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読み切りモノ

お弁当を作るモチベーション

作者: 冥月 霜華

 結婚したと風のうわさで聞いた友人からメールが来た。

 仲が良かったわけではないし、悪かったわけでもない。

 お互いに共通点である「学校」から卒業してしまえば、余程のことがない限り関係性なんて保たれない。

 だから、メールが来た時に、嫌な予感を覚えても仕方がないと思う。

 いや、実際にちょっと話したことがあって、たまたま連絡が取れたというだけで、借金の保証人になって欲しいだの、お金を貸して欲しいだの、彼氏が小説家を目指しているから、あなたが書いた小説、元は私のものだったことにして欲しいだの……そんな連絡が立て続けに来ていたのだから、やさぐれても仕方がないと思いたい。

(ちなみに、全てお断りした所、誰からもメールも電話もこなくなった)


 さて、話を友人のメールに戻そう。

 内容はこうだ。


 久しぶり。元気? 結婚したんだけど、旦那の弁当作るの飽きたから、何かいい方法無い?


 もっと他にも色々と書かれていたのだが、要約するとこうだ。

 そんなこと、もっと仲の良い人に聞けばいいだろうと思いつつ、急にどうしたのかと聞けば、周囲も結婚し、子持ちになった友人もいるが、自分と同じような環境ではなく、たまたま誰かと話している時に私の存在を思い出した。というのが事の発端らしい。

(確かに、状況的にこのメールの主と私の生活環境は似ているようだが、だからどうした? と言いたくなるのは駄目だろうか?)


 ちなみに、何故飽きたのか聞いてみたが、答えはなんとも簡単だった。


 旦那の反応が無い


 これに尽きる。

 確かに、「美味しかった」とか「また食べたい」とかなんとか一言あれば、作り手のモチベーションは上がる気がする。

 小説を書いていて「面白かった」とか「続きがきになる」とかそんな一言を貰って、嬉しくなるのと同じように。(勿論、個人差はあるだろうが)

 その後も食事や普段の生活の不満を吐き出す友人に、相槌を打つのも辛くなり(書き手である私は、長々と話すのも話されるのも苦手だ)自分がどうしているのかを伝えてみた。

 これも、至極簡単なことなのだが――


 お弁当箱が空っぽならいい。


 そう思うことにしている。

 疲れている時や帰宅時間が遅い時などは腹が立つが、できれば、おかずカップやふりかけの空き袋が入りっぱなしの状態で。

 気に入らなくて捨てたわけではないと分かるそれが、なんとなく安心するのだ。

 後は、なんとなくおかずに困ったときに相手に聞いて見る。

 簡単に答えられるように二択で。

 料理名か味と材料を伝えれば、なんとなくでも伝わるのだから、一緒に住む者の、家族の強みとして聞いてしまえばいい。

 そうすれば、なんとなく形になり、言葉を交わさなくてもなんとなく分かるようになる。(気がする)

 友人にそんなメールを送って、社交辞令とも言える「今度お茶をしようね」なんて約束をかわして、今日の私の「なんとなくいい人」は終わった。


 まぁ、正直「腹に溜まればいい」というスタンスでお弁当を持っていく男の人は多い気がして。

 小説だって読んでくれる人はいても、感想もブックマークもポイントも変わりがないことは多いから。


 プラスの方への思い込みは大切だ


 なんて、強がって包丁とパソコンを相棒に、今日も明日も……これからもずっと、飽きるか、続けられなくなる日まで、その辺をぶらぶらと歩きまわっているのだろう。

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― 新着の感想 ―
[一言]  ご飯を作っても『美味しい』とか言われないことがしょっちゅうですので、ポジティブな考え方、とてもすてきだと思いました。  小説も、ポイントがなくても、アクセスがあれば嬉しいですものね。前向き…
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