№4 私はメロンたんではありませんが、あなたをお慕いしています
メロンじゃないよマロンだよ。
「あなたは、メロンたんですか?」
思わず、康治は聞いてしまった。
マロンは目をぱちくりさせて、首を振った。
「私はメロンたんじゃありません。ポラン=マロンといいます。あなたは、私の勇者様ですか?」
「・・・メロンじゃなくて、マロンか、惜しい似ているけど・・・へっ、俺が勇者・・・」
年老いた召喚士が二人の話を遮る。
「おお、伝説の英雄ルーラン様。ようこそポラの村へ。降臨され、早速ですが・・・」
「ねぇ、マロンたん・・・君の事、メロンたんって呼んでいい?」
「私はポランですっ。親から貰った名前ですので、ポランかマロンでお呼びください、勇者様・・・実は、私はあなた様の事をお慕い・・・」
「左様ですか・・・残念です」
康治は、後半部分は耳に届かず(シャットダウンした)、がくっと肩を落とした。
「えらく距離感ができたような・・・勇者様、なんかごめんなさい」
「あのっ!」
召喚士か声を荒げて叫んだ瞬間、辺りから雄叫びが聞こえた。
「なっ、あいつら(ゴブリン)め!」
成り行きを見守っていた村人は、魔物ゴブリンに突然襲われ、パニックに陥る。
悲鳴や叫び声が周りに響き渡る。
「英雄、ルーラン様、どうか村を、民をお救いください」
「駄目だよ」
康治は両足をガクブルさせ言った。
「えっ」
「だって、俺、英雄じゃないもん。ルーランじゃないよ康治だよ」
「だから英雄コージィ様では」
「ノンノン、コージィじゃなくて功刀康治ね」
「はぁ、じゃあ・・・あなたは英雄じゃないと・・・」
「ウィ(はい)」
「えらいことじゃあ!これでは村が滅んでしまう」
召喚士はその場に崩れ落ち、泣き叫んだ。
康治は急ぎ縛られていたポランの紐を解き、猿轡を外す。
「メロンちゃん、さぁ逃げよう」
彼は目先の優先とばかりに、ポランの手を引いてこの場から逃げようとする。
「ポランです。勇者様、戦ってください」
ポランは立ち止まる。
「そんな・・・俺は・・・」
ポランは両腰に両腕をあて、康治に説教をはじめる。
「あなた様は・・・私の勇者様です。誰が言おうと何があろうと私は信じてます・・・勇者様・・・あなた様も自分を信じてくださいませ・・・あなた様は勇者・・・それっ、がんばれっ」
「はぁ、でも、俺ニートだし」
「はうううう、ニートぉぉぉっ・・・あの伝説の千日戦争において、一度も壊れることのなかった英雄ムーラン様の拳の総称ニートっ」
「こっちでは、たいそうなものだけど、あっちの世界じゃニートってのは・・・」
「つべこべいわず、戦いましょう。みんながピンチです!」
ポランは、康治の袖を引っ張ると、脇目もふらず魔物の元へ駆けだした。
どうなるコォジィあんどマロン。