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走馬灯が止まる前に  作者: 北郷
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反抗期(出ちゃった!白い物体、まさか・・・2)

「いぃっ、いっ?う、うそ? 嘘おぉぉぉ・・・」

 見えてしまつた。残念ながら、今度は俺の目でも。

 幻でなければ・・・。


「パパ、パパ、まさか、お、お化けじゃないよね、ね」

 さすがの花織もそれが本物であるならば、当然怖いに決まっている。


「ま・さ・か」

 しかし、その物体は今度は完全に道路の淵まで出て来て、こちらを向いている。そして不気味にも手招きをしてるようにも見える。

 白いドレスに長い髪。車のライトがあったた肌は透き通るように白いような・・・。


 ”招くな危険”そんな標語があるならば、年末に力一杯”標語大賞”を与えたい。

 でも、今はまだ8月。その前に今をどうするかを冷静に考えるべきだ。


 俺は考える。いや、考えようとする。極力客観的に。

 とってもそんな状況じゃ無いけれど、それでも努力だけはしてみたい。


 もし、もしも今見えてしまったものが本当に現生のモノではなく、俺たちを招いているのなら、俺はその手招きに乗ってはいけないはずだ。

 それは決して俺の怖気ではなく、そう、決して怖気ではなく世間の定説。

 昔からそう言われていたような気がする。いや、確実に言われている。

 俺は昔の人の言うことは尊重するべきと教えられて育ってきている、と思う。

 守ってきている自負もある、多分。

 だったら?


 それでも進むべきかなのか?

 進まなければならないのか?

 別荘はもう近いけど・・・。


 俺を後ろから引く、俺のパワーは100馬力。

 

 でも、ここまで来たのに?

 と言う俺がもう一人。

 まだ定かでないその現象に屈し、一旦引き返すのがホントにベストなのか?

 そう言う俺もいる。


 その背を押すパワーも肉薄の90馬力強。


 いや、しかし、人生は無難に生きるべきだ!

 と言う俺が別途現れる。結構身近に。

 そうだ!一夜の無駄くらい何だ!一旦引き返し、翌朝出直せばいいだけだ!

 と、それを支持する俺は当確ライン上。


 でも、猛スピードで突っ切れば、何の問題もないのでは?

 車の能力を信じれ!

 と言う理系の俺が大外から一気に捲って来て、先頭争いに加わる。

 さあ、どうする?どうするか?


 行くべきか、それとも戻るべきなのか?

 前なのか、後ろなのか?

 それとも、後ろから前からなのか?

 もう、俺には何が何だか・・・


 ここで確実に言えることは、このまま進んだとしても、または仮に昼間に出直したとしても、共通するのは、夜はまた来ると言うことである。明日も明後日も。そして、別荘はこの場所からほど近い。

 だとしたら、毎日怯えた夜になる可能性も無くはない。

 さあ、どうするか・・・。


 一応、こんな時は父親である俺がしっかりしなければならない。それが一般家庭の有り方だと俺は思う。

 例え嘘を言ってでも、人ならず者であることを否定しなければならない。それが責務であることは更なり。

 だが、それは分かっていても、残念ながら急場に弱いのが俺のダメなところ。


 車が近づくにつれ、完全にその白い物体がこちらを向いているのが分かる。

 両手を大きく広げ、左右に大きく振っているのがはっきり分かってしまう。

 その迫力から、確かな事実としてしか捉えようがないのは、もう紛れもない。


「手、振ってるよね?」

 花織の問いに、

「うん、手はあるみたい」

 そう応える俺。


「この車にだよね」

 続いて同意を求める花織に、俺はバックミラーを確認する。後続車は皆無。ただの暗闇。

 手を振っているのが、この車にであることは十中八九以上に間違いない。


「車にだから、関係ないかも」

 俺と花織にではなく車自体に手を振っていると言う解釈も出来なくは無い。

 だったら大丈夫、無関係。

 と言いたいところだけど不運にも俺と花織はこの車に乗っている。客観的にはワンセット。


 ホントにお化けなら逃げの一手なのだけど、出来ればそれを信じたくない。信じてしまえば、その事実が一生俺に付いて回る。

 もしも、ホントにこんな人里離れた山の中に、女性が白い服に身を包み、一人で両手を振るなんてことが事実としてある得るならば、困っている可能性はVERY高い。


 急にクーラーが効きだしたのか、肌がヒンヤリとして来るのを感じて来る。

 これはやばい。

 やばい兆候。

 こんな時は夏でも寒くなると聞いたことがある、気がする。


 隣からは細かいステップを踏む音が、タップダンスの様に俺の耳に届いて来る。

 花織も震えている、花織も。


「どうする、花織?」

 情けないことに、そんな花織につい判断を託してしまう俺。


「行ってみようよ、パパ、出たとこ勝負かも」

 ホ、ホントに出たとこ勝負なんかい?

 それを聞いて、耳を疑う俺。

 ただ恐がるだけじゃないのが、俺とは違うところ。


「そ、そうだね」

 見間違いかもしれないしね。

 判断を任せた以上は従うしかない。


 俺は、その白いものが良く言われるように、急に道路に飛び出してくることを警戒し、いつでも止まれるように車のスピードを更に落とす。

 もちろん止まった後は、一目散にUターン。

 この道幅だと一度の切り返しは必要だけど、その場合のイメージと心の準備は既に出来ている。

 その時は最短でUターンをして見せる。

 花織を守るために。

 俺は花織を守る絶対に・・・


 その時、俺は「大丈夫、絶対に逃げきれる!」と、アクセルを踏む自分の右足に、今思いつくだけの異能が全て詰まっているとことを信じ、このまま前進することを決意した。


<つづく>

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