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43.声音を聴いた、その時から……

 遥か高くまでそびえ立つ山の頂に立つ為には、その前にある小さな関門を乗り越えなければならない。上ばかり気にして足元を確認せずに進むのは危険すぎる。まずは山頂への道程で乗り越えるべき課題を一つひとつ明確にする事が先決だ。

 香奈の安全確保には、本人との合流が必要不可欠である。現状を整理しながら、そのために何をすべきかを考え行動を起こす。


 携帯はつながらない。コール音は続くが出る気配は全くない。留守電にもならない。この番号は通常プライベートで使用しているものだからだろう。仕事用であれば留守電機能位は使用するはず。

『菜々子、香奈の携帯って一つだけか?』

『え、っと、そうだ、仕事用があるって言ってた。確か電話帳に……あった、これだっ』

『よし、お前はそっちにかけてみて。あと香奈の職場の番号も分かればそっちも』

『わかったっ!』


 もしこれで連絡が取れない時はいよいよヤバい予感がしてくる。


『どうだ?』

『出ない』

『そっか、じゃ職場』

 ごめん番号わからない、と首を振りにがら答える菜々子。

『手詰まりか……いや、店の名前はどうだ?』

『それなら知ってる』

『じゃネットで』

『あ、そっか!』


 パソコンを立ち上げる時間も惜しいので、菜々子から店名を聞き、そのまま携帯で調べる。

『えっと、"しぃすたぁ"」だよ。綴りは"She Star"』

『"She Star"ね…………と、あったあった"エステティックサロン She Star"、番号は……』すぐにメモを取り、携帯電話に番号を入力する。

 程なく通話となり女性の声で応答があった。湧き起こる期待と不安が入り混じる感情。


(ありがとうございます、エステティックサロンShe Starです。大変申し訳ございませんが、本日の営業は終了致しました。またのご利用──)


 思いも寄らなかった機械音の応対。

『えっ? 今日休みかよ?』


 その後も数回、私用、仕事用携帯にかけるが不発。


『こうなったら、ともかく自宅向かおうよ』菜々子が携帯を耳に当てながら言う。


 いや、まだ出来ることはある。

 香奈へのアプローチ。それは、まだ決まった事ではないが、害を被るかもしれない者への安否確認。

 害を与えるかもしれない者、蒼井へのアプローチをしていないことに気がついた。

 ただ、残念なことに蒼井の連絡先を俺たちは知らなかった。ここは島谷に連絡を取り、蒼井の状況を確認してもらうのが早い。


 早速、島谷の番号を検索し始めた時──

『っ、こんな時に誰だ?』


──リビング内に来訪者からの呼び出し音が鳴り響く。

 次に響くは、菜々子が履くスリッパで軽快に床を叩く音。


『あっ!』


 その直後に響いたのは、エントランスの様子を映し出すモニターを見た菜々子があげた、喜びを含んだ声だった。


 何者の来訪なのか。俺はモニターを見ずともそれがわかっていた。


 その声音を聴いたその瞬間から。

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