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ひと夏の思い出〜とっても美味しい夏でした〜  作者: 地野千塩


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13/22

大人なマサグラン

 失恋した。


 八月、夏休み中の登校日、羽瀬先生が秋に結婚する事をする事を報告していた。


 ずっと片想いしていた数学の先生だが、私は相手にされてなかったようだ。これでも匂わせてはいたが。もっとも大の大人が女子高生に手を出したら、大問題だ。自分でも生徒に手を出すような教師は最低だと思う。これで良かったのだ。


 スッキリとはしない失恋の痛みを抱えながら、掃除を終わらせ、登校日の一日は終わった。


 校門から最寄りの駅までトボトボと歩く。夏の日差しは強く、汗がダラダラと流れていた。


「あれ?」


 ちょうどそこにカフェがあるのに気づいた。


 カフェ・浪漫。その名前通り、大正浪漫のような外観のカフェだった。窓はステンドグラス、壁はシックな小豆色でオシャレな店だ。確か羽瀬先生もこの店をおすすめしていた。


 ちょっと迷ったが、このカフェに寄ってみる事にした。汗だくだったし、オシャレな店も気になる。登校日とはいえ、夏休み中なので気が抜けていた。ミルクも砂糖も入れないコーヒーはちょっと苦手だが、背伸びしてそんな大人っぽい飲み物も飲みたくなった。


 店に入ると、冷房がよく効いていて生き返るお思いだ。ただ、店の中もシックでレトロな雰囲気だった。客もダンディなおじさまばかりで、落ち着いたクラシック賀流れている。


 ちょっと場違いだ。ここに制服姿の女子高生はマッチしていない。むしろ、マックやケンタッキーなどのファストフードの方がピッタリだ。


 それでも一度入ったからには、何か飲みたい。カウンター席に座り、メニューをいただく。しかし、コーヒー豆の種類も豊富でわけわからん。値段はワンコインとかで払えない事はないが、女子高生にとっては高い。


 自分は子供だと思った。大人な羽瀬先生には、釣り合わなかった。失恋以上にその事実に潰されそうだった。


「お客様。お客様には、マサグランがおすすめです」

「え?」


 苦い思いを抱えていると、店長から声をかけられた。カウンターの内側にいて他の客にそう呼ばれていた。グレイヘアでどこからどう見てもダンディ。上品すぎる雰囲気で、羽瀬先生が子供に見えるほど落ち着いていた。


「マサグランってなんですか?」

「レモネード入りのコーヒーです。元々はポルトガルのコーヒーで、お酒を入れて飲むことも」


 お酒?


 なんだか大人っぽいコーヒーではないか。さっそくマサグランを注文した。


 しばらくたって目に前にマサグランのグラスが置かれる。


 普通のアイスコーヒーとはちょっと違う。氷が入っているのは同じだが、レモンの輪切りが浮いていた。お陰で見た目は爽やか。ちょっとカクテルっぽい。大人な飲み物かもしれない。


 一口飲む。


 レモネードを飲んでいるようなコーヒーだった。そしてちょっと甘い。爽やかな甘さだ。すっかりこの味が気に入ってしまった。ブラックコーヒーが苦手な女子高生でもゴクゴク飲めた。


「お客様、夜ではお酒入りのマサグランが飲めます。大人になったら是非」


 マサグランを楽しんで飲んでいると、店長にそう言われた。


 そうか、もっと大人なマサグランがあるのか。そんなマサグランを想像すると、失恋の痛みは和らいでいた。


 大人になって羽瀬先生よりもっと良い男と恋したいかも。一緒に大人なマサグランを飲んで、朝まで語り合ったりして。


 そんな想像をすると、過ぎ去った恋はどうでも良い。なんだか大人になるのも楽しみになってきた。

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