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第九十一話 小さな提案。

「え・・・・?勝負??」


「そう、勝負。次の走行枠で走り始めてからチェッカー(旗)振られるまでに前にいた方が勝ち・・・・ってのはどうかな?」


なんか私って、やたらこういうよくわからん勝負ごとに巻き込まれるなあ・・・・どこぞのメイドカフェ店長と一緒にいる時なんか特に。 


まあ、こういう乗り物乗ってると、勝負したくなってくるのも仕方ないよなあ・・・なんて思いながら、私は首を縦に振って見せた。


「ん、いいよ~。まあ、今ある全てでかかってきなよ・・・・こっちも容赦はしないよ~!!」


少しおどけたように私は答えた。まあ、この子もかなりタイムを出せるようになったとはいえ、こういう色んな人と混走するシチュエーションや、こちらから仕掛けるようなシチュエーションだとまだまだ未熟だろうし、こちらもブランクがあるとはいえ、このコースでは昔よく走らせてもらっていた意地がある。 この勝負はそれなりに頑張らせてもらうことにした。


「うん、オッケー! じゃあ、次の枠は思いきり勝負しようね!!」


そう言って彼はウインクをして見せた。


そこからそう何分と経たず、次の走行順が回ってきた。 いよいよ勝負の時は来た。


待機席を立ち、ヘルメットを被り、グローブを付けていると、再び彼が訊ねてきた。


「そう言えば、スタートはどっちが先に出る?」


「陽ちゃんが先でいいよ~ 私は後ろから向かうから。」


了解!と彼は元気よく答えてゴーカートに乗り込んだ。


その様子を見届けて、私も陽ちゃんの真後ろのゴーカートに乗り込み、徐々に神経を集中させていった。



不思議と、どんな乗り物に乗っても、こうしてステアリングを握ると自然と心が落ち着き、精神がスッとなる気がする。 そして、その落ち着きの中にも確かな闘志をみなぎらせ、私はその時を待った。


係りの人が、ゴーカートのエンジンに火を入れる。ドドドドドドドドドドという、リズムのいいエンジンの音と鼓動が直に伝わってくる。 そして、その心地いいエンジンのリズムと共に今すぐに走り出したい気持ちが湧き上がってくる。


「・・・・っしゃあ・・・・大人げないかもだけど、思いきりいかしてもらうよ・・・・陽ちゃん。」


小声でそんな事をボヤいた。


全車のエンジンに火が入った様で、係りの人が順番に、「はい、コースインしてください!」と声を掛け始めた。


前にいた陽ちゃんにもすぐに合図がきて、ゆっくりと進みだした。


そして、陽ちゃんは私に向かって軽く手を振ってきた。 なんだかとってもテンションが上がっていそう。


「にゃろお~~ やってくれるじゃないの・・・・すぐに追っかけてやる。」


私にも係りの人からの合図が来ると、私もアクセルを踏み込んで、サッとピットレーンから抜け出した。


「待ってろよお・・・・陽ちゃん。」


戦いの火蓋は切って落とされた。


続く。


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