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第1章:高度2,000メートルの境界線

挿絵(By みてみん)

その塔は、もはや「建築物」という概念を通り越していた。


人類が汚染された地表を捨て、雲の海よりも上に生活圏を移してから1世紀。**「アイテリス・タワー」**は、生存という名の希望を垂直に積み上げた、この世界で唯一の聖域だ。


夕刻。

燃えるようなオレンジと、深い紫が混ざり合う空。雲海は穏やかな波のように塔の裾野を打ち、地上で何が起きているのかを完璧に隠蔽している。


「…今日もまた、上がってきたか」


第8居住区、通称「リング・ネブラ」の展望デッキで、カイルは手すりに身を乗り出した。彼の視線の先には、塔の心臓部であるメイン・シャフトが、青く冷たい光を放ちながら天を貫いている。


このタワーには明確なルールがある。

「高度は価値である」。


下層階の住人は、一生を湿った雲の中で過ごし、上層階の「天人セレリアル」たちは、沈まぬ太陽の恩恵を享受する。カイルのような保守点検員は、その中間、最も風が強く、最も孤独な場所で、塔が崩れないように繋ぎ止める「楔」だった。


その時、カイルの端末が鋭いアラートを鳴らした。


[警告] 第11展望層「クラウン」にて未確認のバイオシグナルを検知。


クラウン。そこは、タワーの最上部に位置する、選ばれた者しか立ち入ることができない「神の庭」だ。そこから信号が出るはずがない。なぜなら、現在のクラウンは無人のはずだからだ。


「…仕事の時間か、それとも運の尽きか」


カイルは腰のフックを確認し、光り輝く青いシャフトへと飛び出した。

夕闇が迫る中、アイテリス・タワーは静かに、しかし確実に、変革の鼓動を刻み始めていた。

全14話

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