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冬の童話祭

作者: 23人委員会
掲載日:2016/12/01

世界には四季があります。


春の女王サマ、夏の女王サマ、秋の女王サマ、冬の女王サマ。


四人の女王サマが、それぞれの季節を作り出すのです。


秋には秋の女王サマが、冬には冬の女王サマが、正しい期間だけ、各々の季節を維持するのです。


世界には、雲にも届く高い塔があります。

その塔は不思議な塔で、昔々に王様が建てたといわれる『季節の塔』と呼ばれるものです。


『季節の塔』の中に、春の女王サマがオコモりになられると、塔の外に広がる世界は春になります。


夏の女王がオコモりになられると、塔の外に広がる世界は夏になります。


世界は、そうした、四人の女王サマと『季節の塔』の働きにより、四季を巡らせます。


王様も、世界の人々も、そうして彩られる四季が大好きでした。


毎日、楽しく暮らしていました。

四人の女王サマは、四つの季節を正しく運び続けました。


長く、長く、皆んなが知るより遥かに長く。


四季は正しく巡り続けました。

あるとき、までは。


あるとき、です。

それは冬のことです。


もう春が来てもいい頃なのに、世界にはまだ雪が降り続けるのです。


人々は困りました。


ーー寒い!、雪かきが大変だ!、野菜が育たない!、果物が育たない!、ウエ死んでしまう!


ーーどうして『季節の塔』から冬の女王サマが出て来られないのですか!このままでは、冬が終わらない!


人々からの苦情に、王様は頭を抱えました。

女王サマが塔から出て来なくては、季節は変わらないのです。


困った王様は、皆に助けを求めることにしました。


【冬の女王サマを『季節の塔』から連れ出し、この長い冬を終わらせてみせよ。


冬が終わり、春が訪れ、次の年にもまた冬がやってくるよう、何とかすること。


私の願いを叶えた者には、私が何でも願いを叶えてやろう】


世界のあちこちに置かれた、王様からの看板が置かれました。


長い、長い、冬のある日。

雪に埋まったその看板を見た、ある女は、"何でも願いを叶える"という言葉に魅せられ、『季節の塔』へと向かいました。




ーーはたして、塔の中にこもり続ける冬の女王サマを、どうにかすることが出来るのでしょうか…?







「ワラワには冬が体験出来ない」


褒美を求め、塔を訪ねた女に、冬の女王は言いました。

だから、今回の冬が終わるまでに、塔の中ではない"冬"が知りたい、と。


女は困惑しました。

それは、どうしようもないことだ、と。


なぜなから、塔の中に冬の女王がこもっている間だけが、"冬"なのですから。


冬の女王サマが塔の中にいる間。

冬の間、塔の内側にだけは、冬が訪れることはないのです。


「それは無理なことです、冬の女王サマ」


女は言いました。


「イヤじゃ、イヤじゃ、イヤじゃ」


しかし、冬の女王サマは、駄々をこねます。

首振り、首振り、イヤイヤイヤ。


「では、春の女王サマに冬の話をしてもらいましょう」


女は言いました。

お喋り好きの春の女王サマは、お喋りが出来るとあって、スグに塔へとやって来ました。


「冬っちゅーのはな、凄い寒いんや」


春の女王サマが語りました。


「塔の中は、冬でも暖かいやろ。でも、冬っちゅーのはホンマはとんでもなく寒いんや」


「……お前は嘘つきのようだな」


春の女王サマの言葉に、冬の女王サマはお怒りしました。


「ワラワは知っておるぞ。冬という季節は、子供が外に出て、雪で遊ぶような暖かい季節だとな!」


冬の女王サマは声を荒げ、こう続けました。


「窓から見える、冬はとても楽しく暖かそうではないか!」


なんと、驚きです。

冬の女王サマとあろう方が、"冬"を誤解しているのですから。


女は考えました。

冬の女王サマの望みを叶えることは不可能です。


だけども、それでは王様から褒美を頂くことは出来ません。


女は深く考えました。

そして、ヒラメきました。


「冬の女王サマ、塔の外に出てください。外に冬があります」


女の言葉に従った冬の女王サマは、"暑い"と感じました。


「この暑さが、冬です。冬の女王サマ」


女は言いました。

冬の女王サマは感心しました。


確かに、これは"冬"である、と。


「なるほど、これが冬であるか」


冬の女王サマは言いました。


「まるで、ワラワの知る夏のようであるな。雪で遊ぶ子供の姿も見当たらぬ」


冬の女王サマは、悲しそうな顔になりました。


「これならば、冬という季節は必要ないな……」


冬の女王サマは、もう塔にはこもらないと言い出しました。

それでは、女は困ります。


王様から褒美を頂く為には、冬の女王サマがまた塔にこもることが、必ず必要なのですから。


女は、必死に考えました。

冬がないと、皆んなが困ります。

女は、冬の女王サマを連れて雪だるまに会いに行きました。


「冬がないと僕らは大きくなることが出来ません」


暑さで小さくなった雪だるまは、冬の女王サマに涙を流し訴えました。


「冬がないと僕らは消えてしまうのです」


雪だるまは、ワンワンと泣きました。

冬の女王サマに、次の冬のお願いをして、ついには溶けて消えてしまいました。


「……雪だるまが消えてしまうのは可哀相だな」


冬の女王サマは言いました。


「ワラワはまた、秋の次に塔にこもることにしよう」


溶けた雪だるまを見つめ、冬の女王サマは、物思いにふけた様子で言いました。


"冬"であるはずの今、雪だるまが溶けることはオカシイと、女はドキドキしましたが、冬の女王サマは女にお礼を言いました。


「ワラワに冬を体験させてくれてありがとう。また、秋の次に塔にこもる日まで、ワラワは何処かへ行っておる」


冬の女王サマは、そう言うと、何処かへ行ってしまいました。


長い長い"冬"は、これでお終いです。

ここから先は、春の出番です。


女は、王様の元へ褒美を貰いに行きました。


王様が問いかけます。


「お前は何を望むのか?」


女は答えます。


「春、夏、秋、冬。そのドレでもない、女王の必要のない、誰もが楽しめる新しい季節を」


こうして、女は褒美を手に入れました。

女は、秋の女王サマは、喜びました。


とてもとても、喜びました。


一年に十日だけ、春の穏やかさと夏のヒデルような暑さ。

それに、秋の心地良さと冬の寒さがサイコロの目のように、気まぐれに訪れる不思議な季節が出来ました。


その季節だけは、『季節の塔』の内側に、どの女王サマも必要ありませんでした…とさ。



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