第八十五話 君もヤマネコの世界へ。
というわけで、志熊社長と少しばかりの会話を挟んだのち、私は「お守」をするために実家まで飛ぶようにして向かった。
志熊社長が修理ついでに色々と調律をしてくれたおかげで、修理前よりもパジェロエボは更に気持ちよく走るようになっていた。より軽やかに、より緻密に。私の意志に更に答えてくれるようになった。
「はあああ~~~ やっぱいいなあ、私のパジェロ。楽しい・・・」
更に気持ちよく走るようになったパジェロエボに夢中になり、遠回りしたいなあ・・・なんて考えていたけれど、そうそう今日は「お守」があるんだったわ・・・・ というわけで、危うく遠回り仕掛けたけれど、すぐに軌道修正したのだった。
30分ほど走り、とうとう実家へと着いた。
インターホンを押して、おーい、凛子だよ!っと話しかけると、待ってました!!と言わんばかりにうちの母上が飛び出てきた。相変わらず元気なようだ。
「凛ちゃああん!お帰りいい!! ほら、早くおあがり!! 今お菓子準備したとこだから・・・・」
「あ、あ、うん。ありがとう・・・・それよりお母さん、陽ちゃん来てる?今日、お守頼まれてたからさ。」
「ああ~、陽ちゃんね!さっき来たところよ! リビングにいるわ! ほらおいで」
そのまま招かれるようにリビングの方に行くと、彼はいた。
彼は、相変わらずぶっきらぼうな顔をしてスマホを弄っていた。
顔を覗き込むようにして、私は話しかける。
「あ、えと・・・おーい、凛子姉ちゃんだよ・・・・お久しぶり。」
「んん・・・・ああ、凛子姉ちゃんか・・・おひさ・・・」
チラと私の顔を覗き込んで、ボソッとそう言うと、彼はまたスマホの画面へと目を移した。
彼の名前は松原陽介。私の従妹の息子で、小学四年生である。 私の従妹夫婦は、夫婦揃って商社マンという事もあって、ほぼ休みなく仕事に追われているんだそうで、彼は家で一人で過ごすか、学童などで過ごすことが多いようなのだが、今日は学童がやっていなかったのと従妹がいつも家で一人なのもつまらないだろうから、という理由で今回は私にお守を頼んできて、私はそれを了承した次第なのだ。
折角久しぶりに会うんだから、何かいい体験をさせてあげたい・・・・そう思って、昨日は色々と策を練ってきていたのだ。
・・・・というわけで、とりあえず私は彼を外へと連れ出すことにした。
「よし、じゃあドライブ、行ってみようか。」
彼は無言でこくん・・・と頷いて、鞄を肩にかけて、一緒に玄関までついてきた。
駐車場にある私のパジェロエボを見るや否や、陽介はこう言った。
「あ・・・・姉ちゃんクルマ変えたんだ。前のよりちょっと大きくなった?」
「うん、そうなの。パジェロのエボリューションっていうの!私のずっと憧れのクルマなの! やっと手に入れたんだ!」
「ふゥん・・・・ま、カッコいいじゃん。」
余り覇気のある喋り方ではなかったが、カッコいいと言われたのは素直に嬉しかった。
二人で車内に乗り込むと、私は陽介を横に乗せてドライブへと出かけた。
続く。




