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転移勇者の苦労譚  作者: 下の力
1章 ギルドの看板娘
3/13

第3話 ギルドって重要だなぁ

「ん?なんか厨二的センスだな、あと長いし。まぁそこらはいいとして、ドラゴン……?ああそうか、この世界ではこれをドラゴンと呼ぶのか、こっちと全然違うんだなぁ」


俺がそう反応するとドラゴン(笑)は首をブンブン振って反論する


「違う違う。君達の世界でおなじみのあのドラゴンだよ!」


あのドラゴン?

翼が生えて炎を吐くあの?

俺はそいつをじっくり見る

ーーーうん


「HAHAHA、ソレハスゴイデスナァ」


「信じる気ゼロ!?」


落ち込まれた


……いやいや、これがドラゴンとか

どう見てもネズミだろ


と、俺の表情から読み取ったのか反論してくる


「いやいや!嘘じゃないから!本当だから!君を呼び出すのにほとんどのエネルギー使っちゃっただけだから!」


涙目で訴えられた


いや

仮に本当だとしても、ほとんどのエネルギー使うのはどうかと思うぞ


「あー、まぁ分かったよ。そういう事にしといてやるよ。それで、名前は?」


「本当なんだけど…。もういいや、勝手にしてよ。……で、名前だって?」


面倒なので適当に流し、名前を聞く

ドラゴンなのかネズミ分からないので名前を聞いていた方が呼びやすい

ドラゴンは気を取り直しまたもやウオッホンと言った


その校長みたいな仕草なんなの


「天に舞いし白龍の

黄金がーーー」


「あ、そういう前置きいいんで」


「……そっすか」


言葉使いが変になった

前置きカットするだけでこうなるのか

さっきもカットしとけばよかった

そんな事はさておき、ドラゴン?は反論もせず、名前を言う


「僕はゼルード・ライ・ティンクス。かっこいいでしょ」


フフン、と誇らしげに言う


その名前にドラゴン要素はどこにあるんだ

かっこいいのは認めるが


「まぁかっこいいな」


でしょ!とドラゴンは反応する


名前を褒められると喜ぶのか

にしてもなぁ

長いんだよ

名前

ここは俺のセンスが光るところだ

さっきの名前を短くして

あとちょっと嫌がらせ要素も含んで

ええと……


「……略して“ゼ”でいい?」


「良い訳ないでしょ!略し過ぎ!!せめて“ゼル”とかにしてよ!」


おお

反応が速い

待っていたぐらいの速さだ

それはさておき

こいつに、この愛玩動物に“ゼル”はなぁ

似合わないなぁ

うーん……


「じゃあ“ティンク”で」


すると愛玩動物は嫌そうな表情をした


え、嫌だったか

さっきのは冗談だが、今回のは結構考えたんだけど


「えぇ〜。僕には可愛らしすぎる名前じゃない?」


あ、そこか

ドラゴンとしてのプライドみたいなものか

だがその容姿はドラゴンではないから諦めろ


「だからだろ。鏡見てみろ」


俺がそう言うと、しょうがないなぁ、と引き下がってくれた


かくして、こいつの名前はティンクとなった

さて


「で、俺はこれからどうすればいい?魔王を倒すのか?はたまた捕らわれた姫を助けに行くのか?」


そうだ

忘れていたが、俺は何をしにここまで連れてこられたのだろうか

まぁテンプレとしては魔王が現れたとか

しかし、答えはとんでもないものだった


「え?ううん。別に何も。一応ダンジョンはあるけど、行かなくてもいいよ。しいて言うなら僕の話し相手になってよ」


「……は?」


どういう事だ?

何もしなくていい?


…………。


「えーと?つまり、俺が呼ばれた理由は何も無いと?」


「理由ならあるよー」


あるのか

ややこしいなこいつは

ティンクは胸を反らしていう


「僕の遊び相手という立派な理由がね!」


ブチッ


俺の中で何かが切れた音がした

無言でティンクに寄る


「うん?ど、どうしたんだい。そんなに怖い顔しーーーひひゃい!はんへふへふほ!」


「うるさい!これは俺の怒りだ!!」


びよーんとティンクの頬をひっぱる

なかなか伸びるな

あとフワフワだ



「俺は明日東京に行く予定だったのに!!どうしてくれるんだぁーー!!」


「ひひゃい!ひひゃい!ほひはへふははひへ!!」


ティンクは顔を振って無理矢理抜け出し、俺と少し距離をとって話す

目にはうっすら涙が浮かんでいた


路地とはいえ、こんなに騒いでいるのに誰も来ない

異世界ってすごいなぁ……!


「し、知らないよ。僕はやっと儀式が完成して君を呼んだんだ。一年かかったんだよ」


なに?

俺を呼ぶためだけに一年もかけた……

ひょっとするとドラゴンってのはバカじゃないのか?

呼ぶならもう少しゴツくて強そうな奴を呼べ


そんな俺の気も知らず、ティンクは話す


「最強のドラゴンってのも退屈でね、毎日他の世界を見るぐらいしかやる事がないんだよ。

だから他のドラゴンに座を譲って僕は自由になったんだ。

どう?君はこの最強のドラゴンに選ばれたんだ、自慢していいよん」


友達に言ったらどう?とティンク

いや、あなたの所為で友達とも離れたんですけどね

あとあまり友達いないし

嫌味か


「でもこの世界は君のような人が好きな世界だと思うよ?

ほら、女戦士やら獣耳っ子やらが沢山いるからね」


女戦士…、獣耳っ子……

いるのか、この世界に

さすがファンタジー

そこに痺れる憧れる


「おお……!確かにそう言われると、悪くない気がする!

ティンク、ダンジョンはどこだ!さっきあると言ってたよな!」


俺がそう言うと、ティンクは複雑そうな顔をした


「うん、まぁあるよ。でも、いきなり元気になったとこ悪いけど、ギルドで武器とか貰わないといけないしギルドで登録しないとダンジョン入れないしギルドに行かないと何も始まらないよ」


おーまいがっ……


思わず口からそう漏れた

まずギルドに行かないといけないのか…

まぁそんな簡単じゃないよね……


「……ギルドどこ?」


「あっち」


と言って右の方を指差す


こうして

俺の冒険はやっと始まりそうだった

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