表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/154

第九十四話 静かなる闘志。

その後、私は思いきり陽ちゃんを引き離しにかかろうとアタックをしていたが、思ったより差は広がらない。 どころか、彼はさっきよりペースを数段上げて迫ってきているように感じた。


追われる立場から、追う立場へ。奪われた前の景色をもう一度奪い返そうと言わんばかりの勢いで、彼は確かに集中力を研ぎ澄ませ、ゴーカートを前へ、前へと素早く走らせていた。


私のかけていたプレッシャーから解き放たれた彼は、闘争心むき出しになっていたようだった。


私も、ずっとクルマとモータースポーツを愛してきた身として、彼にいい走りを見せつけるべく、テンションを思いきり上げて、一周720mのこのコースを素早く駆け抜けた。


グッと食いつくスリックタイヤのグリップ力をフルに活かし、アクセルコントロール、ブレーキングとステアリングワークで巧みにマシンコントロールをし、頭を使って、その時その時で判断をしきる・・・・正に、身体の機能全てを駆使して本気で戦い続けた。


が、この走行枠は他のお客さんも沢山いる。当然、自分の走りばかりをできる環境ではない。


当然、走行ラインは毎回変わるし、ブレーキングや加速もその時その時で変わってくる。


私もそれにしっかり適応させつつ走っていたが、彼もまた、この日のうちにその多くを学び取っていたようで、今度は決して怯むことなく付いてきていた。 彼がきっと今まで心の奥底で眠らせていた闘争心と、この今日のうちに身に着けたゴーカートでのドラテクが科学反応を起こしたようであった。


私が思う以上に、彼はこの一日で大きな成長を遂げた。そして、私はそれにしっかり答えようとした。


そして、あとこの走行枠が残り1分と迫った時だった。 遂に状況は動いた。


他の人を追い抜こうと6コーナーをアウト側から入ろうとした時の事だった。


私が侵入している横で、彼はなんとその他の人の更にインから抜きにかかろうとしていた。


完全に不意打ちである。どうにか他の人を抜いて立ち上がると、横にすぐ陽ちゃんがいた。


軽くトンっと接触しながら、そのまま7コーナーへとアプローチしていく。


7コーナーではインとアウトが入れ替わり、私がインにくる。これだけ見ると私が優位に見れなくもないが、彼の方が若干6コーナーを速く立ち上がっていたので、アプローチとしては彼のが優位。 事実、7コーナーに侵入した時点では彼の方が鼻先一つ抜けていた。


が、ここで引く私ではない。私もここはしっかりとイン側をキープするブロックラインを取って、彼をけん制する。外から抜きにかかろうとも私はギリギリでインをキープする。


続く8コーナーは7コーナーから続いたS字のような形なので、そのまま直線的に抜けていく。そして9コーナー。ここでも私がイン側にいたのでギリギリまで減速を持ちこたえてツッコミ勝負で完全にまた私が前に出た。


「っし・・・!!」


小さくそう唱えて私は残りのコーナーも攻めたてた。 とはいえ、彼もきっとまたすぐに仕掛けてくるだろう。 そう思った私はその後も気を抜かずにコーナーを抜ける。


そして、またメインストレートに戻ってきた。前周の時点で残り1分だから、一周46秒だとして、残り15秒。即ち、この周が事実上のファイナルラップになった。


絶対に逃げ切るぞ・・・・! そう思いながら、私はアクセルからびた一文足を離さず、ストレートを駆け抜けた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ