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「ところでマスター。ダンジョン内に生命反応があるのですが、改装を始めてしまってよろしいのですか?」

「生命反応?」

「はい。何者かがダンジョンに侵入しているようですね」

「そんなことわかるんだ」

「これでもダンジョンコアですから」

 コアが得意げに明滅する。

 それにしても、侵入者か。む? 待てよ……そういえば筋肉に中のお掃除を頼んだんだっけか。

「それ、たぶん知り合い」

「そうなのですか? なら改装は待った方が良さそうですね」

 中に人がいるまま改装を実行した場合、大抵は巻き込まれてダンジョンの栄養になるのだとか。魔物も同様だけど、その場合はいずれまた湧くから問題なとのこと。

 でも筋肉は仮にも魔王なんだから平気じゃない? と聞いたところ、以前巻き込まれて栄養になってしまった魔王がいたそうだ。ほんと、この世界の魔王ってお莫迦ばっかり……。

 まあでもいいことを聞いた。魔王にも有効なら、当然同格である勇者にも有効だろう。侵入者がある度にやったら魔力が保たないだろうけど、対勇者の最終手段として覚えておこう。

「ところでコア。中に何人いるかもわかる?」

「一名です。あと五分ほどで出てくるかと思われます」

 わかるんだ。ダメ元で聞いてみたんだけど、コアは結構優秀なようだ。中に人間が大挙しているようなら手伝いに行こうと思ったけど、ならその必要もないね。

 ともあれ筋肉を巻き込むわけにはいかないので、暫くその場で待機する。ややして出てきた筋肉を労い、リリとコアとをそれぞれ紹介。リリを引き取ると言ったラグに対して、筋肉は一言「そうか」と告げたのみ。この世界にロリコンという概念はないのだろうか? それとも、曲がりなりにも魔王な筋肉も、さっきラグが語った事情を理解しているのかな?

 まあいいか。考えても仕方ない。問題が起きそうならその時考えよう。そんなことより、いよいよダンジョン改装だ!

「まずは、どのような内装にしたいのかをできる限り詳しくイメージして下さい。(わたくし)がそれを読み取り、実行します」

 例によってコアがペかペか光りながら説明する。つまりわたしがすべきは想像だけ。誰にでも出来る簡単なお仕事です。

 さて、どうしようかな。まずは実験も兼ねて簡単そうなやつからいくか……。

 コアを握りしめイメージを固める。

「マスターより心象入力を確認――固定――完了――出力開始――対象:国境ダンジョン第一階層――完了。ダンジョン第一階層の改装を完了しました」

 最後に一際強い光を放ち、コアは改装の完了を告げた。途中、魔力を吸われる例の感覚がしたが、まあこの程度なら問題ない。って、さっき吸った魔力使えよ! 文句を言ったら「残存魔力が不足気味ですので」と、あっさり流された。どうやら長年の封印で干からびかけていたらしい。なら仕方ないか、大目に見よう。

 早速出来映えを確認しに中に入ってみる。単純な構図だったから上手くいってると思うけど、どうだろう……。ドキドキしながら踏み入ったそこは、まさに別世界。

 まず目に入るのが、果てしなく続く砂の大地。熱風が吹き付け、砂塵を舞い上げる。焼け付くような陽射しが照りつけ、彼方には蜃気楼まで浮かんでいた。

 そう、わたしが想像したのは砂漠だった。国境の長いトンネルを抜けると砂国であった、ってわけだ。実際はダンジョンの中だから国じゃないんだけどね。ま、そこは気にしない方向で。ついでにいうなら洞窟の中だけどちゃんと太陽が再現されていた。この分なら夜には月と星が出るのかな。一体どういう理屈なんだろう? まさに異世界ファンタジー。

 ともあれ砂漠だ。昼と夜との寒暖差と、足を取られやすい砂地でじわじわと体力を奪っていくのが狙い。暑さと寒さ、両方に対処しないといけないからその分必要な荷物も増えるしね。

 さて、これを見た三人はというと……。

「おお、壮観ですな」

 素直に感心するラグ。

「こりゃまた(えら)く変わったもんだな……」

 改装前と比べて驚く筋肉。

「なんなんですか、ここ?」

 相変わらずの(恐ろしい)目付きで不審げに問うリリ。

 三者三様の感想を頂きました。この反応を見るに、リリは砂漠を知らないのかな? 昔の人達は自分の育った村から出ることさえまれだったっていうから、似たような世界観に暮らすリリが知らないのも無理ないのかもしれない。取り敢えずリリには、ここは砂漠というのだと伝えておく。

「ふむ……」

 そしてわたしも改めて周囲を見回し、その出来に満足する。うん、イメージ通りだ。コアとの意思疎通に問題がないことを確認する。

「マスター、いかがでしょう?」

「ん、完璧」

「お褒めいただき恐縮です。マスターのイメージはとてもはっきりしていたので、私としても大変助かりました」

 そりゃあテレビや写真で何度も見てるからね。実際行ったことはないけど。……行ってみたかったなあ。

「では続けて、モンスターの創造を致しましょう」

 感傷に浸っていたらコアにせっつかれた。おかしい、意思疎通に問題はないはずなのに。それにだ。

「それってコアの担当じゃないの?」

 そもそもが、ダンジョンコアがないとモンスターが湧かないというから回収に行ったのに。

「確かに私が生み出すことも可能ですが、せっかくなのでベースとなるモンスターはマスターにお願いしようかと」

 因みに一体生み出せば、あとはコアが勝手に量産してくれるらしい。尤もそれにも魔力がいるらしいけどね。

「ふうん。じゃあ……」

 再びコアを握りしめ、イメージを送る。

「マスターより心象入力を確認――固定――完了――出力開始――対象:国境ダンジョン第一階層――完了。モンスター創生、全行程を完了しました」

 コアがペかペか光り魔力が吸われる感覚がしてモンスターが生み出される。この辺の過程は改装も創生も同じだった。

 そして目の前に突如として現れるサソリと毒蛇の群れ。うん、砂漠っていったらこれだよね。大きさは十トントラックから小指の先までとバラエティーに富んでいる。コンセプトは大型に気を取られている内に小型がぐさり。奇襲上等仕様だ。

 あ、そうだ。奇襲といえば。

「コア、追加」

「はい。イメージをどうぞ」

 さっきの行程を繰り返し、今度はカメレオンを生み出す。こいつ等の役目はいうまでもない。迷彩からの不意打ちだ。

 目の前にずらりと並ぶモンスター達。威圧的、というかもう素直に怖い。

「……襲ってきたりしないよね?」

 思わずコアに確認してしまう。

「はい、勿論。彼等はマスターが生み出したものですから。創造主であるマスターには絶対服従です。――そんなことよりマスター、命令をどうぞ」

「命令?」

 そんなもの必要なの?

「はい、命令です。生み出されたモンスターは、なにも命じずとも侵入者を襲いますが、命令無しではただ単純に見かけた者に襲いかかるだけです。命令を与えることによって、より戦術に富んだ襲撃が可能となります」

 むう、そんなこと言われても。こいつ等に集団戦を教えろっていうのか? 鏃の陣形だの鶴翼の陣形だの、そういうやつ? わたしが知ってるのは名前だけだぞ。具体的なことなんてなにもわからない。

「…………」

「マスター。あまり難しく考えず、どのように侵入者を襲うのかという指示だけで平気ですので。でないと正面から突貫するようになってしまいます」

 おい。指示出さないと全員突貫とかどんだけ莫迦なんだよ。そんなのただの的じゃないか。この世界は魔王だけでなく、モンスターまでお莫迦らしい。まあトップがお莫迦だから仕方ないのか……。

「大きい子は正面から相対。小さい子達がその隙に背後や側面から奇襲。カメレオン達は常に迷彩纏ってチャンスがあったら即座に不意打ちするように」

 取り敢えず生み出したコンセプトに則ってざっと指示を出す。

「お前には正面から戦おうという気概はないのか……」

 そこに向けられる呆れたような呟き。

「お莫迦」

 犯人は筋肉だ。せっかく不意打ち出来る環境があるのに正面から戦うとかなに考えてるんだか。決闘がしたいのなら闘技場へ行け。これは殺し合いだ。ことあるごとに繰り返される「絶対に負けられない戦い(笑)」とは違うのだ。

 そんなわたしの思考を理解したのかしないのか、モンスター達は何も言わずに散っていった。まあしゃべれないだろうから返事をしないのも当たり前か。ともあれこれでひとまずは予定終了かな。今日はよく働いた。

 なんて考えていたら。

「ではマスター。最後に階層主の創生をお願いします」

 頼れるダンジョンコアくんが新たな仕事を持ってきてくれました。


 うぬぬ……不意打ちとは卑怯なっ!

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