3話 悪霊退治
「まず俺は奏鈴成」
「僕は雲金楼今日はよろしくね~」
二人の名乗りに反応はバラバラ。会釈をするヤツ、目線を外さないヤツ、聞いているとは思えない態度のヤツ⋯愁はニコニコしているな。
「さて、大体この試験の定番は俺達試験官との模擬戦だ。模擬戦により祓魔師になれそうなヤツを選別する。」
そうだ、これが大体行われる試験。たまに筆記試験をする人がいたり、野宿を試験にした人も過去にいたらしい。
鈴成さん達は⋯普通の模擬戦をしそう。真面目というか、厳格な感じだ。
雲金さんは⋯⋯わかんないけど⋯うん。
「きっと鈴成さんは⋯歴代で一番優しくないですよ」
「え?どういう事だよ?」
「だが、俺達の試験は今までの試験と違うものにしようと思う」
違う試験⋯。
「……俺達の試験は、一次試験のみ、内容は⋯悪霊の祓魔だ」
「皆の衆、頑張りたまえ~」
「⋯⋯は?」
「ほらね、優しくないでしょ」
「いや、優しくないってレベルじゃねぇだろ⋯下手したら命に関わるんじゃ⋯」
悪霊は魔力を扱う事が出来るヤツにしか祓えない。
つまり魔力が無い、もしくはあっても全く使えないヤツが悪霊に対面したら一方的にボコ殴りだ。
「こいつがお前らの相手をする悪霊だ」
そう言うと奏さんは手を目の前に出す。その掌に、白い小さな箱の様な物が出現した。これって、召喚魔法か?
奏さんは広間の真ん中に箱を置いた。それと同時に中心から一定のスペースで円を描くように透明な壁のようなものが現れた。
そして箱から出て来たのは、狼の姿をした悪霊。姿は禍々しく、狼の周りは黒い靄のようなものが漂っている。
本物の、悪霊だ⋯。
空間には、萎縮する者、冷静な者、やる気がある者、驚きを隠せない者、様々な反応が交差していた。
「どうした?怖気づいたか?言っておくが、これは低級の中でも特に弱い。これに勝てないようなら、祓魔師は諦めろ」
「いやおかしいだろ!普通は試験官との模擬戦なんだろ⁉なんでそれが本物の悪霊なんだよ!」
そう思うヤツも無理はないだろう。俺みたいに魔力を扱った事がないヤツもいると思う。祓う手段もない状態で悪霊に近づくのは自殺行為も同然だ。
「模擬戦よりも手っ取り早いだろう」
マジかよ⋯ホントに悪霊を祓うってのか⋯?
今年の試験ヤバすぎだろ。
幼い頃、一回だけ見た事がある悪霊。黒い靄を纏いながら、目つきが鋭く、見る者は恐怖に縛られる。
「お前達、試験を何だと思っている?お前達はお遊戯でもしに来たのか?」
「いやあ~鈴成が試験官をすると遠慮ないね〜」
「試験に遠慮なんて要らないだろう」
試験で悪霊を祓うなんて聞いた事ねぇ⋯。
そもそも悪霊は捕獲が難しい筈だ。捕獲出来た場合、大抵は研究所行きだろう。
これまで悪霊を連れてきた試験官はいない筈だ。
そんな事を軽く出来るのも奏さんの能力の特性だろう。
「悪霊一体に付き一人づつ祓ってもらう。やりたい奴からやってみろ。無理なら帰れ。武器は此処に置いておく。好きに使うが良い」
広間の広間の机にいくつも武器が出される。種類は様々で、どれも対悪霊用だろう。白く美しい装飾が施された武器だ。
「なら俺から行かせてもらうぜ」
そう言い前に出たのは大柄な男。武器は大剣を選んだ。
男は怨霊を全く恐れていないようだ。まるで、勝つのはさも当然とでも言うように。
「こいつを叩けばいいだけなんだろ?なら武器もあるし簡単じゃねぇか!俺は、ビビリのお前らと違って、さっさとクリアさせてもらうぜ」
「分かった。では最初はお前からだ。中央から円状に、結界を張る。この中でやってもらう。結界に入った後は俺の許可が無いと出られないが良いな?」
結界も奏さんの力か⋯。
許可が無いと出られないって、最悪怪我をするって程度で済まないんじゃ⋯。
奏さんは結界の中に一匹の悪霊を放つ。
狼の悪霊は周りにいる人間に襲いかかろうとしているんだろう。
けど結界の効果でこちらに攻撃をする事が出来ないみたいだ。
「別にすぐに終わるさ。倒せば良いだけの試験にそんな事を言う意味があるのか?」
「そうか。分かった。この説明が無駄にならなければいいがな。この中に入れば試験が始まる。俺等はお前が闘えないと判断した時にお前の救助に入る」
「腕がなるなぁ。俺は喧嘩で負けた事はねぇよ。悪霊でもなんでも、俺の前には足元にも及ばねぇ」
男は結界の前に立つ。
「精々足掻いてみせろ。祓えなければ失格だ」
「隊長だからって舐めてんのか?こいつを倒したらお前らを相手してやるよ」
結果の中に入っていく。狼の悪霊は相手の様子を見るように伺っている。
祓う事さえ出来れば合格。言葉ではいくらでも言える。
「試験、初め」




