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第一章

 10月21日の15時00分、初めて人を殺した。

 

  とても興奮している。鈍い音がアパートの一室に響き渡り、握りしめた拳にあるのは、赤い液体が付着している一本の包丁だ。


  ほんの少しの出来事で理解が追いつかない。気付いたら彼の胴体を刺していた。首と腹、そして太腿から大量の血が溢れ出てくる。素人の僕でも簡単に殺すことが出来た。この事実に焦りを感じながらも少し高揚感を覚えていた。

 

  だが、本当に死んだのか。刺して血が溢れているだけでまだ死んでいないかもしれない。というか、なぜ彼を刺したのか。取り返しのつかない事をしたとは思えないほどに僕は素朴な疑問を浮かべていた。

 

  今、友人の知り合いが来たらまずい。だが、かつての友人とはもう笑い会えないのだ。突然僕の目の前から消えた。視界が歪んで行ったに違いない。あんなに近かった存在なのに。結局僕は自分が一番可愛いのだ。自分を守るためだったらいかなる犠牲も構わない。僕の存在意義を守るために友人の死は無からなかったこととして振舞う。僕は最低だ。

 

  ーーカッ、、カッ、、、

  突然、外からアパートの階段を上がる音が聞こえてきた。


  彼を隠さねばと虚ろな頭で考え急ぐ。この部屋に来るという確信は無いのに。自分で思うより倍は焦っていたのかもしれない。

  彼をリビングから風呂場に移動させる。彼が細身でよかった。だが、恐らく死んでいる。

  死体はこうも重いものなのか。額から汗が吹き出しつつも風呂場に移動し終え、洗面台を歩いていたらガチャっと音がした。驚きそちらを見ると親友の彼女がいる。どうしたの。と尋ねられた。物を買いに行った親友を待っている。それをと聞くと彼女は返事を返し、足早にその場を去った。その時の彼女の眼は、自分より遠くを見つめる虚ろでどこか儚しげなものだった。少し自分とは違う表情で気味が悪いと感じた。それと、洗面台にいたのは少し不自然だったかもしれない。

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