第7話 絶望との遭遇 後編 〜魔力が頭おかしい〜
「おい×4。発動しないじゃん!俺に才能なんてなかったんだぁーー!!」
「さっきのはイメージしてた?してなかったよね。だから発動しなかったんだよ。」
そんな緊張感のない会話を、カマキリが放ってくる斬撃を避けつつーーーいや、逃げつつする
「イメージ?イメージすればいいのか?だったら……えーと、手から炎が出る感じで……」
一旦止まり、敵を見据え考える
手から炎、手から炎、手から……
「よし、イメージできた!!いくぞ!『オープン』!!」
すると、手からイメージよりも少し大きい火の玉が飛び出した
敵の足に当たりボオッッッ!と燃える
なかなかくらっているみたいだ
炎が消えると、その焦げた跡がはっきり残っていた
「よっしゃ!これを繰り返せば、倒せるか……も、おい、嘘だろ……」
俺は絶句した
敵の足にある焦げた跡
それが緑色の光に包まれた後、何事もなかったかのように回復した
敵はどうだど言わんばかりにこちらを見る
「高い戦闘能力に回復力、誰も勝てないはずだね」
「つまり、瀕死か一撃で倒さないと無理って訳か……。本当の絶望だな」
ティンクは、そういえば と、俺に話しかける
「さっき、リューが魔法使う時、やりずらそうだったね」
「うん?まぁ、確かに」
それが何か関係あるのだろうか
「別に言う言葉は何でもいいんだよ。イメージしやすい言葉で。その方が威力も多少上がるし」
なるほど、それが言いたかった訳か
イメージねぇ
敵は光の方がくらうのかな?
じゃあ、光の魔法を……
「えーっと、『ホーリー』」
そう魔法名を言った
炎よりくらえばいいなーという軽い気持ちだった
しかし、次の瞬間
光が爆ぜた
そうとしか表現できなかった
軽い気持ちで発動したが、予想以上の、いや、予想なんて出来ない程の威力だった
ここがどこかも分からなくなった様に思えた
世界がなくなったかと錯覚した
それ程までに巨大な魔法だった
数分経つと、光が消えた
ティンクも目をパチパチさせている
カマキリはいなくなっていた
代わりに武器やらアイテムやらが落ちていた
だが問題なのはそこではない
「お、おい。なんだあの威力。死んだかと思ったぞ」
「え、えっと。ここまでこの世界で凄いとは……。才能……じゃない、レベルが違いすぎる」
俺の力だとは思えないが、そうらしい
世界壊せるんじゃね
そう思う程だった
少しの沈黙が訪れる
それを破ったのはカマキリから取れたアイテムだった
急にアイテム等が光になって、俺に近づき、腰の横あたりを通った瞬間に消えた
「お、おお?アイテムが消えた……」
その疑問にティンクが答える
「あ、説明していなかったね。人には1人につき1つだけ、アイテム袋があるんだ。
これを空間袋やストレージとも言う人はいるけど、そこはご自由に。ただ気をつけて欲しいのが、無限に入る訳じゃないからね。透明で見にくいけど、腰の辺りで袋に手を入れる感じでやってごらん、手に入れたアイテムがあるはずだから」
へぇ、便利だな
そう思いつつ、腰あたりに手を伸ばす
袋に手を入れる感じで……
すると本当に入った
変な感じがした
「おお!本当に入った!……ちょっと気味が悪いな」
俺の手首から先が見えないのだ
気味が悪いどころではない
そんな事を言いながら、袋を探る
透明で分かりずらかったが、何とか1つ、細い棒のような物を掴んだ
「おっ、きた。これはなん……だ……」
出てきたのは、“いかにも”、最初に貰えそうな素朴な鉄の剣だった
さっき見たカマキリ野郎のアイテムの中にこんな物は無かった
ということは最初に貰える剣なわけであって……
俺はティンクを見る
ティンクは目を逸らす
「……おい、あるじゃん」
「……あったね」
ギルドに行かないと貰えないんじゃなかったの?
驚く程汗を流しているティンクに言う
「いや、もういいよ。これからこの剣使うという事で。それよりさ、進もう?」
「……うん、そうだね」
最強のドラゴンでも知らない事はあるのか
それが分かっただけでも今回は得だ
剣使ってないしね
そして俺たちは、カマキリの後ろに出てきた通路を歩いて行く
*
「な、ナンダコレェ!」
思わずカタコトになってしまった
そんな俺の目の前には、剣があった
説明するとーーー
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話しは少し戻る
俺たちはカマキリ野郎を倒した後、奥に出来た通路に進んだ
すると、なにやら光が出ている部屋が!
行かない訳がないだろう!
そこへ向かうと、やや狭い部屋
その中央に、剣が突き刺さっていた
それを見た俺はーーー
「な、ナンダコレェ!」
……という訳だった
よしっ、説明終わりっ
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「お、おい!ティンク!なんだこれ!ねぇねぇ!なにこれ!」
「お、落ち着きなって。これはボスとかを倒した時に貰える武器だよ。ボスによって種類は様々だけど……、これは見たことないね」
おお、ティンクでも見たことない剣
期待が高まるなぁ
「うーん、でも神話級ではないね、オーラが違うし。せいぜいデモン級じゃないかな」
「……そっすか」
あまり強くないらしい
いや!でもそれはティンクからみただけであって、駆け出しの俺にとっては充分強い武器のはず!
そう願いつつ、剣を抜く
まさか選ばれた者しか抜けないとか!と思ったが、その心配は杞憂に終わり、普通に抜けた
「おっ!抜けた抜けた!これが俺のけーーー重っ!!」
ずしりとくる感覚
とてもじゃないが、振れる気がしない
「お、おい!ティンク!これ、重い!!」
俺が慌てた様子で言うと、ティンクもなぜか慌てた様子になった
「何でもいいから、ステータスを見る魔法を使って!」
あるのか、ステータス
なぜそこだけリアルじゃないんだ
まぁ、あるだけましか
俺はステータスを見る魔法を考える
ええっと、閲覧、閲覧……チェック、チェック……
あれ?そんな魔法あったっけ?
ま、まぁいいや
とりあえず発動さえすれば
「ち『チェック』!!」
すると、空間に情報が出てくる
俺はもちろん、なぜかティンクのまで
発動出来た事にホッとする
しかし、
「多くね!?」
そう
なぜか場を埋め尽くす程の情報が
「ふ、普通はレベルとか体力とかがでて終わりだけど……、圧倒的に多いね」
多いなんてレベルじゃない
なぜ唇の厚さや体脂肪率まででるんだ
髪の成長速度とか俺でも知らんぞ
まぁ、そこは無視する
重い剣を持ったまま、ステータスを見る
右上にレベルがあった
5 と表示されている
「5 レベルか……。まぁいいや。で、ティンク。どうすんの?」
「えっとね、<振り分け> って書いてあるところがあるでしょ?」
レベルの横を見ると、確かにあった
振り分け?何を?
「そこを押してごらん」
言われた通りに押す
画面をタップした様な感じだ
ホログラムとかではないのか
これ盾として使えるんじゃない?
いつか試そう、そう思った
すると、空間画面に重ねるように、新たな画面が出てきた
そこには
体力 = 50
筋力 = 6
持久力 = 3
魔法干渉力 =999999999999
魔法影響力 =999999999999
耐性 = 999999999999
この6つがあった
多分、上からHP、攻撃、防御、特殊攻撃、特殊防御、状態異常耐性、といったところか
魔法のところが頭おかしい
何?童貞は魔法使いです?ぶっ飛ばすぞ
そこは置いといて
一体何があるんだ?
「うわぁ……。魔法が……凄いね。……あれ?魔力量が無い?うーん……あっ、そうだった。ええと、その筋力を押せるだけ押してみて」
うん?
意味が分からなかったが、押してみる
一回しか押せなかったが、持っていた剣が、急に軽くなる
「わっ、えっ、何?軽っ!!振り回せるぞ!!」
ステータスを見ると
筋力 = 50
と、なっていた
筋力 6 から 50 とは、凄い上がったな
これはいわゆるポイント振り分けか
なるほど、と納得する
「ほら、これで大丈夫でしょ。……にしても魔法系がこの数値って、確かにあの光の威力もこんな大量のステータスが出るのも納得するけどさぁ」
こんなの、ちーと だよ
ティンクがそう言う
まぁ、これは酷いな
魔王一撃レベルだぞ
「それはそうと、まだ探索する?」
ティンクの言葉に、俺は顔を横に振る
「いや、今日はいいや。疲れたし。また明日にでも来るよ」
その俺の言葉にティンクは苦虫を噛み潰したような顔をした
「来れたらいいけどね……」
「……だな」
ここに来るまでどれほど大変だったか
またあれを繰り返すとなると胃が痛い
そう感じつつ、剣を透明袋に入れ、階段を探す