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バディ・ボディ・バディ  作者: マノイ


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20/24

第20話 朝のホームルーム前に会話が盛り上がると永遠に続けたくなるよな

「おっはよ~、一哲君今日も早いね」

「琴遥ちゃんとイチャイチャするためさ」

「近づかないでね」

「酷い!」


 加恋より先に登校していた一哲は、クラスメイトと交流を深めていた。


「俺と琴遥ちゃんの仲だろ?」

「加害者と被害者の関係かな」

「俺が一体ナニしたって言うんだ!」

「セクハラ」

「っしゃーせんでした!」


 いつものように琴遥と挨拶がてらコントを行うと、琴遥の肩越しに気配を消して着席する静の姿が目に入った。


「よお静!おはよう!」

「うっ、お、おはよう」

「なんだよ今日も元気ねーな。きばってこーぜ!」

「どうしていつも僕の肩を抱こうとするのさ」

「ダチだから良いじゃん。そんなこと一々気にしてたらハゲるぞ」

「また髪の話してる……」

「俺の頭を見るんじゃねぇ!俺は絶対にハゲねぇぞ!」

「あはは」


 一哲に絡まれて迷惑そうな顔をするものの、揶揄い返して笑えるほどには良い関係を築けているようだ。


「よいな~私もお話ししたいな~」

「あ、う、そ、その、おは、よう、ございま………す……」

「おはよう。ちぇっ、まだダメか~」

「ごめ……な……さい……」


 しかし女性に対する恐怖心はまだ払しょくできず、琴遥とまともに話をすることは出来ていない。授業でバディ同士での作業があるのだが、そこでも苦労している。


「琴遥ちゃんが困ってる!ここは俺の出番だ!」

「お帰り下さい」

「言うようになったじゃねーか静。だが断る。お前確か部活まだ決めて無いんだよな。なら今日の放課後面貸せや」

「親切なのか脅しなのか明確にしてくれない?」

「じゃ脅しで」

「普通逆でしょ!? うう……断れないんだろなぁ……」

「当然!」


 バンと強めに静の背中を叩き、一哲はようやく静から体を離した。


「どこの部活に行くの?」

「お、琴遥ちゃんも興味ある?じゃあ一緒に行こうぜ!」

「固くお断りします」

「なんでだよ!今のは行く流れだろ!?」

「だってヤリ部屋とかに連れてかれそうだし」

「え?この学校にそんなのあるの?」

「そこで興味深そうにするのは大減点」

「酷い!誘導尋問だ!」

「ひっかかる方が悪いんだよ。それとヤリ部屋は一哲君が良く知ってる場所かな。具体的には住んでる場所」

「あ~なるほどあそこね。琴遥ちゃん、今日遊びにおいでよ」

「この流れで行くと思う?」

「くっ……完璧な誘導だと思ったのに」

「どっこが~」


 一哲の好感度が激減しそうな会話だが、お互い分かっていてふざけ合っているだけ。だが傍からはそうは思われない。


「貴方達、朝からなんて話してるのよ」

「おっす、いいんちょおはよ。今日も眼鏡が似合ってるぅ」


 工藤(くどう) 真祐(まゆ)

 真面目かつ純愛物が大好きな彼女にとって、ヤリ部屋だのなんだのはイメージが最悪で好感度が激減していたのであった。不思議なことに一哲だけ。


「委員長じゃないし眼鏡かけてないし、貴方は私の背後霊にでも話しかけてるのかしら?」

「眼鏡かけた方がなじられた時興奮するからかけさせてくれって茶鳩が言うから」

「センセイ!?」


 慌てて飛んできたのは遊佐(ゆさ)茶鳩(ちゃばと)。真祐のバディにして何故か一哲を恋愛のセンセイ呼びするチャラ男だ。


「うわ、キモ」

「ほら今少し喜んでただろ」

「喜んでない!センセイ酷いぜ!」

「でも少しは?」

「……な、ないわ!」

「え、今の間ってまさか……冗談だったのに、悪かったな」

「マジトーンで謝るのマジっぽくなるから止めてくれ!」

「うわ、キモ」

「くっそおおおお!」

「あ、逃げた」


 これ以上弄られてたまるかと言わんばかりに、茶鳩は教室を飛び出してしまった。


「少し悪いことしたかしら」

「その割には楽しそうじゃん」

「彼のだらしない姿には辟易していたから、少しはね」

「なら気分が良くなったところで、俺と良いことしようぜ」

「良いこと?勉強かしら」

「そう、恋の勉強!」

「間に合ってるわ。私は参考書を沢山もっているもの」

「実技に勝る勉強はないぜ!」

「間に合ってるわ。私は実技の経験が沢山あるもの」

「それなら……え、マジ?」

「ふふ、どうかしら」


 意味深に笑って一哲を揶揄う真祐。異性としての好感度は低いが、こうして楽しく会話をする相手としては認められているようだ。


「ふわぁあ、おはよ~」


 次に教室に入って来たのは、眠そうなギャル。


「かざりん、うぃ~っす」

「お~、いっちじゃん。何の話してんの?」

「まゆりんが経験豊富だって話」

「え、マジで!?すごーい!話聞かせてよ!」

葵木(あおき)さん、いつもの彼の冗談よ」

「ちぇ~、そんなことだろうと思った」


 右の人差し指を頬にあて、口を尖らせて不満を隠さないその女生徒は葵木(あおき) 花咲里(かざり)


「あれ、かざりん、そのネイルすげぇ可愛いな!」

「おっ、さっすがいっち。気付いちゃったか」

「今までで一番良くね?」

「でしょでしょ。あたしもそう思ってたんだ。超お気になの」


 一哲と花咲里。

 波長が合うのか、一哲のキャラのおかげか、これまた自然と仲良くなっていた。


「ちぇ~、いっちがバディだったら楽しそうなのにな~」

「俺もマジでそう思うわ。バディの変更させてくれ~!」


 などと新入生の間での定番台詞を口にしながら、二人はある人物の元へと近寄った。二人が仲良くなるきっかけとなった人物である。


「な、なんだよ。こっち来んなよ」

「ほらね。女子に向かってこんなこと言うんだよ。ありえなくない?」

「マジありえな~い。ありえなくなくなくな~い。きも~い」

「キモくは無いだろ!?」

「え、お前そういうの気にするタイプだったの?」

「う……煩い煩い!勉強の邪魔だ!」

「なぞなぞの?」

「きゃはは、あんな簡単なの分からないとか頭固すぎ~」

「かざりんみたいに柔らかくならないとな。触らせて貰ったら?」

「一回一万ね」

「たっか!」

「何言ってんのさ。安いくらいだよ。だって女子の柔らかいとこを触れんだよ?」

「確かに。買った!勉が!」

「買わねーよ!もうあっちいけよ!」

「今日の放課後、一万円を稼ぐために必死でバイトする勉の姿が」

「くそ、くそくそくそ。負けなければこんな目に遭わなかったのに!」

「や~いや~い、負け犬~」

「ぐぎゃああああ!絶対に学年トップになってやるからな~!」

「かざりん隊員。分かってるな」

「はい!全力で邪魔する次第でございます!」

「鬼!悪魔!それでもクラスメイトか!」

「え、お前俺達のことクラスメイトだって認めてくれてたのか?」

「くけええええええええ!」


 揶揄われまくり壊れてしまった勉。

 彼らの間に険悪な空気はもう無かった。


 そんな中で一哲より大きく遅れて加恋が登校し、琴遥に挨拶する。


「おはよう音乃葉さん。今日も騒がしいわね」

「おはよう桜ヶ平さん。新婚生活はどう?」

「お母さんの偉大さを実感してるところ」


 琴遥の揶揄い(新婚生活)に加恋は反応しなかった。これまで毎日のように言われ続けて慣れてしまっていたのだ。


「それよりあいつ、また彼に構ってるの?」

「うん。凄いよね」

「凄い?」

「だって一哲君って、猪狩君がクラスで孤立しないようにああやって頻繁に弄りに行ってるんでしょ。しかもバディの葵木さんも猪狩君を無視しないようになってる。仲をとりもとうとしてると思うんだ」

「…………考えすぎよ。あの馬鹿は本能のままにふざけてるだけ」

「え~そっかな~」


 たとえそうだったとしても、勉が救われていることには変わりない。

 そのことを素直に評価できる程には、まだ加恋の心は緩んではいないようだ。


「桜ヶ平さん」

「工藤さん。おはようございます」


 今度は真祐が加恋の元へとやってきた。


「ええ、おはよう。ちゃんと避妊はしてる?」

「ぶはっ、な、何言ってるんですか!」


 顔を真っ赤にして抗議する加恋。

 色々な勘違いに慣れているとはいえ、この手の話はまだ抵抗があるようだ。


「工藤さんって、何故か私と一哲の間に何も無いってことだけは信じてくれないですよね」

「仕方ないじゃない。男女が同棲する物語なんて、最終的にはそうなるものだから」


 愛読書が真祐にそう教えてくれた。


「それって物語の主人公のお話ですよね。私は主人公なんかじゃないですよ」

「そうかしら。新入生代表の美少女優等生と、下心満載のぐぅたら美少年(・・・)のペアなんて定番のザ・主人公だと思うのだけど」

「うっ……だ、だとしても、です。それにほら、この学園はバディ同士で恋愛関係にならないんでしょ。もしかしたら一哲の相手は工藤さんかもしれませんよ?」

「う~ん。俯瞰してみると私はサブヒロインにしか見えないんだけどなぁ」


 もちろんサブヒロインが報われる物語も数少ないが存在する。そのことを真祐はどう思っているのだろうか。


「まぁでも分かったわ。私が間違ってた。しばらくはラブコメのターンですものね」

「ラブらないしコメりません!」

「もうやっているようにしか見えないけど……」

「眼科に行くことをお勧めします」

「ふふ。その照れた反応がラブコメってる証拠ね」

「照れて無いしラブコメってなーーーーい!」


 加恋の叫びと同時にチャイムがなり、朝の喧騒は終わりを迎える。


 険悪な雰囲気だったはずの教室内の空気はたった一週間半の間に大分和らいでいた。その原因の一つは、間違いなく一哲の空気を読まない明るい性格によるものだろう。加恋はそのことだけは内心で認めていた。

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