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 魔王ズに勝負を挑まれた!


 →受ける

  受けない

  かかってこい魔王ズ!

  一昨日いらして下さい


 そんなの受けない一択に決まってるだろ!!

「やだ」

 だからわたしは即座に拒絶した。何が楽しくて魔王ズと勝負なんてしなくちゃいけないんだ。わたしはか弱い女の子だぞ!

「うむ では今すぐ外に――」

「何?」

「嫌だ、じゃと!?」

 綺麗に役割分担する魔王ズ。お前等どこの芸人だ。

「何故だね?」

「今ご飯中」

「じゃあ食い終わるまで待ってやるよ」

「終わったらお昼寝の時間」

「まだ朝になったばっかりだろうが!」

「じゃあおやつの時間」

「ではこの秘蔵の栗羊羹を進呈しよう」

「ごちそうさま」

 骸骨の取り出した羊羹をありがたく頂戴する。

 と、

「おい、待てや」

 その手を筋肉に掴まれた。

「放して」

 声に殺気を滲ませる。やらんぞ、この羊羹はわたしの物だ!

「いいぜ、その代わり俺等と勝「やだ」

「おい!」

 切れる筋肉。実にチンピラっぽい。ああ、めんどくさいなあ。

「ラグ、なんとかして」

 めんどくさいのでラグに丸投げした。

「ははっ。では師匠のお食事と食休みが終わったら、本丸と二の丸の間にある演習場にて対決、という運びでよろしいですかな。お主等もそれでよいな?」

「異存ない」

「いいぜ」

「了解じゃ」

 口々に了承する魔王達。ちょっと待て!

「ラグ、お莫迦」

「何故ですか師匠!? ……なあに、心配ご無用! 師匠が負けるはずございません!!」

「…………」

 そうだ。こいつはこういう奴だった。わたしはがっくりと項垂れ首を振った。

「じゃあわたしの負けでいい。参った。降参」

 これぞ賢者の秘技、戦術的撤退。試合に負けて勝負に勝て。

「……ラグ殿、お主本当にこの娘に負けたのか?」

「俺等を担いでるんじゃないだろうな」

「にわかには信じられん話じゃのう」

 わたしの態度を弱腰とみてか、魔王ズはラグに詰め寄り詰問する。よし、今のうちだ。

「お代わり」

「はい、藤花様」

 メイドさんにお代わりを頼み食事を再開する。

「あとこれ冷やしておやつに出して」

 お茶碗と引き替えにさっき骸骨にもらった羊羹を渡す。

「畏まりしました」

「師匠! こやつ等に師匠の実力を見せつけてやって下さい!」

 そんな遣り取りをしていたらラグに泣き付かれた。

「やだ」

 あんたが連れてきたんだから自分でなんとかしなさいよ。

「その通りだ、是非見せてくれたまえ」

「逃げんじゃねえ」

「往生際が悪いのう」

 追従する魔王ズも無視。面倒事、いや、絶対。わたしは忙しいのだ。ダンジョン改造とそれにまつわる諸々だけで手一杯だ。人間からダンジョンコアを取り戻す件についても考えないといけない。それでなくても人手不足だっていうのに、この上魔王ズの相手なんてやってられるか。

 と、ここでわたしの頭に何かがよぎった。えっと、なんだ……? ダンジョン…魔王…コア…増築…改造…人手不足……。何が引っかかったんだ?

 そうだ、あれはラグとの会話で――


「この国の特産てなに?」

「特産品、ですか? ふむ……森で狩れる獣の肉や季節の山菜、川魚などですかな」

「じゃあ今晩のご飯は魚の塩焼きでお願い」

「畏まりしました。厨房にそのように伝えましょう」

「楽しみ」


 違う、これじゃない。


「ダンジョンを作れるのはラグだけ?」

「その通りでございます」

「なんで?」

「それが魔王の固有魔法だからです」

「魔王以外には使えないの?」

「はい」


 そう、これだ。ダンジョンを作れるのは魔王だけ。何故ならそれが魔王の固有魔法だから。そう、魔王(、、)の。

 さて、ここで問題です。今わたしの前にいるのは誰でしょう? 正解は三人の魔王です。

 ……鴨がネギを背負ってやってきた。これはそういうことだろう。

「わかった、戦う」

 わたしは頷いた。

「おお」

「二言はなしだぜ」

「クカカカ。ようやっとその気になったようじゃの」

 沸き返る魔王ズ。

「そのかわり」

 即座に釘を刺す。

「わたしが勝ったら、わたしの手伝いをしてもらう」

 あんた達にもダンジョン造りをやってもらうよ。この国の為にも、わたしの安眠の為にも。

「手伝い? まあよかろう」

「いいぜ。万一お前が勝ったらな」

「それも一興じゃて」

 わたしは魔王ズを見回して再度確認する。

「約束、出来る?」

「誓おう」

「くどいぞ。いいと言った」

「その代わりお主も、しかと戦うのじゃぞ」

 頷く魔王ズ。それを見てわたしも頷いた。

「わかった」


 よし。労働力、ゲット。

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