プロローグ (初投稿です)
ひどく、綺麗な少女だ。
肩にかかる程度に整えられた髪は、夜を思わせる黒。
少し高い背丈は、彼女の美しさを際立たせる。
可憐な顔は、どこか憂いを帯びた表情で、このまま彫刻にでもなりそうなほど神秘的だ。
しかし、その瞳…まるでこの世のどん底に突き落とされ、生きる意味を見失ったようなその瞳が、俺を真っ直ぐ見つめる。
息がかかる程の至近距離で、彼女の唇は言葉を紡いだ。
「母を、生き返らせて」
---俺の首筋に、ナイフを突きつけて。
俺は即座にこう答えた。
「断る」
断固とした拒絶。しかし無理だとは言わない。そこには、少女の要求を呑むこともできるという意味を含ませている。
少女もそれを感じたのか、綺麗な顔を不快そうに歪ませて、
「貴方の意思は関係ないの。母を、生き返らせなさい。」
言いながら、ナイフをより一層首筋に近づける。
よく見れば、彼女の瞳にはもう一つ、縋るような視線が混じっている。もうここしか頼れないとでも言うかのように、ナイフを突きつけて命令しながら、俺に縋っている。
だが俺も、彼女の期待には応えられない。この信念を曲げるぐらいなら、死んだ方がマシだ
「何度も言わせるな。断ると言っている。それに、その手の脅しは俺には通用しない」
「脅し?私は本気で…」
「いや、そういう意味じゃない」
言って、俺は彼女の…ナイフを持っている手を掴む。
「…っ!!離せっ!!!」
少女は抵抗しようたが、俺の力の方が強い。
そして彼女に、最後の言葉を紡ぐ。
「お前に俺は、殺せない」
その直後…
俺は、自分を刺した。