第24話 バディバトルのルールを確認しよう
あんまりまともにルール把握しようとしなくて大丈夫です
恋愛寮のリビングにて、一哲と加恋はゴールデンウィーク直前のバディバトルについて改めて調べ、作戦を練っていた。
バディバトルルール。
『各バディペアの持ち点が十点。個人がバディ以外の生徒にバディバトルを行い、その勝敗によってポイントを奪い合う。最もポイントが低かったバディペアが罰ゲーム』
「つまりクラスメイトに沢山バトルを仕掛けて勝利すれば良いってことね。単純じゃない」
「…………」
加恋は楽観的だが、一哲は何も言わず次のルールを読む。
『バディバトルは、タブレットを使って選んだ生徒にバトルを申し込むことで実施する。申し込んだ生徒は勝利すると相手から一点を奪い取り、申し込まれた生徒が勝利すると相手から二点を奪い取れる』
「申し込んだ生徒と申し込まれた生徒で差があるのは何故かしら?」
「そりゃあ申し込む方が有利だからに決まってるだろ」
「有利?」
「お前こういうの考えるの苦手なのか?」
「うるさいわね。勉強と関係ないんだからしょうがないじゃない。」
「関係なくはないと思うが……まぁ良い。申し込む方は有利な相手を選べるだろ。たとえばお前なら、勉と俺のどっちに挑む」
「…………あんたね」
「だろ? 相手は勝てると思ってバトルを仕掛けてくるんだ、だったら受ける方にもメリットが無いとバランスが悪い」
「でもこれじゃあ格上の相手に挑みたいって時にバランス悪くない?」
「…………罰ゲームがあるってのにそんなことするやついるか?」
「…………いなそうね」
罰ゲームは絶対にやりたくない嫌なものであると身に染みている。それなのに自ら罰ゲームを望むようなチャレンジングな行為をする生徒などいないだろう。
ポイント差の理由に納得したので、加恋はルールの続きを読み進めた。
『ポイントがゼロの生徒はバディバトルを受けることが出来なくなるが、仕掛けることは可能。その場合、バディバトルに敗北してもマイナスにはならないが、相手のポイントは増加する』
「脱落は無いって話だけど、こうなったら危険ね」
この状況に陥るということは大きく負けているということであり、罰ゲームの可能性が高くなってしまう。絶対に避けなければならない状況だ。
『バディ間でポイントの移動は可能。ただし、バディペアで合計十以上のポイントがある場合、両者とも最低でも五は持たなければならない。条件を満たさなくなった場合、自動でポイントが移動される』
「えっと……つまり、私が十五、あんたが五の時に、あんたが負けたら私のポイントが自動的にあんたの方に移動するってことよね」
「そういうことだな。十と零にして強いほうだけがバトルするって状況を回避するための設定だろう」
学園側としては全ての生徒に勉強してもらいたいのに、テストを完全回避して勝利するというのは流石にやりすぎだと思ったのだろう。
『バディバトルを仕掛ける側はタブレットの中に用意してある全ての教科の中から問題を選択し、相手に解いてもらう。問題と相手を同時に選ばなければならない。問題数は十分に用意してある』
「とりあえず対戦相手をキープしてからゆっくり問題を選ぶってことが出来ないのね」
「もたもたしていると他の人に相手が選ばれてしまうな。いや、複数同時にバトルすることも可能なのか?」
「ううん。『バディバトルは同時に一つしか行えない』って書いてあるから無理ね」
「なら狙った相手と戦いたいなら、問題を急いで選ばなきゃならないのか」
しかしだからといって雑に選ぶことは出来ない。
簡単な問題を選んでしまったら相手に解かれてしまうし、難しい問題を選べば良いという訳でも無かったのだ。
『相手の回答が正答かどうかは出題者が判定すること。出題者の判定が誤っていた場合、追加で出題者のポイントが相手に一点移動する』
つまり慌てて自分が解けない問題を選んでしまったら損をするだけなのだ。
「えっと、バトルの時のポイントについてまとめるね」
出題者が正解、解答者も正解。
この場合は解答者の勝利になり、出題者二点減少、解答者二点増加。
出題者が不正解、解答者が正解。
この場合は解答者の勝利になり、出題者三点減少、解答者三点増加。
出題者が正解、解答者が不正解。
この場合は出題者の勝利になり、出題者一点増加、解答者一点減少。
出題者が不正解、解答者も不正解。
この場合は両者敗北となり、出題者増減なし、解答者増減なし。
「ね、ねぇ、出題側が不利すぎない?」
「そうか? 相手も問題も選べる時点で相当有利だから、このくらいリスキーじゃないとバランス取れない気がするが」
これが入学当時でクラスメイトのことが分かっていないのであれば話は別だが、一か月足らずでも毎日のバディバトルで得意不得意を全員が叫びまくっているせいでバレてしまっている。ゆえに誰にどんな問題を出せば勝ちやすいかは一目瞭然なのだ。
ゆえに挑まれる側がかなり有利な仕組みになっている。
「どうせAIのことだ、個人の能力を把握して解けない問題を用意してあるに違いない。それを正しく選べるかどうかが勝利の鍵だ」
「そんなのどうやって見つけるのよ」
「ふっ、お前はそういうの苦手そうだもんな」
「逆にあんたは得意そうよね」
「まぁな。これは任せろ。誰に何の問題を出せば良いかは当日指示してやる」
「…………お願いするわ」
少し前であれば『お願いする』なんてことが出来るような関係では無かった。しかしその『お願い』が必要な時にそれが出来るようになっているというのは、偶然なのかそれともAIによる誘導なのか。
「結局のところ、大事なのは挑まれた時に正解することよね」
「…………そうだな」
「何よ、含みのある言い方しちゃって」
「いや、お前の考えは正しい。ただ、相手だってお前が間違える問題を必死になって選ぶはずだ。何しろ出題側はかなり不利なんだからな。とはいえ成績と罰ゲーム回避のためには挑むしかない。特に点数が減ってしまったやつらは全力で襲い掛かってくるだろう」
「だったら勉強して間違える問題が無くなるようにすれば良いだけね」
「今回は手を抜きたいんじゃなかったのか?」
「うっ……べ、別にそういうのじゃないし……イベントは別っていうか……」
相変わらず勝ちたいのかそうでないのか良く分からない謎のスタンスだった。
「まぁいい。どっちにしろお前は策を考えるとか苦手っぽいからな。俺が策を練ってお前はいつも通り勉強してろ」
「あんたも勉強しなさいよ」
「するさ。もちろんな。くくっ」
悪い顔で笑う一哲。
加恋はそれを頼もしく感じてしまった自分が嫌になり、深い溜息を吐くのであった。




