第九十三話 経験の功
よーし、それならこれでいってみるか・・・」
私は最終コーナー手前のシケイン(S字カーブ)前でアクセルを一瞬緩めて間合いを取った。
そしてそのまま最終コーナーをあたかも突っ切るように直線的に抜けていくライン取りを取った。 そのまま、私はホームストレートで陽ちゃんに完全に並びかかった。
前を走る陽ちゃんは私から逃げるのに必死でアクセルをずっと開けたまま最終コーナーにアプローチしたので、少しオーバースピード気味になり、挙動が乱れ、脱出スピードが鈍っていた。
一方で私は、一瞬速度を緩めていたので、多少余裕を持ってアプローチすることが出来たので、最初に言った通り、コーナーをより直線的に抜けることが出来たので、脱出スピードを稼ぐことができた。 よって、トップスピードに達する時間がこちらの方が圧倒的に速いので、すぐに並ぶチャンスを得ることが出来たのだ。
このようにゴーカートのように全く同じ乗り物で性能差が全くない時は、このようなライン取り、引きどころ、踏みどころが非常に重要になってくる。 タイムアタックならタイムを削るためにとにかくアクセルを踏んでいられる時間を長く取るのが重要になってくるが、その一方でこのようなレースではいかに相手に対して優位に立てるのか、その先その先でどうやったら相手に仕掛ける事ができるのかという引き出しが本当に重要になってくる。
だから私も、今までの経験からどうやって抜くかを考えてこうして引き出しを出したわけである。
走行ラインを読まれても、引き出しでは絶対に負けない。 そんな気持ちで私は彼に仕掛けた。
100mのホームストレートで完全に陽ちゃんに並びかける。
チラッと横を覗き込んでみると、彼もこちらを見て少し驚いた顔をしてこちらを覗き込んでいた。 それに対して私はウインクを軽くして、ゆっくりと口パクで
「いただき」
と言ってみせた。
長い100mの直線を走り抜け、いよいよ1コーナーへ。
有利なイン側にいた私は、そのままコーナーに対してスッと飛び込んだ。
一方で陽ちゃんも引かず、そのまま並んだままでいたが、どうやらこのような駆け引きでどんなコントロールを取るべきかわかっていなかったようで、そのまま遠心力で外へとはらんでいき、私は遂に前へと出た。
「っしゃあ!!!抜いたああ!!」
私はそう言って心の中でガッツポーズをした。
そのまま私は彼を引き離すべく、マキシマムアタックに入った。
その時あまり前に他の人が走っていないのもあったので、コースを目いっぱいに使い、自分の持てる実力を使ってゴーカートを攻めたてた。 一度前に出てしまえば、こっちのもの。
そのまま逃げ切って勝つ・・・・!! そんなつもりでいた。
が、彼もそう簡単には引き下がってはこなかった。
「・・・絶対に追いつく!」
彼も完全にスイッチが入っていた。




