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ひと夏の思い出〜とっても美味しい夏でした〜  作者: 地野千塩


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19/22

しろくまの夢

「あつーい!」


 その日、熱帯夜だった。せっかくの盆休みだったが、冷房つけても暑い。


 仕方がないので深夜に風呂に入り、冷房の温度も下げ、氷枕を抱きしめながらようやく眠れた。昨日は昼間公演に行き、手作りマルシェで遊んでいたから、昼間の熱が残っていたのかもしれない。そんな気がした。


 こうして眠ったら、夢をみた。


 もう私は良い大人で仕事もしている。一人暮らし歴も長い。それなのに、やけにメルヘンチックな夢を見てしまった。


 どこか北極のような氷に囲まれた世界にいた。夢のおかげか寒くはなく、私は白いワンピースを着ていたのに寒くない。むしろ涼しくて気持ちがいい。


 しばらく氷の世界的を歩いていると、ペンギンの集団とすれ違う。親ペンギンも可愛い。ひょこひょこ歩いている。子ペンギンはもっと可愛い。モコモコの茶色い毛の塊が、親以上にヨチヨチ歩いている。


 現実世界では暑さで溶けていたは、夢の世界は涼しく、可愛い。


 遠くに見える氷山もよくみたら、かき氷だった。白いクリームが頂上にかかり、見るけでも美味しそう。現実では絶対あり得ない夢の世界にうっとりしていた。


「お嬢さん」


 そこに白熊が現れた。モフモフな白熊だったが、二本足で立ち、なぜか人間のように言葉を発していた。しかも日本語。


 あり得ない光景だが、夢だから良いか。


「私と一緒にダンスを踊ってくれません?」


 しかも白熊は、うやうやしく提案してきた。私より身体が大きな白熊が、謙っているのも何ともおかしかった。


「ええ」


 なぜか私も白熊と一緒ににステップをとり、一緒に踊っていた。


 踊っているのに、涼しい風が吹き抜け、楽しくて仕方ない。白熊も笑顔で私と一緒に身体を揺らしていた。白熊とは、まるで長年の友人のように親しくなってしまった。


 こんなファンシーで少女趣味の夢を見たせいだろうか。


 目が覚めた後、相変わらずの暑さや溶けて温くなった氷枕に、ちょっと虚しくなった。


 それでも不満なんてないし、夢は夢。


「しろくまでも食べに行こうかな」


 そんな事を思いついた。確か市の図書館のそばに綺麗なカフェがあった。かき氷も美味しいカフェという噂だし、しろくまもあるだろう。


 昼間だったが、少し日が翳ってきた時間を見計らい、カフェに向かった。


 カフェは天井が高く、広々と開放感がある。土地柄、客は図書館の本を読んでいるものも多く、店内はかなり落ち着いていた。全体的にナチュラルなインテリアで居心地が良い。窓の外から蝉の鳴き声がやけに響いていた。


 しろくまとアイスコーヒーを注文した。


「わあ」


 運ばれてきたしろくまは、想像以上に大きい。こんもりと盛られた氷に練乳やクリームがかけられている。てっぺんは、真っ赤なチェリー。


 下層部は、バナナ、キウィ、みかん等にのフルーツ。それにエメラルドグリーンやオレンジ色の小さなゼリーも埋まっている。甘味は埋められた巨大な氷山だ。一つ一つフルーツやゼリーを発掘しながら、美味しい氷山を攻略していった。


 しろくまという名称の由来はよくわかっていないらしい。鹿児島で生まれたスイーツらしいが、「鹿児島県のしろくまを開発してくれた人、ありがとう!」と思い、口の中は天国へと変わっていく。


 途中、キーンと頭痛がしてきたが、この痛みも甘さを引き立てるスパイス。一旦、アイスコーヒーを飲み、休憩。


 こうして後半戦に挑み、フツーツやゼリーを順調に発掘していった。


「ご馳走さま」


 こうして盆休みは終わった。今年はキャンプやレジャーなど何もしなかったが、こんな夏があってもいい。十分、良い思い出だ。


 お盆明け、仕事は面倒で仕方なかったが、冷房が効いたオフィスに居られるだけでも良きかな。


 そんな事を思いつつ、パソコンでメールのチェックなどをしていると、今日は新しく派遣の人がくる予定だった。私も教える事があり、気が引き締まる。


「はじめまして。荒井朋也です」


 新しくきた派遣の人は、何というか熊っぽい男だった。体格も顔も、熊っぽい。色が白いから白熊?


 そんな失礼な事を考えつつも、仕事をこなす。荒井さんが側にせいで、美味しいしろくまも頭に浮かんでしまい、集中力を保つのが大変だった。


 まあ、今週頑張ったら再びカフェでしろくまを食べに行こう。あの甘味の氷山は、夢のように美味しかった。

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