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ひと夏の思い出〜とっても美味しい夏でした〜  作者: 地野千塩


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11/22

ソーダフロートと空の色

 2023年、夏。原因不明の体調不良が続いていた。おそらく、盆休み明けも自宅療養。いつまで休職が続くのかと思うと、気が滅入っていた。


 テレビのニュースを見ていると、相変わらず暗い。ブラック企業や増税のニュース。


 ネットでもそれは変わらない。性別、年齢などの属性で人々はいがみ合い、対立していた。


 私は体調不良で休職中という立場、どこにも属せないフラフラ感も滅入る。SNSでは自分と同じような休職組、無職やニートなんかをフォローしていた。意外な事に彼らは、妙に達観していて、穏やかなものも多かった。メディアが作り出したステレオタイプな情報に自分が染めっていた事の気づく。


 それでも気が滅入る。


 特に夏は日本の暗いニュースも多い。原爆、日航機墜落事故、終戦記念日。


 普段は平和ボケだったが、当時の夏の日を想像すると、明るい気分にはなれなかった。SNSでは原爆地上爆破説や日航機墜落事故の陰謀論も目に入ってきて、余計に具合が悪くなってしまった。


 一旦スマートフォンの電源を切り、近所に散歩しに行く。といっても熱いので、近所のコンビニぐらいしか行く場所はないが。


 近所のコンビニは、イートインスペースもあり、広々としていた。カウンターではソフトクリームやスナック系も注文でき、ちょっとファストフードのような雰囲気もある。今はイートインスペースがあるコンビニは珍しくないが、このチェーン店は昔からこういったサービスがあった事を思い出す。ちょっと特別感があるコンビニだった。


 コンビニに入るとく冷房が効いていて、気持ちいい。ほんの少しだけ元気になってきた気がした。


 何を買おうか悩むが、レジカウンターでソーダフロートを注文した。このソーダフロートは、このコンビニでも昔からある定番メニューだった。


 少々毒毒しいぐらいの水色のソーダに、丸いバニラアイスが浮いている。どう見ても身体に悪い。それでも、その色は、どこかの南の国の空の色を連想させ、購入してしまった。


 イートインコーナーは混み合っていたので、飲みながら帰る事にした。


 コンビニを出てから、思わず空を見上げる。日本の空は、綺麗な青とはいえない。このソーダフロートと比べても、なんとなく狭い。閉鎖感がある。田舎だからそう見えるのかもしれないが。同調圧力に負け、マスクをしてワクチンを打ってしまった事も思い出し、気がめいいる。田舎らしく近くにはカルトの施設があり、白装束の集団が闊歩していたが、彼らと皆んな同じマスクをしている事と何が違うのかよくわからない。人が決めたルールか、教祖に従っているのかその違いしか無いようにも見えた。


「はぁ」


 ため息をつきつつもソーダフロートをすする。強烈な甘さと冷たさが舌を襲う。


 色は毒毒強いが、こんな色の空だったら、いいのに。そんな事を思う。


「でも、これは美味しい……」


 ぽつりと呟く。色は毒毒しいが、美味しい事には違いない。このソーダフロートを飲んでいる瞬間だけは、日本の空の事は忘れていた。


 そういえば、日航機墜落事故で亡くなった坂本九の曲も思い出す。


 SNSで動画が貼り付けられていたので、何となく曲を聞いていた。自分が生まれるはるか前に亡くなった昭和の歌手だ。それなのに聞いていると胸を打つものがあった。声自体が、明るさや希望に満ちている。平成生まれ私には、全く知らない歌手だったが、すっと耳に馴染む。全く古臭くない。


「幸せは雲の上に〜♪」


 小さな声で口ずさむ。


 現状、日本の空は明るくはない。私の体調不良も先行きが見えない。もしかしたら第三次世界大戦も起きるかもしれないという噂がある。


 それでも上を向くしかないようだ。何となく泣きそうになってきたが、ソーダフロートの甘さに慰められていた。

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