【第二章】 第14話 王都ルルガゼ
「王都ルルガゼ...」
知識だけは15年で充分過ぎるほど蓄えてきた。取り敢えず冒険者登録を済ませてしまった方が後々楽なようだ。
冒険者登録を行うには冒険者協会に出向く必要がある。
冒険者協会は全国各地の首都に設置され、その効力は国々どころか魔界人間界含めた全世界に及ぶ。具体的な冒険者登録をするメリットとしては、各地から寄せられた依頼を受注し、それを達成した時に報酬を与えられる、探求する集団という仕組みが大きな例だ。
その難易度や危険度が上がる程に報酬も比例して増えていく。
クエストの中身としては花摘み、荷物運びから魔物・獣討伐や傭兵など、多岐に渡る。
王都ルルガゼまではそう遠くない。
今日中には到着できるだろう。
何があるか分からないから常に水球は漂わせている。
そう言えばこの水球、ずっと使ってないな...?
睡眠時ですら浮遊させている。
魔力を込め続けるのは流石に辛いので、自動で俺に追尾するように設定してある。
そう言えば、昔文献で魔力を込め続けた物質に命が宿るみたいな物を見た事がある。
そーっと水に触れてみると、不思議な感覚がした。
水なんだが、モチモチしているというか...ネバネバしているというか...
どうしてかは分からないが、何故だか直感的に操作を解除しても形が崩れないような気がした。
「解除」
球体の形を崩し、バシャッと地面に飛散する水。
「...やっぱり気の所為か。」
前を向き、再び歩き出す。
すると、背後から何かを引き摺るような妙な音がした。
もう一度後ろを見ると、飛散した水が集まり出していた。
「...うぇっ?」
徐々に形を帯び、再び球体に戻ってしまった。
勿論、もうあの水に魔力は込めていない。
しかし、あの水から確かに魔力を感じる。
歩くと、水球は地面を滑るように勝手に着いてくる。
...どうやらあの文献の話は本当だったようだ。
「おい」
話しかけても反応はない。
どうやら生命とまでは至っていないらしい。
こうして生まれる魔獣は使役できるそうで、それを生業にする者の事を使役師と呼ぶ。
面白そうだし、暫く魔力を込め続ける事にしよう。
その日の終わりに翌日支障が出ない程度に余った魔力を込めてみてもいいかもな。
もう1つ水球を増やす事になってしまった。
まあ水球1つ程度脳の負担にはほぼ変わりない、無理は無いだろう。
夕暮れ時、王都ルルガゼに到着した。
どうやら通行証という物が必要らしく、門番らしき兵士に止められてしまった。
「通行証を」
「え、っと、持ってないです。」
「紛失ですか?」
「いえ、ここに来るのは初めてで。」
「そうですか、それでは通行証を発行致します。こちらへ。」
門の横に設置された別室に誘導され、見るからに特殊な魔道具が設置された席に座るよう促された。
「こちらの装具に手をはめて魔力を流してください。貴女の魔力の波長が登録された通行証が発行されます。」
なるほど、面白い仕組みだ。
魔力は生物それぞれ全て違う物を持つ。その特性を利用し前世で言うところのDNA、マイ〇ンバーのような仕組みを作ったのか。
「これでいいのか?」
フオンと軽い作動音と同時に、基板が鈍く光る。
「おー・・・」
「どうぞ、こちら初回は税金により無償で配布されております。紛失等で二度目の発行が必要になった場合料金が発生致しますのでご注意下さい。」
薄いカードのような硬い材質でできた通行証を渡され、通行証にはここの言語でルルガゼと明記されていた。
タダ!税金様々だな。
「門の出入りのときに毎回確認させていただくことになります。門内、つまりは王都の中で通行証を紛失された場合、再発行するか発見して頂くまで外に出ることはできませんので、合わせてご了承下さい。それでは、どうぞお通り下さい」
ギイと大きな門がゆっくりと開く。
大量の荷物が積まれた牛車に乗る行商人や見るからに冒険者パーティー等、俺以外にも沢山の人が出入りしていた。
王都ルルガゼ。
俺の生まれ育ったこのルルガジナ王国の首都だけあって流石に人の量がうちの領の城下町の比にならないな・・・
王都を歩いているだけでなんだか楽しくなってきた。
見たことのない建物に見たことのない商品、人、食べ物。
何よりもここには俺を知る人間がいない。
決してバレンタイン領が居心地悪かった訳じゃないけど、正直町を歩くだけで声を掛けられて一々足を止め、挨拶をし、会釈をしなどという礼儀作法を一々熟すのが面倒だった。
初めて城下町に降りたときなんか逃げ回って大変だったんだからな・・・。
自分の好き勝手に街を歩き回れるというだけで楽しい。
「君!旅に出てすぐかい?若いねぇ。俺らがここ案内してあげよっか?てか先飯行こっか!お腹空いてるっしょ?」
ギルドを探して歩き回っていたら20代前半ぐらいだろうか?人間の男の集団に声を掛けられた。
確かに腹も空いてきてるし、ギルドの場所も分かっていない。お言葉に甘えて同行させて貰おう。
「良いのか?ありがとう!」
「ういーっ!ノリいーね?」
着いて直ぐ人の優しさに触れた。
なんで初対面の俺にこんな事してくれるんだ?王都はあったかそうだ!!




