№7 勇者様すごすぎ、でもやりすぎです
ま、まさか暴走っ。
「う、ひゃひゃひゃひゃ!」
康治の笑い声が辺りに響き渡る。
業火の炎に焼き尽くされた頭の姿を見たゴブリン達の動きが一斉に止まる。
村人を襲い、略奪の限りをつくした彼等は、突然起きた驚愕と恐怖の出来事に蜘蛛の子を散らしたかのように逃げ出した。
「おいおい、どこへ行くんだぁ」
炎の中で康治は笑った。
「勇者様、もういいですよ。ゴブリンの親玉は倒しました。これからは村が襲われることはないでしょう」
ポランは村を救った康治に感謝する。
「まだだ・・・」
「勇者様?」
「逃がさない、メロンたんをこんな目に合わした、お前たちを」
「・・・勇者様・・・我をお忘れで・・・」
ポランは康治の瞳に宿る怪しい光を見た。
康治はそのおデブ体型を活かし、前転を繰り返す。
やがて、その行為は炎を纏いながら車輪のように激しく回転する。
「ふ、はははは!」
「勇者様!」
ポランの叫びは届かない。
「トントン(豚豚)、ファイヤーローリング(炎回転)」
康治は心配するポランの横をぬけ、逃げまどうゴブリン達に襲いかかる。
「ギャアアア!」
断末魔の叫びの声をあげゴブリン達は消滅していく。
「豊満たる肉体は、無尽蔵の力なり」
ポランは伝説の一文を呟く。
(勇者様・・・もういいのです)
ポランは康治が自制するのを祈った。
だが、彼の所業は止まらない。
(もう!)
ポランは気づいたら、走りだしていた。
必死に逃げるゴブリン達の前に立ち、彼女は両手を広げる。
迫りくる火輪。
「勇者様、お願い、目を醒まして!」
(・・・め、メロンたん)
怒りの炎の中、目の前に凛として立つ少女を見て、康治は我に返った。
彼女がいるッ。
彼は自制し、彼女の直前で止まった。
「ありがとう勇者様」
ポランは微笑した。
「・・・メロンたん・・・」
「私は・・・まっ、いっか」
ポランは一言いいたい気持ちを飲み込んだ。
ま、まさか、ちょっぴり暴走っ。