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第五章

 目が覚めた。

 懐かしい夢を見ていた。あの頃は全てが輝いて見えていた。新しい発見が沢山あった。でも、目の前を見ると……。


 死体の詰まったビニール袋? あの頃の純粋な僕の幸せはどこに行ったんだ。

 昔に戻ることができるなら戻って人生をやり直したいくらいだ。


 でも、前に進まないといけない。

 この出来事が夢じゃない限り、どれだけ逃げようとしても目の前の光景が変わるなんて無いのだから。


 まだ、4分の1埋め終わっただけ。


 ピンポーン……

 少しうるさいインターホンが淀んだ部屋に鳴り響いた。

 少し驚いてゆっくりとドアを開けるとそこには、いつか見た凛とした女性が立っていた。

 友人の彼女だ。


 彼が居ないのだけれど何か知らない? と問われ少し頬が引きつった気がしたが、知らない。と返した。


 殺風景な顔のまま彼女は早足で僕の部屋の中へと入って言った。


 ねぇ、この袋はなに?


 品のある立ち姿。華奢な身体。艶のある長髪。整った顔立ち。心を(えぐ)る瞳。憂いを帯びた表情。

 彼女に真っ直ぐと見つめられ息が出来なくなった。


 正直に話してしまった。全て彼女に。

友人を刺し殺した事。

昨日、君が来た時にはもう死んでいた事。

解体してビニール袋に詰めた事。

そして、その一つは明朝に埋めてきた事。


 僕自身、親友を殺したという罪を1人で抱えることがもう限界に近い事を悟っていた。

 理解者が欲しかった。

 少しの、ほんの少しの可能性に賭けた。怒られるかもしれない。

恨まれるかもしれない。

 殺されるかもしれない。


 でも助けて欲しかった。





 全てを君に話した。

以外にも君は僕を理解(わか)ってくれた。

 幸せに今までの生活を取り戻すために隠す手伝いをしてくれると言った。

 君はどこかあいつに似てる。その困っている人をほっとけない所は特にそっくりだ。今になって友人を殺した事を後悔してきた。


 彼ともう少し一緒にいたかったな。


 親友の死を隠すにおいて彼女と約束をした。

 「裏切りはしない」

 「互いに深く追求しない」


 仲良くなるつもりもない。だからこの2つにした。彼の死を隠す手伝いをしてくれる彼女は女神のようにも美しい死神のようにも見えた。


 次の袋埋めは明日の夜。それぞれひと袋ずつ。

 彼女は近くの中学校の焼却炉。僕は公園の砂場。


 バレないはず。死体を埋めることに熟れてしまった浅はかな考えで決めた。


 夕が空を染る前に彼女は部屋にゴミ袋と僕を残して友人の部屋に戻って行った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは ツイッターから見つけて来ました 人を殺めたことがないのでわからないのですが、実際に手をかけたとしたらこんな気持ちになるんだろうなというのが鮮烈に伝わってきました。 非常に臨場感…
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