塵
心地よい風が吹く。
前を歩く男の栗毛がかすかに揺れる。
海の香りが鼻を霞める。
私は赤く火照った顔にそっと触れ、見える景色にうっとりする。
抜けるような青い空。
濁りのない白い雲。
キラキラと光を反射する海。
ひび割れたアスファルト、細い歩道。
堤防を歩く君、私。
世界のすべてが暴力的と言っていいほど美しい。
落ちたら骨折する、そんな高さを
君と私は腕を広げてよたよたと歩く。
スカートが揺れる。
前を歩く彼のワイシャツが風を受けて膨らむ。
頭がくらくらするほど、私の脳内は彼に侵されていた。
彼の栗毛がかすかに揺れる。
私の心臓は大きく音を立てる。
「ねえっ」
海の音にも負けないような大きな声で彼を呼ぶ。
「んー?」
彼の声が耳をくすぐる。
「大人になっても忘れないよね?」
「ああ。忘れない。」
強い風が吹く。
「明日も晴れるかなーっ?」
「雨だってお前と一緒にいてやるよーっ!」
叫ぶ、二人。
輝く太陽の下、世界には二人だけ。
「きみのことだいすきなんだよぉーっ!!」
「おれもーっ!!!」
振り向く彼。
逆光で良く見えないけど、笑っていた。
「きゃっ」
汗ばんだ腕に包まれる、私。
砂浜に飛び込む、二人。
強い衝撃、笑い声。
笑い声は二つになって、痛みも「好き」にかき消されて。
私の思いは砂になって塵になって
制服姿の二人を包み込んで
彼の目に私の目に、青い春を見せた。