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異世界代表、転生吸血姫。  作者: 熊猫パンダ
第1章 幼年期~青年期
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第3話 新たな世界で

意識が覚醒する。


「p@/:;@p+*?+P<%"#(!!」


聞いたことのない言語と共に俺は自分の転生の成功を悟った。


俺は白い布に包まれて抱き抱えられている。


目の前がぼやけている為に俺を持ち上げている人物の顔は良く見えないが、生まれたばかりの子供の視力はとても低いと聞いたことがある。徐々に良くなっていくだろう。


言葉は理解できないし表情もまだ見えないものの、俺の頬に頬をこすり付けてきたり、反射で指を握り返す俺に手を繰り返し差し出してきたりと、その暖かな感情はいとも容易く理解できた。



「イヴ様。本日の夜食を勝手ながらご用意させていただきました。如何でしょうか?」


不揃いではあるもののきつね色に程よく焼かれたクッキー。一つ手に取って齧ってみると、口の中で簡単に解け、香ばしい香りと砂糖の甘みが口の中に広がってきた。


「うんまぁ~い!!ありがとう!頂くよ~!!」



皿に綺麗に盛られたクッキーをありがたく受け取ると、メイドはパァっと顔を明るくして去っていった。


この世界に転生してから今日で7年が経つ。


いきなり時間経ちすぎだろだって?しょうがないだろ、物覚えの前だったんだ。


前世の記憶自体は丸々残っているのだが、物覚え前の凡そ四歳より前までの記憶はもう殆ど残っていない。


今の俺の名前はイヴ・バレンタイン。身辺の人にはイヴと呼ばれている。


言わずもがな剣と魔法の世界に転生した訳だが、どうやら戦争というものも絶えないらしい。


約100年に一度聖戦と呼ばれる大戦争が起こり、その戦争に勝利すると神から莫大な富と力を与えられるそう。


この世界は二つに分断されており、聖戦ではその世界の片割れと殺し合うそう。前回の聖戦ではここ、ラディスラウス大陸側が敗北、片割れのユークレース大陸が勝利し富と力を得た。




あ、あと俺、人間じゃなかったのである。

かといって見た目がとんでもない化け物な訳じゃない。


ただ純粋に魔族ってわけでもない。


察しのいい方ならもうわかるだろう。


いわゆる半人半魔というやつだ。


父は人間で、母は魔族、それもヴァンパイアという種族だそう。


遥か昔からこの大陸では種族問わず共存してきたお陰で差別は無いわけではないがそこまで酷くないらしいから、そこまでネガティブには思わない。それに母はここルルガジナ王国バレンタイン領の領主で、実際相当な権力者なのだ。むしろ、いや普通に滅茶苦茶ラッキーと言えるだろう。


この館は母の祖母が亡くなる時譲り受けた物で、今は母の館ということになる。





「イヴ?ちょっと良いかしら?」


「お母様ですか?良いですよー!」



この人が俺の実母であるリヴィアナ・バレンタイン。


腰まで伸びる長い銀髪に真紅の瞳、きめ細やかな白い肌。身長は180近いだろう。


ツンと尖った耳も、ヴァンパイアの特徴らしい。


当たり前に毎日、何度も目にしているが、その度に思う。


(かぁちゃんめっっちゃくちゃ綺麗ぃぃぃぃ...!!)


ヴァンパイアの種族の特徴の一つに、トンデモ美貌というのがある。


これは一説に、始祖のヴァンパイアは吸血鬼と呼ばれ異性の体液を摂取し生き永らえてきた為、人間に近づく必要があった。


違う種族に近づくのに手っ取り早いのが、人間好みの容姿に進化していく事だったのではないかという説が有力だそうだ。


今も体液を摂取することで栄養分を確保するのは可能だが、別に普通の飯でも良いので、体液の摂取は徐々に特別な物になっていった。


この世界で母の噛み傷を持つのは母の夫のみなのである。


ま、そういうことだ。



「ごめんなさいね、こんな夜更けに。」


「いえいえ、どうかされましたか?」


先程メイドから受け取ったクッキーを机に置いて、机を挟んで座り直す。


「最近、ヨアヒムとデブラの仲がどうも良くないように見えるじゃない?どう思う?仲良くして欲しいのだけれど...」



「ヨアヒム...というと、第六父様の。」


「ええ、そうよ。彼、結構プライド高いじゃない?だからデブラもプライド高いからお互いにぶつかり合ってるんじゃないかと心配でね?」


「そうですね...?確かにぶつかりあってる時もあるかも知れないです。でも、意味の無い喧嘩をしている所は、私は見たことがありませんし、こないだの宴会だってお酒飲んで肩組んで笑ってましたよ!大丈夫じゃないですか?」


そういうと、リヴィアナはホッとしたようにため息を吐いた。


「そうよね、不仲なんて私が許す訳ないのに...夫達を信じられないだなんていけないわね。ありがとうイヴ。夜遅くにごめんなさいね。お休みなさい。ぐっすり寝るのよ?」



おやすみなさーいと言ってドアを閉める。



...そう、俺の家庭は少々複雑、一妻多夫制、所謂逆ハーレムってやつだ。


父は6人いる。


母はリヴィアナ1人だ。


ヴァンパイアは単純に戦闘にも秀でており、リヴィアナはその中でも特に優秀で、今は第一線を退いたものの現役時代には魔王直属の親衛隊隊長を務める程の実力者だったそう。


さて、夜が更けてきたな、もうすぐ寝るし、寝る前に水浴びして身体を清めよう・・・




館の裏口を出ると男と女で分かれる道があり、俺は女の道を進んだ。

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