きゅうりのサンドイッチ
思ったよりドロドロしている。
蒼井瑠美は、自作の感想欄やSNSのコメントなどを見ながらため息をつく。
瑠美はネットで異世界転生や悪役令嬢のロマンスものなどを10年ぐらいネットで執筆していた。最近ようやくランキングにも載るようになったと思ったら、なぜかアンチもいるらしい。知り合いのアマチャア作家もアンチコメントを残していくるのが、ショックだった。投稿サイトによっては作家同士で派閥っぽいのもあるらしく、新規は追放されたという噂も聞き、ちょっとウンザリとしている所だった。
しかも今は夏で疲れていた。美味しい肉を食べても疲れがとれず、夏バテっぽかった。
そんな折、友達の紗枝から連絡を受け取る。別に特に用はないが、遊びに来てという誘いだった。
紗枝は小学校の先生をしている。夏休みも仕事をしているらしいが、盆は暇だという。ちょうど瑠美も暇だし、紗枝の家に行ってみる事にした。
紗枝は祖父母が残した一軒家に住んでいた。庭も広く、ゴーヤやトマト、キュウリなどもなっている。元気な野菜たちを見ていたら、ちょっと元気になってきた。
「瑠美、いらっしゃい!」
紗枝も相変わらず元気そうだ。通されたリビングには、趣味で描いたイラストもたくさんか飾ってあり、日々を楽しんでいるようだった。他にもアクセサリーを手作りしたり、クッションも作っているらしい。何だか紗枝は自分よりクリエイティブだと思ってしまったりした。
「わぁ、おいしそう」
テーブルに紗枝がアフターヌーンティーのセットを置く。段になったケーキ皿には、スコーンやケーキだけでなく、サンドイッチやポテトサラダも盛り付けられている。飲み物もよく冷えたアイスティーで綺麗な色をしていた。カランと氷の音が響く。
「どうぞ、瑠美。食べよう」
「ありがとう」
こうして二人でアフタヌーンティーを楽しむ。これはヌン活というものなんか。女二人でお茶しているだけなのに、何だか楽しくて仕方なかった。
そうは言っても、少し愚痴もこぼれる。瑠美は、思ったよりドロドロしているネット小説界隈について愚痴をこぼす。
「まあ、でもアンチがつくほど人気ものの証拠だよ。芸能人とかでもそうじゃん」
「まあ、そうだね」
紗枝に励まされ、ちょっと元気になる。きゅうりのサンドイッチも食べる。確か紗枝が育てたキュウリで作ってサンドイッチだ。あっさとし、スコーンを食べた後でもいくらでも食べられそうだった。シャキシャキ食感も美味しい。
「でもアンチが事実じゃない事言うには、微妙だよなあ」
「キュウリだって事実じゃない事言われてるのよ?」
紗枝はそう言ってきゅうりのサンドイッチを掲げ、元気よくかぶりついた。
「うそー?」
「確かきゅうりって世界一栄養は無いって言われてるけど、デマなんだって。カロリーが無い事でデマが広がったとか」
「ええ?」
確かのきゅうりは栄養素が無いイメージだったが、デマだったとは。
「うん。本当はきゅうりってカリウムや食物繊維が豊富なんだって。ミネラルも。でもきゅうりの価値は変わらない。価値がわからないヤツにきゅうりだって食べられたくないわな」
そう言って紗枝は再びきゅうりのサンドイッチにかぶりついた。
確かにそうかもしれない。瑠美も別にアンチの為に作品を作っていない。アンチがお金を出して依頼してきたわけでもない。それにプロで活躍している作家もこういった徒党や派閥を組んでいるイメージもない。
「そっか。紗枝の言う通りだ」
瑠美もきゅうりのサンドイッチを齧る。パンやマヨネーズの甘みとともに、きゅうりの味も染もてきた。誰に何と言われようと、きゅうりは夏の太陽をしっかり浴びて、栄養素がある。
「ありがとう。何だか楽しくなってきたよ」
「なら良かったよ」
こいして再び女二人でアフタヌーンティーを楽しむ。こんな幸せ夏の1日があっても良い。きゅうりのサンドイッチを楽しんでも良い。今の私たちは自由だ。




