアだと思わない?

 と、ここまで隣で聞いていたラグが一言。

「えげつないですぞ、師匠」

 それが魔王の台詞か、ラグよ。


 そんなこんなで今度こそ本日のお勤めは終了。レグナートに乗って城へ帰還する。因みに一人にしないでと騒いだコアも一緒だ。ダンジョンから離れてモンスターを生み出せるのかと聞いたら、リンクを再構築したので問題ないとのこと。ならいいか。

 城に戻ったラグは早速リリをメイド頭に紹介し、明日から働けるよう手配する。まめな魔王だね。

 移動してる際にグレースに見つかり、「また娶るのですか!?」なんてどこかで見たような遣り取りがあったりしたのだが、これは割愛しよう。グレースって新しい女の人見ると毎回言ってるんだろうか? それにしたって今回の相手は幼女だぞ。……多妻ってのも考え物だ。

 巻き込まれないよう早々に自室に避難したわたしは、夕飯までのんびりと(くつろ)ぎタイム。今日のご飯はなんだろな。だいぶ働いたからお腹がすいた。でもおかげで国境ダンジョンのほうは目処がついた。まだ一階層しか出来てないけど、所見であの仕掛けを突破するのは難しいだろう。とすると残るは魔王城か。

「そういえばコア」

 ふと疑問を覚え、側に置いたコアに問いかける。

「魔王とマスターが同時に一つのダンジョンに干渉出来ないなら、魔王同士ならどうなの?」

 国境ダンジョンの方は仕方ない、引き続きわたしが担当するとして、魔王城の方も強化は(おこた)れない。なんたって現在進行形で攻められているのだから。四人で掛かれば一日二階層造ることが出来る。

 ところが、コアの返答は非情だった。

「不可能です。一つのダンジョンには一人の管理者が原則です。複数の者が同時に一つのダンジョンに干渉することは出来ません」

 わたしの希望をばっさりと切り捨ててくれる。

 そしてこれがこの世界にダンジョンが増えない理由らしい。みんな自分のダンジョンの管理だけで手一杯。一人で二つのダンジョン創造なんて魔力量的に不可能。一点集中しての共同制作も不可。

 ――なんてこった。せっかく魔王ズ(労働力)が手元にいるのに、これじゃあ宝の持ち腐れじゃないか。せいぜい敵に突貫させるくらいしか使い道がない。……む? 待てよ。むしろそれで十分なんじゃないのか?

 多少の誤差はあるにしても、一人一人がラグ相当の戦力と考えてそれが三枚。……人間軍なんて簡単に壊滅出来る気がしてきた。いかな平和主義の魔王ズとはいえ、さすがに攻めてくる人間を蹴散らせという指示には従うだろう。――よし、明日早速けしかけよう。

 光明が見え気分がよくなったわたしは、意気揚々と夕餉へ向かったのだった。

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