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第七十八話 陰に陽が差す時。

夜の繁華街を抜け、別の通りに出てオロチは走り抜ける。その中で、私たちの会話も弾んだ。


そして車内での話題は、互いの車好きになったキッカケの話になった。 無論、私は幼いころパリダカを見て憧れたこと、そして自分の親が自動車好きでパジェロに乗っていて強く影響されたこと、そして大学時代に走り屋になり、モータースポーツにハマったこと、などを話した。


そして、それに続くように、大和さんも口を開いた。


「なーるほどね・・・ほんとあなた筋金入りの車好きなのね。 競技もバリバリやってたとか凄いじゃない。」


「いやあ、そんな凄くはないですよ・・・所詮はアマチュア止まりですしおすし・・・・」


「それでも、そこまでハマりこんでやってたんじゃ大したものよ・・・・ぶっちゃけ、私クルマ好きになったキッカケが薄いからなあ・・・・。」


「ちなみに、大和さんがクルマに興味をもったキッカケって何なんですか・・・・?」


そうねえ・・・と少し考えこんだような顔をした後、ポツリと彼女は告げた。


「このクルマに一目ぼれしたから、なのかな。」


一目ぼれ・・・・?と、私が少し首を傾げると



「そ、一目ぼれ!私が色々精神的にキテた時に出会ったんだよ・・・オロチと。」


すると、大和さんは少し懐かしそうな顔をして、更に話を進めた。


「私ね、今はこうして現場のリーダーなんて大層な事やってるけど、実はこれをやるためにこっちまで上がってきたわけじゃないの。」


「え・・・じゃあ、何でこの道に?」


「実はね・・・・私、最初は役者になりたくてこっちまで上京してきてたのよ。」


「そうなんですか!?」


思わず、私は身を乗り出すようなリアクションを取ってしまっていた。


「うん。私ね、小さい頃からお芝居とかが大好きで、中学高校と演劇を嗜んできてて、将来は役者さんに絶対なろう!!って思ってたの。 そいで、高校卒業したタイミングで地元の富山から上京して、ある劇団に入って、アルバイトしながら、毎日お芝居の修行してたんだ。」


「そうなんですね・・・・てっきり、ほんとマネジメントとかの勉強バリバリ積んで、家も凄いエリートだったものかと・・・・。」


私がそんなことをぼやくと、大和さんはハッハッハ、と大声で笑った。


「そんな事はないよ。私自身は普通の会社員の娘だし、特に親類が太いわけでもないわよ。ただの演劇バカだったわ。」


ちょっと意外な感じがした。大和さん、仕草や言葉遣いも凄く丁寧だったし、てっきり凄い良家のお嬢様なのかな・・・・なんて、勝手な憶測を持っていたのでなおさらだった。きっと、仕草や言葉遣いの丁寧さは劇団員時代の訓練の賜物なんだろな・・・・と思った。


「で、まあ劇団員時代は辛いなりに楽しいことも沢山あったけれど、当時運悪いことに世界の景気が悪い頃でね・・・・。その後、仕事をもらおうと思っても中々もらえなくて本当に苦しかったの。あんまり苦しくて死にたいとも思った。 大好きで始めたつもりのお芝居が段々と手につかなくなってきて・・・・半ば引きこもりになりかけてた時もあったの。」


少し重々しい話になり、大和さんも少し暗い表情になった。 しかし、少しの間を開けて、彼女の顔は日が差したようにパッと眩しい笑顔になった。


「そんなときに出会ったの。この子と。」


続く。


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