第15話 遅れてやってくる
「えーっ!?イヴちゃんが冒険者!?」
「おう、旅の賃金稼ぎになー。」
「イヴちゃんぐらい可愛い子、俺だったら養っちゃうな―。なんて!!ぎゃはは」
3人ぐらいの男達に連れられ、現在昼食がてら彼らがお勧めする酒場にやってきている。
お勧めといえば人気そうだが、人気が殆ど無いすっからかんだ。昼だからだろうか?
良いご飯屋さんを教えて貰うだけでなくギルドまでの案内もして貰えるというのに、何故か飯代まで奢ってくれるそう。一体全体どんな善人集団なのだ。
「ほら、酒も飲んじゃいなよ!!」
俺が頼んだのはレッドボア定食と水だけなんだが、なんだかとても飲酒を進めてくる。
回復魔法でアルコール依存は治癒できる関係で特に飲酒の規制は無いが、何となく避けてきた・・・。
全く飲んでも問題は無いんだけどな。それにまだ日が暮れる前だし、これから予定もあるのだ。悪いが断ろう。
「あーわり、酒は良いかな。これからギルド行かないとだしさ!」
出来るだけ相手の気分を損なわないように注意して丁重にお断りしたつもりだったんだが・・・
「チッ」と隠す気の無い舌打ちが聞こえた。
「・・・そっかぁ。ま、無理は良くないよね~!・・・でもさぁ、態々奢ってんのに、ちょっとノリ悪くね~??へへ。」
ツンツンと脇腹を強めに突いてくる男。
「いてーよっ。」
「わりわり。・・・てか、イヴちゃんめっちゃスタイル良くない!?お腹とかほら、凄い締まってるし。」
隣の席に座っていた男がいきなり俺の腰を採寸するように手で覆う。
「うおっ・・・?なんだよいきなり・・・?」
強すぎないように手をほどかせるが、今度は腕を触ってきた。
・・・なんか、気持ち悪い。
流石に度を越えたスキンシップをやめさせる気配が無いので前に座る二人を見ると、何だかニヤニヤしている様に見えた。
「ちょっと、やめてくれよ・・・!」
あまり気色が悪いのでつい突き飛ばしてしまった。
勢い余って男を椅子から吹っ飛ばして隣の机ごと倒れてしまった。
「やべ・・・」
「お、おいおい・・・?な、何してくれてんだよ、イヴちゃん・・・?お、おい!死んでねえよな、ジャル!?」
「・・・ってぇ・・・!!この、クソ女ぁ!少し顔が良いからって優しくしてやってたのによぉ・・・女だからって手出されねぇと思ってんじゃねえぞ!!」
何とか立ち上がり俺に反撃してきた男。
いきなり面倒な事になったぁ・・・!!んだよ、旅人に優しくしてくれる好青年達かと思ったら、女の俺に下心を持って近づいてきたチンピラたちだったのか!
・・・くそっ、そういえばずっと鏡を見ていなかった。
あのリヴィアナに似て成長しているんだとしたら・・・。
しかし、このまま黙って殴られるわけにも行かないし、さっきのちょっと小突いただけであんなに吹っ飛ぶんじゃ対応するにも力加減が難しい。・・・どうするか・・・?
「お前達、女性相手に何をしている?」
俺が仕方なく拳を受け流そうと手を出そうとした瞬間、俺ではない別の人間の手がチンピラの拳を防いだ。
「!?女を連れ込む為に人通りの少ないこの廃屋を選んだのに、どうしてここに人がいる!?」
あ?廃屋・・・?道理で人が居ないわけだ。角に蜘蛛の巣張ってるし。
「丁度道に迷ってこんなところに辿り着いてしまってな。丁度この家屋の前を通り過ぎた時に大きな音が聞こえたんだ。」
そう言ったまま掴んだ拳を放さない黒髪の青年。
「道に迷っただぁ!?迷う程度で辿り着けるような場所じゃねぇぞここ・・・?つーか!!邪魔すんじゃねえよ・・・。俺らはなぁ、この女に暴力を振るわれたんだよ!」
3人で息を合わせて俺に指を差すチンピラたち。
・・・確かに、この状況を見れば俺が悪いかも。
そう指摘され、男の立つ場所にある壊れた机。明らかに俺の近くから吹っ飛んで壊れた形に崩れている。
俺とチンピラ、壊れた机を何度も見直し、何度も脳内で演算処理を繰り返す青年。
「・・・うるさぁーい!寄ってたかって女性を傷つけようとする輩は等しく悪!父上からそう学んでいるっ!!」
まさかの唐突な3連アッパーカットで3人を一瞬にして打ち倒す青年。
「大丈夫ですか。・・・君、幾つだ?」
「ありがとう・・・?15だよ。お前は?」
「!僕と同じだ。君も今年から家を出た口だな?お互い頑張ろう。」
ぎゅっと手を握って挨拶をする青年。この手に他意は一切感じられない。
「てか、料理がまだ・・・」
ん?廃屋って言ってなかったか、こいつ?
「・・・死ねぃっ!!」
厨房から突如複数のナイフが飛んでくる。
「氷壁」「水弾」
氷の壁で飛んできた刃物を防ぎ、崩れた氷の隙間からナイフの軌道の下へ水弾を撃ち込む。
バタンと人が倒れた音がした。もう大丈夫だ。
「・・・!!凄まじい技術だな、俺ではあの速度で反撃出来ない。魔術師か?」
「おう!そっちこそ・・・良い、アッパーだった。」
うん、あれは良いパンチだった・・・。
「それでは、僕は行かなければならない所があるから。」
軽く手を振って颯爽と去っていった青年。
「・・・ねえ、お腹減ったって。」
地面にくたばって気絶したチンピラの一人を足でつつく。
起きる気配は無かった。




