ほぼ鰻
土用の丑の日に鰻を食べるのは、平賀源内が思いついた商売らしい。
平賀源内は、江戸時代の蘭学者だったが、鰻屋から相談を受ける。夏は鰻の売り上げは落ちるからどうしたら良いのか、と。そこで平賀源内は、土用の丑の日に鰻を食べるプロモーションを提案し、定着していったそう。
土用の丑の日に鰻を食べる理由は諸説あるが、栄養素が高い事は事実らしい。質の良い脂質やカルシウムなどの栄養が豊富と言われている。
ふっくら柔らかな身、甘辛いタレ、照りかえった輝き、山椒のアクセント、タレでぐずぐずになったご飯……。
ちょいうど今は、土用の丑の日だ。想像していたら、鰻が食べたくなってきた。
しかし、一つ問題がある。鰻は高級だ。千円越えも珍しくない。
財布の中身を確認すると、鰻を買う金がない。一応正社員として働いているが、今は物価高。一番削りたいのは食費だったりする。
それでも、鰻が食べたい!
そう思った私は、色々とレシピを検索して見る事にした。鰻っぽい何かを作れないだろうか。例えば竹輪や蒲鉾とか。スーパーでは安いジェネリックな鰻を見た事がある。ジェネリックというか、「偽ブランドっぽいな」と思った事は口が裂けても言えないが。
色々レシピを検索していたら、ナスで鰻を作っても良さそう。見た目はほぼ鰻。
すぐにスーパーに行き、材料を買いそろえ、ジェネリック鰻を作ることにした。
本当に鰻っぽくなるかは謎だったが、完成させたのを見ると、ほぼ鰻。甘辛いタレが輝き、良い匂いがする。炭火の焼けるような香ばしい匂いは一切しないが。
さっそく実食。
一人暮らしのアパートでアラサー女がジェネリック鰻を食べるのは、客観的に見てだいぶヤバいが、気にしない。冷房もガンガンつけ、涼しい部屋で冷たい麦茶とともにいただく。
まあ、食感は完全に鰻ではないが、味はほの鰻。タレでぐずぐずになったご飯、山椒のピリ辛アクセントは、何も変わらない味だった。
そういえば実家も貧乏だった。母嫌は竹輪か何かでジェネリック鰻を作ってくれた記憶がある。
貧しいながらも創意工夫して楽しんでいた。あの味も思い出すと、決してジェネリック鰻も悪くないのではないか。
いや、でもね?
やっぱり鰻食べたい!
大学時代に元カレにご馳走して貰った本物の鰻の味は忘られない。元カレの顔はすっかり全部忘れていたが、あの照り輝いている鰻は忘れられない。美味しかった!
というのが本音。
そもそもこの物価高や増税、インボイス制度とか一体何?
今までは社畜でほとんど税金や政治のことなんて調べなかったけど、さすがに今の政治家は、いつも以上に酷すぎる。
ジェネリック鰻を完食後、珍しく税金や政治の事も調べ始めた。
別に世の中を良くしたいという意識の高さはない。
土用の丑の日には、本物の鰻をお腹いっぱい食べたいだけだ。




