↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六影相剋――記憶喪失の剣士は、六大勢力の争いの中で世界の歪みと向き合う  作者: いぬぬっこ
第一章 影走

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/20

第四話 壊されずに壊れるもの 前半

宿の戸をくぐると、昼のざわめきが一気に背後へ落ちた。


木の床は古く、踏み込むたびに低く鳴る。

壁に染みついた油と煙草の匂い。乾ききらない木の湿り。

人が何度も泊まり、出ていった痕跡が、空気に薄く積もっている。


白黎(はくれい)は息を入れる。

吸い込むというより、確かめるみたいに。


肩の力が抜けていくのを感じた。意識して抜いたのではない。

街道で張り詰めていた感覚が、低い天井に押し返されるようにして、遅れて身体へ戻ってくる。


——戻ってきてしまう。

ここが、閉じているから。


「……静かですね」


思ったより自然に声が出た。自分でも、少し驚く。


燕秋(えんしゅう)は帳場(ちょうば)で鍵を受け取りながら、肩越しに返す。


「静かだね」


鍵の金具が触れ合う音が鳴る。


「だから、夜は余計なものが浮く」


「……悪いことですか」


「今は、あんまり良くない」


冗談めかした調子なのに、言い切りだった。

燕秋は鍵を懐へ入れ、白黎を一度だけ見る。


「湯、先に入っていい。覗かないし、鍵も掛かる。私は湯場(ゆば)の戸の外で待ってるから」


燕秋は言葉を切って、視線だけを戻した。


「……今夜はさ。言葉が詰まるなら、身体を落ち着かせてからにしよう」


白黎は頷いた。頷きが、ほんの少し遅れる。

燕秋は見ないふりをした。


その『遅れ』に合わせて、燕秋の呼吸もわずかに落ちる。

呼吸が揃うだけで、白黎はここに居ていいと思える。


⸻


湯場は裏手にあった。石を積んだ小さな湯殿(ゆどの)で、天井は低い。

湯気が溜まり、声が丸くなる。


白黎は衣を脱ぎ、木桶を手に取る。

肌に当たる空気が冷たい。だが、寒さはない。

感覚だけが遅れて、後から追いついてくる。


桶で湯をすくい、肩からかけた。


「……っ」


熱が刺さって、息が一拍止まる。遅れて吐けた。


「大丈夫?」


戸の外から、燕秋の声。


白黎はもう一度だけ湯を落とし、今度は薄く息を通した。


「……はい」


「無理はしないで。今の白黎は、熱が刺さりやすい」


白黎は湯面を見た。小さな波が、すぐには戻らない。


「……どうして分かるんですか」


燕秋はすぐに答えない。

戸の向こうで、衣が擦れる音がひとつした。


「体の揺れ方。……それと、昼間の動き」


湯気が天井に溜まり、声が丸くなる。


「痛みを飲み込む癖がある」


「癖」


「自分じゃ気づかないだろ」


淡々とした声だった。


「自然と耐える。だから、限界が来るのが遅い」

「遅い分、来たら急だ」


白黎は桶を置き、湯船に沈む。

水音が小さく鳴り、世界が遠のく。

熱が肌を押し、骨の際に溜まる。


燕秋の声が、外から続いた。


「湯加減は」


「……丁度いいです」


「ならいい。熱いのが平気なのと、丁度いいのは別だ」


白黎は湯の中で指を動かし、言葉を探した。

昼の橋の下、子どもが落とした名が、まだ耳に残っている。


「あの……質問があるんですけど」


戸の向こうで、燕秋の息がひとつ置かれる。

聞く側の呼吸になった。


「いいよ」


白黎は喉の奥を探り、短く言う。


「……狗皮幇《くひほう》、とは」


戸の向こうで、燕秋が一度だけ息を吐く。


「狗皮幇か」


燕秋の声の温度が下がる。


「橋の下とか、市の外れとか。人の流れの端で生きてる連中だ」

「盗みと脅し。――あと、子どもを使う」


湯の底で、白黎の指が止まる。

熱いのに胸の底だけが冷える。


「……あの子も?」


「末端だろ。命令された手だ」


燕秋の声が、少しだけ硬くなる。


「幇ってのはね、名前が先にあって、人は後から入る」

「入ったやつは、自分の腹より幇の腹を優先させられる」


白黎は湯面を見た。波紋が立って、すぐに消える。


「……侠客(きょうかく)、ではない」


燕秋が、戸の外で短く息を吐く。笑いではない。


「侠客の話は、きれいすぎる」


白黎の胸の底が、湯の熱と別に冷えた。


白黎の口から、思ったよりまっすぐに言葉が出る。


「……僕は、侠客ですか」


戸の外が静かになる。

燕秋はすぐ答えず、足音を一歩だけずらした。


「白黎。……そうなりたいか」


白黎は湯面を見た。

波紋が立って、すぐに消える。答えも、同じように消える。


「……わからないです」


「そうか」


燕秋は、それ以上押さない。


「世の中には、置き場所がいくつかある」


湯場の梁が、ぱち、と鳴った。

湿った木の匂いが強くなる。


「正しさを量って立つ門派(もんぱ)」

「剣で決めて押し切る門派」

「言葉で救って手放さない門派」


白黎は頷けないまま、息だけ吐く。


「道を読んで、先に段取りを作る門派」

「縛られない代わりに、誰も抱えない門派」

「奪われたやつらが、奪い返す門派」


燕秋は淡々と並べた。

評価もしない。ただ違いとして置く。


「どこにも筋はある。……壊し方も、それぞれだ」


白黎の胸の奥がきしむ。

どこにも当てはまらない気がして、逆に息が詰まる。


燕秋が、そこで言い切った。


「白黎は、どこにもふさわしくない」


湯の中なのに、白黎の指先だけが冷えた。


「……」


「でも、そこがいい」


声は低いが、拒む音ではない。


「最初から型に入ると、型の壊れ方まで一緒にもらう」

「今の白黎は、まだ決めないほうがいい」


湯の熱が背中を押す。

胸の底の冷えが、少しだけ動く。


燕秋は話を切った。旅の人の切り方で。


「――長湯すると良くない」


戸の外で、燕秋が最後に言った。


「出たら声かけろ。……転ぶなよ」


「……転びません」


「その返し、危なっかしい」


笑いになる手前で止まる息。


「いいから上がれ」


白黎は湯の縁に手をつき、立ち上がる。

湯が肩から落ち、背骨を伝って床へ細く散った。熱が抜けるのが遅れて、皮膚だけが先に冷える。


戸を開けると、廊下の空気が乾いている。


廊下の先で、燕秋の気配がふっと灯りの方へ引いた。白黎が後を追うと、少し先を歩いている背が見えた。


濡れた髪の先から水が一滴落ち、板に小さな音を残した。足裏が重い。重さだけが、少し遅れて追いついてくる。


燕秋は目を合わせず、白黎の歩幅だけを見て言った。


「部屋に戻ろう。……慌てなくていい」


白黎は短く頷き、湿った匂いを引きずらないように息を整えた。


⸻


部屋に戻ると、卓の上に盆が置かれていた。

布をかけた小鍋。炒飯(ちゃーはん)の皿が二つ。もう一皿に干し肉。

湯気が細く立ちのぼり、灯りの色を曇らせる。


燕秋は先に腰を下ろしている。

昼より少し鋭い目で、白黎の顔ではなく、肩の落ち方を見ていた。


「どうだった」


「……熱かったです」


「それならいい」


燕秋は布をはらい、小鍋の蓋をずらす。

白い湯気と一緒に、山菜(さんさい)の青い匂いがふわりと膨らむ。汁の匂いだ。

胡麻と、細く裂いた鶏肉が少しだけ浮いている。

江湖の宿で出てもおかしくない、腹に落ちるだけの飯。


脇の皿には炒飯。油を吸った米が、鍋肌の焦げをところどころ残している。

卵の黄色と葱の青がまばらに散り、湯気が低く揺れていた。

もう一皿には干し肉が積まれている。塩と煙の匂いが強い。


「湯で終わらせるなよ。――次は飯だ」


燕秋が椀へよそい、白黎の前へ滑らせた。

音を立てない置き方だった。


「……食べられますか」


「噛めるなら大丈夫。噛めなきゃ、飲め」


白黎は匙を取る。

山菜鍋の熱が舌に触れた瞬間、息が一拍止まる。だが吐けた。

苦味が先に立ち、遅れて汁の塩気が追いかける。

熱が喉を通り、胸の内側へ落ちる。――落ちるまでの道筋が、少しだけ戻る。


燕秋はそれを見て、短く息を吐いた。


「今の白黎は、身体が先に壊れる前に、心が先に削れる」


白黎の匙が止まる。


「……削れる」


「うん。昼の橋の下でも、そうだった」


燕秋は山菜鍋をすすりながら、声だけ落とす。


「力が動くとき、白黎の中身が薄くなる」


その言い方だけが、やけに正確だった。


「削れた分だけ、外は静かになる。痛みも怖さも遠くなる。――動ける」


燕秋は椀を傾けたまま、少しだけ間を置いた。


「でも、削れたものは戻らない。戻らないまま歩くから、反動が来る」


白黎は喉を動かす。

鍋の熱があるのに、胸の底だけが冷えたままだ。


「反動は?」


「浅くなる。息が。

言葉が刺さる。音が重い。匂いが強すぎる。――そして、急に何も感じなくなる」


燕秋は匙を置かずに続けた。


「何も感じないのが楽だと思うと、次はもっと削る。

削り方を覚える。……それが一番まずい」


一拍。


「白黎。今日は良かった。喉まで来た言葉を止められた――止まれた」


白黎は椀を両手で包む。熱で指先が生き返るみたいに痺れる。


「……止めたんじゃないです。止まっただけです」


「それでいい。最初は止まったで十分」


燕秋は箸で炒飯を少し取り、白黎の椀の脇へ置いた。油の匂いが近づく。


「油を入れろ。削れたあと、身体は薄い味を嫌う」


白黎は言われた通り口に運ぶ。

米がほぐれ、油が舌に広がる。焦げた一粒が歯に当たり、現実が硬く戻る。

――今ここにいる、という輪郭。


燕秋は、干し肉を一枚つまみ、白黎の前へ落とした。

塩と煙の匂いが強い。噛めば、味が逃げない。


「塩も。薄いままだと、反動が抜け道を探す」


白黎は干し肉を噛む。

硬さが顎に残り、塩気が喉を締める。締められて、息が通る。


燕秋は、ふと目を伏せた。

灯の縁が、その瞳の奥を一瞬だけ暗くする。


「……祠(ほこら)で白黎を呼んだとき、胸が冷えただろ」


白黎の指が、椀の縁で止まる。


「……はい」


燕秋は軽く笑わない。笑えないところに触れている声だった。


「呼べば、ほどける。でも、ほどけるぶんだけ薄くなる。

あれは名そのものが力なんじゃない。名に反応する器(うつわ)の形が、先にある」


白黎は息を探す。

言葉が喉に当たり、形になる前に崩れる。


燕秋は、そこで別の話にすり替えず、真っ直ぐ置いた。


「赤霄原(せきしょうげん)の外で、最近ね。酒楼(しゅろう)に語り部が呼ばれてる」


白黎は顔を上げる。


燕秋は山菜鍋をすすりながら、淡々と続けた。


「衡崩の夜(こうほうのよる)を、輪の外から見てた記録者の家系の話だって」


その言い回しだけが、湯気を割って残った。

燕秋の声が、少しだけ低くなる。


「……『器にされた子は、名を呼ばれなかった』

――そういう言い回しがあるらしい」


白黎の喉が鳴る。

鍋の熱があるのに、胸の奥が冷える。


「白黎。覚えてないか」


「……分かりません」


「分かってる。分からないって顔だ」


燕秋は匙を置いた。置いて、白黎の椀を指で軽く叩く。


「だから、飯を食え。

削れたところに、先に熱を入れてから拾う。順を間違えると、反動が暴れる」


白黎は一口、もう一口と山菜鍋を飲み下す。

飲み下すたび、喉の奥で止まっていたものが、少しだけ奥へ押し戻される。


燕秋はその様子を見て、ようやく息を吐いた。


「……橋の下で。護符(ごふ)の墨を見たとき、何か動いたろ」


白黎は、匙を握ったまま頷けない。

動いた。だが思い出したではない。

ただ、確信だけが沈んだ。


「……言葉が、喉で止まります」


燕秋は笑わない。


「止まるなら、止まらせておけ」


一拍。


「無理に引きずり出すと、違う形で出る。

――手が先に出る。血みたいに」


白黎は椀の中の湯気を見た。

湯気は形を作らず、ただ消える。――消えるのが、少し羨ましい。


燕秋は、山菜鍋を空にした白黎へ、干し肉の欠片をもう一つ落とす。


「今日はここまで。

夜は、削れたぶんの反動が来やすい。夢が濃くなる」


白黎は小さく頷く。

頷きは遅い。それでも、今夜は遅れるまま残っている。


⸻


灯りが落ち、外の笑いが遠くなる。

宿の梁がときどき、ぱち、と鳴る。

夜が深くなる音が、壁越しに染みてくる。


白黎が、静かに口を開いた。


「……さっき。器って」


燕秋は湯気の消えた鍋を見たまま、短く答える。


「決めつけはしない」


燕秋は鍋の縁から目を離さずに続けた。


「でも、白黎の身体は霧に答える形をしてる。

答えるたびに、白黎の中が削れる。――それが事実なら、扱い方が要る」


「扱い方」


「一人で持たない」

「持つなら、置く場所を決める」


白黎は自分の指を見下ろした。

熱を入れたのに、指先だけが少し遠い。


「……じゃあ、僕は、どこに置けばいいですか」


燕秋は一拍だけ黙った。

考えたというより、答えが先に出てしまった顔だった。


「私の隣」


燕秋は白黎を見ないまま、灯の方へ視線を逃がした。


「……言い方が悪いな。縛るみたいだ。忘れろ」


「忘れません」


即答だった。考える前に、声が出た。


燕秋の指が止まる。


言葉が落ちた瞬間、白黎の内側が一枚だけ薄くなる。

それでも、その薄さが“隣へ寄る形”なら折れずに済む気がした。


「……白黎、そういう返しを覚えたのか」


「覚えたんじゃないです」


「……勝手に出ました」


燕秋が息を吐く。笑いになる手前で、いったん止まる呼吸。


「危ないな」


「何が」


「白黎が」


声が落ちたあと、部屋の音だけが残った。


「……まっすぐすぎる」


燕秋は息を一つ、遅らせた。


「白黎。今日みたいに、喉まで来て止まるものがあるなら――言わなくていい」


燕秋はそこで息を整え、言葉を続けた。


「でも、言いたくなったら合図をくれ」


燕秋は鎖骨(さこつ)の下を、指で軽く叩いた。


「ここに手を置け」

「――私は、聞く準備をする」


白黎は少し遅れて、同じ場所へ触れた。

指先が触れた瞬間、胸の奥の重さが、ほんのわずかだけほどける。――息が通る。


「……分かりました」


⸻


外が、白み始めていた。


宿の梁が、ぱち、と鳴った音で、白黎は目を開ける。

夜は浅かった。

夢は濃くならず、形を持つ手前でほどけている。


起き上がると、身体は動く。

重さはあるが、引きずられる感じではない。

「ここにいる」という感覚が、少し遅れて追いついてくる。


戸が静かに開き、燕秋が入ってきた。

旅装は崩れていない。髪も結ってある。寝た形跡の薄い人の姿だ。


燕秋は白黎を一度だけ見て、すぐ視線を外した。


「起きてたか」


「……はい」


「飯にしよう。起き抜けは、先に何か入れたほうが楽だ」


部屋の隅で、荷をまとめた布包みを持ち上げる。

その動きが、ほんの一瞬だけ遅れた。


白黎がそれに気づく前に、燕秋は懐から小さな紙片を取り出した。

折り畳まれ、角が擦れている。


「……これ」


卓の上に置かれたそれを、白黎はすぐには触らなかった。


橋の欄干に貼られていた、護符の切れ端。

安い紙だ。だが、朝の光を受けても、線が痩せていない。


燕秋は紙片の縁を、指で軽く押さえた。癖を逃さない押さえ方だった。


「昨夜のうちに、もう一度見ておきたくてな」


言い訳ではない。報告でもない。

『手順』として置かれた言葉だった。


「街道で使う護符じゃない」

「貼り方が雑で、字だけが揃いすぎてる」


白黎は覗き込む。


墨の線は細い。

だが止めのところだけ、わずかに沈んでいる。

払いは鋭く、紙の繊維を切るみたいに抜けている。


胸の奥で、何かが反射した。

そのまま、底へ落ちる。

思い出ではない。知識でもない。

ただ、「知っている気がする」という、嫌な確信だけが沈殿する。


白黎は息を止め、ゆっくり吐いた。

昨夜決めた手順を、身体が覚えている。


燕秋は白黎の反応を見て、言葉の温度を一段落とした。


「……照剣門(しょうけんもん)の筆に、似てる」


白黎は息を吸い損ねた。喉の奥が、薄く痛い。

断定はしない。

だがその一言は、刃みたいに卓の上に置かれた。


燕秋は続ける。


「照剣門当主――照剣烈真(しょうけんれっしん)は、剣みたいに真っ直ぐな筆を使うって言われてる。

派手じゃない。余計な飾りがない。だから逆に、真似が効かない」


燕秋は紙片を押さえる指に、わずかに力を入れた。


「真似るなら、筆じゃなく手がいる。――その手が、街道まで落ちてる」


白黎は掠れた声で問う。


「照剣門が……街道で、こんなものを?」


燕秋は紙片を畳み、懐へ戻す。


「『照剣門そのもの』とは限らない」

「名を借りる者もいる。剣の家の外に流れた手もいる」


少し間を置く。


「でも、匂いは残る」


燕秋は視線を上げず、そこで言葉を区切った。


「……匂いは、嘘をつくのが下手だ」


燕秋は白黎を見ずに言った。


「だから今日は、人の多いところへ行く」

「噂が育つ前に、根を拾う」


白黎は小さく頷き、鎖骨の下へ指を当てる。合図。息が通る。


燕秋はそれを見て、短く息を吐いた。聞く準備がある、という吐息だった。


「行こう」


朝の光が、宿の床に細く差し込む。

昼へ向かう匂いが、まだ控えめに漂っている。


白黎は思う。


昨夜は、削れる話を聞いた。

今朝は、紙の前で、身体が先に固まった。


それでいい。

今は、拾う手順を間違えなければ。


白黎は符袋を確かめ、燕秋の背を追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。